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安田顕、林遣都との二人芝居再演に込める想い「この脚本を自分の棺桶に入れてほしい」<舞台『死の笛』インタビュー>

  • 2026.7.7
安田顕 クランクイン! 写真:米満ゆう子 width=
安田顕 クランクイン! 写真:米満ゆう子

安田顕が企画・プロデュースし、林遣都との二人芝居で大きな話題を呼んだ『死の笛』が再演される。安田と林の豊かで突出した表現力が、抜群のコンビネーションで息つく暇もなく楽しめるのはもちろん、脚本を国内外で高い評価を受ける坂元裕二、演出を日本のドラマや映画、舞台で名作を生み出してきた水田伸生が担うというクオリティの高さだ。もし、学生のころにこの作品を見ていたら、「演劇やる!」と〝演劇宣言〟していたと語る安田が、大阪市内で取材会を開いた。

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◆林遣都のことは「プライベートとか一切知りたくないくらい大好き」

――2024年の初演から2年で再演です。

安田:2年前に林さんと2人でやらせていただいたんですけど、すごく楽しくて、お客さんも非常に喜んでくださって、その結果が再演に結び付いたんだと思います。僕が企画・プロデュースと言えども名ばかりで(笑)、やったのは、この座組を集めることだけ。あとは舞台にチェロを入れてくれませんかと。物語もすべて坂元さんにお任せしました。

――現在、再演に向けて稽古中だそうですが、林さんは初演の時と比べていかがでしょうか。

安田:より頼もしくなっていらっしゃいますね。 30代の男性の色気はどんどん醸し出すものなんだと改めて思いました。頼もしいし、スキルも上がっていらっしゃるし、舞台に、芝居に対して夢中に取り組む姿勢がより大きくなっている。大好きなんですよ、林さんのことが。もう何が好きと言ったら、プライベートとか一切知りたくないぐらい(笑)。食事にも呑みにも行ったことはないし、陰からのぞき見するぐらいがちょうどいいんですよ(笑)。

――林さんのどこが大好きなのですか。

安田:ドラマなどでも過去に共演していますけど、全然飽きないし、お芝居されている時の輝きが素晴らしくて、ずっと魅せられるんですよ。2人でやっている時の芝居の楽しさや、グルーブができていく感じは、もうたまらなくて、2時間の舞台を共有し、林さんを独り占めできるというのはなんて幸せなんだろうと。それほど魅力的で素晴らしい俳優さんです。

――『死の笛』は、ある戦時下で、敵国同士の炊事班に所属する2人のコックの物語です。坂元さんは再演に向けて、さらに改稿されました。

安田:初演から2年経って、坂元さんの中で感じる部分があったのか、さらにブラッシュアップしてくださり、今のご時世にマッチしているなと。どの時代でもマッチする普遍性みたいなものが坂元さんの物語にはあると思います。訴えかけるテーマがすごく大きくて、戦争と平和、死ぬことと生きること、美しいと汚い、考えると知能がないなどのシンプルなワードがいっぱい出てきますが、声高に提示するのではなく、ただ感じていただけると思います。

――坂元さんは、安田さんはカノオ、林さんはウスダという役をあてがきされたかと思うのですが、似ている部分や、違うと思うところはありますか。

安田:「お父さんが寝るしてて、仕事遅いするがで寝るしてた」というような、2人ともクセのあるしゃべり方をする人物なんです。それには理由があるんですけど、僕はカノオよりはもうちょっと流暢に話せるほうだと(笑)。年齢設定は一緒で50代ですね。坂元さんがこういう人物を2人にやらせたら面白いという意味であてがきされたんじゃないかと思いますが、自分自身に重ね合わせるところはないですね。

――林さんの役はどうでしょう。

安田:もうピッタリだと思います。設定として2人とも働くのが嫌で、自分の生きがいは何だということを考えている。僕の役柄は、復讐心というものを生きがいにして頑張っている人。林さんは、恋心というものを生きがいにして頑張って働いている人。林さんは色んな役をされますが、今回のようなピュアさを体現する時は、すごく魅力的で輝いています。

◆この脚本を自分の棺桶に入れてほしい


――安田さんは復讐心を糧にすることはありますか。

安田:「チクショウ、できるまで頑張るぞ。ああ、思ったような演技ができなかったな、折れそうだわ。だけど朝になったらできるまでやってやるぞ」というのはありますが、復讐心とはちょっと違いますよね。

そういう言葉に今、敏感になっていて。先日、ニュースで、被爆された方が「被爆で親を失い自分も被爆して病気になりました」と言われていたのが忘れられないんです。でも、「原爆を落とした人たちを恨んではいない」とおっしゃるんですよ。「ずっと恨んでいたら生きていけない」と。復讐心を持つ人間がそれを生きがいとして、どこまで生きていけるのかなと思います。

――坂元さんとは、テーマや内容についてお話されたりするのでしょうか。

安田:していないんですよ。物語に関する疑問点を全部聞いてしまうと、その本を越えられないじゃないですか。明快で難解な言葉で構成されたストーリーなんですけど、林さんと水田さんと3人で考えて、考えて、考えて、1つの答えを見出していく作業がすごく豊潤なものになっているんです。だって「チェーホフさん、これってどういう意味ですか?」「シェイクスピアさん、このセリフの意味は?」とは、もう聞けないじゃないですか(笑)。

――(笑)。

安田:もし、生きていたとしても、聞かないで自分で考えたいんです。この物語は、考えるということをやめたら、脳が停止して、脳が死ぬ。それは死んでいるのと一緒ですよということが含まれていますし、当たり前のことに疑いを持って、当たり前とは何かを一緒に考えてみようよ。それを考えた先に何が生まれるかということを、坂元さんはおっしゃっているような気がしていて。これだけ言っといて、坂元さんに「全然違う」と言われたら、嫌ですよね(笑)。

――安田さんと林さんの演技に笑ったり、恐怖を感じたり、ジーンとすると同時に、考えさせられる作品ですね。最後にメッセージをお願いします。

安田:例えは変かもしれないですが、この脚本を自分の棺桶に入れてほしい、そんな作品です。二人芝居は、波長が合わなかったら大変なことになるんですが、波長が合えば、もう3倍にも4倍にもグルーブがかかってくる。林さんとはそれができますし、その熱量をぜひ、見てほしいですね。

(取材・文・写真:米満ゆう子)

舞台『死の笛』は、7月12日まで東京・IMM THEATER、7月17日~19日北海道・札幌サンプラザコンサートホール、7月24日~8月2日大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールにて上演。

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