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【野沢温泉のデザインホテル「モン」】アートや伝統工芸、食を通して村の風土に触れる滞在

  • 2026.7.9
薪火を使った料理が味わえるホテル1Fの「モン レストラン」。

スキーが盛んで、冬季オリンピックではメダリストを含む多くのオリンピアンを輩出。冬になるとジャパウと呼ばれるパウダースノーを求めて、海外からも多くの人々が訪れるのが長野県の野沢温泉村です。


飯山駅からバスで25分

飯山駅。構内にはカフェや居酒屋もあり、バスの待ち時間も充実。

東京からもほど近く、東京駅から北陸新幹線に乗り、およそ1時間40分で飯山駅へ到着。そこから直通バスの野沢温泉ライナーでおよそ25分。乗り換えの時間も含めて、およそ2時間30分ほどで村の中心地に辿り着くことができます。

野沢温泉ライナー。観光バス仕様のため、シートもゆったり。乗車中も快適だ。

野沢温泉村は、スキーのほかにも村名が表すように温泉が有名で、温泉文化は1000年以上もの歴史があります。嬉しいのは、村には源泉掛け流しの温泉が13カ所あり、夏場は朝6時から22時(冬場は23時)まで誰もが気軽に入浴できること(寸志と呼ばれる賽銭を入れるシステム)。

また、毎年1月15日に行われる道祖神祭りは、国の重要無形民俗文化財であり、日本三大火祭りのひとつとして知られています。

変わりつつある野沢温泉村

野沢温泉村のシンボル的存在の「大湯」は、立派な湯屋建築にも注目。

スキーがあまりに有名なため、野沢温泉村といえば、冬に訪れる場所というイメージを持っている人が多いかもしれません。しかし、近年は年間を通して魅力的なエリアになるべく、それまで村になかったようなタイプのショップやレストラン、宿やホテルが少しずつ増えてきました。

その中のひとつとして、ニューローカルとグループ会社の野沢温泉企画が手がけたデザインホテルが、2026年開業の「モン」になります。

バスターミナルから徒歩2分のデザインホテル

築100年の元旅館をリノベーションしたデザインホテル「モン」。

「モン」は、野沢温泉バスターミナルから徒歩2分の場所にあります。かつて木造旅館として営業し、近年は空き家となっていた築100年の建物を、川島範久建築設計事務所の川島範久氏がフルリノベーション。建物の構造、階段、外観を活かしながら、現代の旅行者が求める快適性とデザイン性を融合することで、「モン」として生まれ変わりました。

202号室に飾られているアカリ ウラガミによる作品「セイ」。

施設の名称である「モン(mont)」は、フランス語で山の意味。山の恵みをいただきながら人々が暮らす野沢温泉村を象徴する宿であり、また、村の入り口としての“門”でありたいとの思いが込められています。

手前は長野県の伝統工芸である信州松代焼のマグカップ。長野市の唐木田陶苑によるものです。奥は長野県生坂村にある玄々舎が手がけたゴブレット。

ホテルのコンセプトは循環で、山々に囲まれた野沢温泉にあるブナの森は、雨水や雪解け水を蓄え、それが温泉となり、村に還元されます。また火祭りとして知られる道祖神祭りでは、ブナの木々を使ったやぐらに火を灯します。天からの恵みが水を生み、火を灯す。すべてが巡りながら、やがて森へと戻っていく。そんな循環の中に生まれたホテルが「モン」というわけです。

全室異なるアートで彩られた客室

部屋の中の柱は、元の建物の名残り。

全10室の客室は、太い梁や柱、土壁の質感を残しながら設計されているのが特徴です。さらには土や水、祈りの記憶をモチーフにした全室異なるアートが飾られています。造りも部屋ごとに異なるため、泊まるたびに新たな感動を味わうことができます。

レコードプレイヤー完備の部屋。

注目したいのがレコードプレイヤーが置かれた部屋。常備されたレコードの中には、DJとしても活躍する沖野修也さんが主宰するアコースティック・ジャズ・ユニット、キョウト・ジャズ・セクステットが、この地に伝える民謡「道祖神のうた」をジャズ・アレンジでカバーした楽曲「DOSOJIN NO UTA」のレコードもあり、この土地の風土を違う感性で楽しめるのがいいですね。

地域食材を使った薪火フレンチ

「モン レストラン」の寺島惇シェフ。

そして、宿泊の楽しみのひとつが、メインダイニング「モン レストラン」での食事です。それまで村になかった薪火フレンチを提供。野沢温泉をはじめ、地域で採れた食材を多く使用した地産地消の料理、ローカル×フレンチが楽しめます。

厨房で腕を振るうのは、東京・代々木公園『パス』の料理長だった寺島惇シェフ。隣接する飯山市のナラの木を薪に使用。シェフ自ら薪割りを行って、日々おいしい料理を生み出しています。

「モン レストラン」のディナーでは、全8品のコース料理を提供。どのような料理が登場するのでしょうか?

