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「ついてきてますよね」夜の住宅街で何度も振り返って笑いかける男。立ち止まると彼も足を止めた瞬間

  • 2026.7.18

夜の住宅街で、前を歩く男が何度も振り返った

残業で遅くなった夜だった。

人気のない住宅街を、私は足早に歩いていた。

街灯の間隔は広く、その光は頼りなく、足元だけをぼんやり照らしている。

暗がりのなかで自分の足音だけが妙に大きく響いた。

少し前を、スーツ姿の見知らぬ男性が同じ方向へ歩いていた。

仕事帰りなのだろう、とそのときは気にも留めていない。ただ早く帰りたい、とそればかり思っていた。

その男性が、ふいに振り返った。

目が合う。にやりと笑いかけられて、私は思わず視線をそらした。

気のせいだと思いたかった。けれど男性は、何歩か進んではまた振り返り、そのたびに私を見て笑うのだ。

その笑い方が、どうにも普通ではなかった。目だけがまっすぐこちらに向いたままで、笑うたびに背筋が縮んだ。

「ついてきてますよね」

意味が、うまくのみ込めない。

何と返せばいいのかもわからなかった。

距離を取ろうと、私はわざと歩調をゆるめた。少しでも間を空ければ、相手は先へ行くだろうと思ったのだ。

立ち止まると、その人もぴたりと足を止めた

すると、前の男性もぴたりと足を止めた。振り返ったまま、じっとこちらを見つめている。

振り返った顔は、暗がりのなかでも笑っているのがわかった。

私が止まれば、相手も止まる。私が歩けば、また歩き出す。距離は、縮まりも離れもしない。

まるで、私に合わせて距離を測られているようだった。

街灯の光の下で、その笑みだけがはっきりと見えた。

何をされたわけでもない。声を荒げられたわけでもない。それなのに、本能が異常だと告げていた。

この場所にいてはいけない、と全身がざわめいていた。頭のどこかで、危険を知らせる音が鳴り続けている。

私は踵を返し、来た道を全力で引き返した。

明るい大通りが見えるまで、一度も振り返らなかった。

心臓の音と、自分の足音だけが耳の奥で鳴っていた。背後であの人がどうしているのか、確かめる余裕もなかった。

息が上がっても、足を止めることだけはできなかった。ただ、明るい場所へたどり着くことだけを考えていた。

大通りに出て、ようやく息をついた。あの人は今もあの道にいるのだろうか。

何を考えて、あんなふうに笑っていたのだろう。実害はなかった。それでも、あの静かな恐怖は、今も忘れられないままでいる。ふとした夜道で、今もあの笑みがよみがえる。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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