1. トップ
  2. エピソード
  3. 猛暑日に「熱中症かも」50代男性の救急通報。「暑さだけが原因か?」違和感を感じた救急隊が確認した、“熱中症以外”の原因

猛暑日に「熱中症かも」50代男性の救急通報。「暑さだけが原因か?」違和感を感じた救急隊が確認した、“熱中症以外”の原因

  • 2026.7.23
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元救急隊員ライターのとしです。

蒸し暑い夏の日に、汗をかきながら意識がもうろうとしている人がいれば、多くの人が熱中症を疑うでしょう。

実際、夏場の救急現場では、熱中症による救急要請が急増します。

しかし、暑い日に起きた体調不良が、すべて熱中症とは限りません。

今回は、妻から「夫が熱中症かもしれない」と通報が入り、救急隊が観察を進める中で別の可能性に気づいた事案をご紹介します。

蒸し暑い日に意識がもうろうとする男性

救急要請が入ったのは、蒸し暑さの厳しい夏の日。

50代男性の意識がもうろうとしており、奥様からは「熱中症かもしれません」と伝えられていました。

現場に到着すると、男性は呼びかけに対する反応が鈍く、額や体には汗が見られました。
気温や湿度を考えれば、熱中症を疑っても不思議ではない状態です。

妻も暑さの影響だと思い、心配して救急車を呼んだのでしょう。

救急隊は意識状態や呼吸、脈拍を確認しながら、男性の体に触れて観察を進めました。

その時、少し気になることがありました。

熱中症にしては強い熱感がない

男性には発汗が見られましたが、体に触れても、熱中症の傷病者で感じるような強い熱感がありませんでした。

もちろん、体が熱くないからといって、熱中症を完全に否定できるわけではありません。
それでも、救急隊には「暑さだけが原因なのだろうか」という違和感が残りました。

意識障害を起こす原因は、熱中症だけではありません。

脳卒中や低血糖、薬の影響など、さまざまな病気を考える必要があります。

そこで奥様に、男性の持病や服用している薬について尋ねました。

すると、男性には糖尿病の既往があり、薬を飲んで治療を続けていることが分かったのです。
さらに詳しく確認すると、男性はその時、まだ食事を取っていませんでした。

糖尿病の薬を使用している人が、食事を取れないまま時間が経過すると、血糖値が下がりすぎることがあります。

救急隊の中で、熱中症とは別の可能性が一気に高まりました。

測定して確認された低い数値

救急隊が男性の血糖値を測定すると、かなり低い数値が確認されました。
発汗や反応の鈍さは、熱中症ではなく、低血糖によって起きている可能性が考えられます。

ただし、当時の現場で行えるブドウ糖投与の処置基準には該当していませんでした。

そのため、救急隊は意識状態や呼吸、血圧などの変化を確認しながら、速やかに搬送先を調整しました。

医療機関には、糖尿病の治療中であることや食事前だったこと、血糖値が低かったことを伝達。

一見すると熱中症に見えた状態でしたが、体の熱感や持病、食事の状況を一つずつ確認したことで、別の原因を疑いながら適切な医療機関へ引き継ぐことができました。

夏場でも熱中症とは限らないこともある

夏に汗をかき、意識がもうろうとしていれば、熱中症が最初に思い浮かぶのは自然なことです。

妻が「熱中症かもしれない」と考えたのも、無理のない状況でした。

しかし、救急隊は通報内容だけで原因を決めつけることはできません。
体の熱さ、持病、服薬状況、最後に食事を取った時間など、わずかな情報が原因を探る手がかりになります。

暑い時期であっても、意識障害の背景に別の病気が隠れていることはあるのです。

既往だけでなく、当日や通報前の様子など、気づいたことは分かる範囲で救急隊に引き継いでいただけると、別の原因の可能性を模索することができます。

季節や第一印象に引っ張られず、目の前の状態を丁寧に観察することの大切さを、改めて感じた事案でした。


ライター:とし
元救急隊員。消防で17年、主に救急隊として活動し救急救命士資格を取得。現場経験をもとに、救急の分かりにくい部分を一般向けに噛み砕いて発信しています。

【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