「スナップえんどう クリームチーズ」(左)、「“おやき”信州地鶏 春キャベツ 野沢菜」。皿には道祖神祭りで出た灰入りのタイルを使用している。

例えば、信州の郷土料理のひとつであるおやき。「モン レストラン」では一度蒸してからフライパンで上下に焼き目をつけて提供されます。季節によって具材を変えることも特徴で、5月下旬の取材時は春キャベツと野沢菜、信州地鶏を煮込んでリエットのようにしたものが中に入っていました。

皮はジャガイモと同量の生地の粉を混ぜて作られているため、ニョッキのような食感に。熱々で香ばしいレストラン仕立てのおやきになっています。

サーモンベースのシグネチャーメニュー

「信州サーモン 甘夏 ヨーグルト」。

モン レストランのシグネチャーメニューが「信州サーモン 甘夏 ヨーグルト」です。ヨーグルトソースをベースとした少し酸味の効いた信州サーモンのタルタルで、その下には薪火でまる焦げにした雪下にんじん、サーモンは生のものと火入れしたものが両方入っています。

さらにはIPAビールシロップや自家製マヨネーズも入っていて、皿全体を混ぜて食べると、ヨーグルトの酸味と甘夏の甘み、さらには火入れしたサーモンの香ばしさが絡み合う、まさに絶品のひと皿に。

「鯉 山うど 芹」。

「鯉 山うど 芹」は、海のない内陸県で、鯉を食べる食文化のある長野県らしさを感じられるメニューです。鯉と山うど、芹を抱き合わせて春巻きにしたもので、卵黄酢味噌につけていただきます。この地域では鯉のアラや刺身は卵黄酢味噌で食べる文化があるため、それに倣いつつも、からしと酢の代わりにマスタードと白ワインビネガーを加えてフレンチ風に。

上にのったつぶつぶは、ティムールペッパーを細かく削ったもので、レモングラスのようなスパイシーな香りがアクセントになっています。

しっとりとした信州和牛に実山椒が新鮮

信州和牛 信州野菜。

メインに登場したのは、薪火でじっくりと焼かれた信州和牛のもも肉。葉玉ねぎと原木椎茸、朝採れのルッコラがつけあわせに。肉には自家製の花椒塩や実山椒をつけていただきます。

しっとりとした和牛の肉は、ピリリとした実山椒と合わせることで、さわやかな風味を纏います。つけ合わせの葉玉ねぎの甘みや椎茸の香ばしさも素晴らしく、肉をベースにさまざまな味の組み合わせを楽しめるところも魅力です。

「イチゴのバシュラン」。

デザートに登場したのは、燻したイチゴを使ったバシュラン。菜の花のハチミツを使った、なめらかなアイスクリームが添えられていました。そして、このあとにチーズケーキも登場。上に軽くかかった塩が甘さを引き立てる、技ありのひと品がラストを飾りました。

7杯のペアリング

壜内二次発酵によってつくられた「真澄 スパークリング」で乾杯。
レトランジェ・オレンジュ 2024 ルイ・モーラー。

コース料理にはドリンクのペアリングもつけることができます。ナチュールワインを中心にした料理に合うお酒が7杯ついて6,600円。ノンアルコールも可能です。

地元食材とともに楽しむ朝の時間

この日の朝食は、野沢温泉の米をはじめ、味噌汁や旬の魚の塩麹焼き、甘酒ミルク、野沢などがトレイにのり、ボリュームたっぷり。

翌朝の朝食も大充実の内容です。地元の人たちは、朝起きたら畑仕事をしたりランニングをしたあとに温泉に浸かって、自分たちが採ってきたものを食べるといった生活を送っています。つまり1日の始まりを丁寧に過ごしているわけですが、それと同様に宿泊者には早朝の温泉を楽しんだり、希望すれば、朝ヨガを行ったりしたあとに、朝食をいただく。普段では考えられないような充実した朝の時間を過ごせるのも「モン」の魅力です。

朝食は野沢温泉の米と旬の食材を中心とした贅沢な内容になっていますので、ぜひ早起きをして、ゆったりした時間の中で召し上がってみてはいかがでしょうか。

グリーンシーズンと呼ばれる、冬以外の季節に訪れる野沢温泉村は、温泉に浸かったり、おいしい食事を楽しんだりしながら、日頃の生活を見つめ直すことができる場所なのかもしれません。

モン

所在地 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9521−1
https://mont-nozawaonsen.com/

写真・取材・文=石川博也

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