1. トップ
  2. エピソード
  3. 夏休みに増える駅でのイベント…元駅員が語る、運営側のリアルに「普段の業務では得られない報酬もあった」

夏休みに増える駅でのイベント…元駅員が語る、運営側のリアルに「普段の業務では得られない報酬もあった」

  • 2026.7.23
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「駅事務室のリアル」をご紹介します。イベント業務は負担もありますが、普段の業務だけでは得られない「報酬」もありました。

駅ではイベントが目白押し!

夏休みにあわせて、今年も全国の鉄道各社では運転士体験や車両基地見学など、家族で楽しめるさまざまな催しが連日予定されていることでしょう。

もちろん駅でも、列車の運転席や車両基地ほど派手ではないものの、バックヤードツアーを中心としたイベントを行うところがあります。

毎日同じような業務を淡々と続ける鉄道会社の社員としては(毎日異常がないことは誇るべきではあるのですが)、季節を感じられるイベントが、仕事へのやる気を再び引き出してくれるように感じていました。

特に嬉しいのは、列車好きなお子さまのいるご家族が楽しそうにしている様子を見たときです。

イベント専門職員がいるわけではない

これらのイベントですが、鉄道会社にイベント専従の社員がいるわけではありません。駅員や乗務員、さらには本社の社員が通常業務に加えて企画・準備・実行・撤収を行っています。

私はイベント関連の業務自体は楽しくて気に入っていました。一方でイベントがあるからといって通常業務の量や勤務シフトを配慮してもらえるわけではなく、イベントの時期が近づくと「また連勤と残業が増えるぞ」と憂鬱にもなりました。

「テレビにたまに映るような、広報担当になれたらなあ」と思うこともありました。しかし広報担当は会社全体どころか沿線地域や協力企業の情報まで把握しなければいけません。

そう考えると、駅員の知識だけでいっぱいになってしまう私の頭では、広報は務まらなかったでしょう。人事担当者は慧眼を持っていたようです。

泊まり勤務明けのヘルプ

駅主催のイベントは、主に日勤(朝に出勤して、その日の夕方に帰る勤務形態)の駅員が行います。しかし開催当日は日勤の駅員だけでは人手が足りません。そのため、泊まり勤務(朝に出勤して駅で宿泊し、翌朝に帰る勤務形態)の駅員も勤務終了後に手伝いを要請されるのです。

もちろん残業分の給料は出ますし、制度上は断る権利もあります。

泊まり勤務の駅員は、きっぷ売り場の売上金管理など駅の実務を主に任されています。朝8時から9時ごろに泊まり勤務を終え、翌日の泊まり勤務の駅員に業務を引き継ぐと、その日に行われるイベントの手伝いに加わります。

あるいは、その日のきっぷ売り場担当として日勤に入っていた駅員をイベントの人員に回し、泊まり明けの私が引き続き窓口に入ることもありました。この場合はイベントに直接関われないので、余計にしわ寄せを食らった気分になりました。

更衣室に戻ると…

駅のイベントは午前中に盛り上がり、午後になると落ち着いてくることがほとんどです。給料の発生する残業中ということもあり、昼12時ごろを目安に上司から「泊まり明けのメンバーは、もう帰っていいよ。お疲れさま」

と声をかけられ、駅事務室を通り抜けて更衣室に戻ります。

イベント時、更衣室のソファや畳張りの休憩室には、よく疲労困憊した泊まり明けの駅員たちが転がっていました。泊まり勤務という不規則な勤務体系のため、休憩時間には仮眠をとってしっかりと体力を回復させている駅員が多く見られます。

一方で私は、疲労困憊して眠り込んでいる先輩や同僚に声をかけることもなく、そそくさと制服から私服に着替え、「お疲れさまでした」と自宅まで一直線に帰るのでした。職場ではなく自宅で眠りたかったからです。

イベントは委員会制、活動報告義務も

実は私がいた鉄道会社には委員会制度があり、イベント委員会、美化委員会、増収委員会などのいずれかに必ず所属し、1年間活動する決まりになっていました。

先述した「きっぷ売り場担当として日勤に入っていた駅員をイベントの人員に回し、泊まり明けの私が引き続き窓口に入る」という対応も、日勤の駅員がイベント委員会のメンバーだったためです。

この委員会活動は年度ごとに活動報告をしなければならず、勤務箇所の中でも特に優秀だった委員会は全社発表会に進みます。そうなると、全社発表会用の資料作成や発表練習がさらに増えてしまいます。

当時は通常業務の合間を縫ったり、残業をして準備にあたったりすることもあったため、負担に感じることもありました。

では、長きにわたってこの会社の社員たちはなにをモチベーションとして委員会活動にあたってきたのでしょうか?

「サービス業の最大の報酬はお客さまからの感謝だ」というようなことを、漫画かなにかの台詞で見聞きした覚えがあります。

『やりがい搾取』の口実として使われることもあり、当時は無条件に賛同できるわけではありませんでした。

しかしながら、給料だけ受け取ってイベントに関与せず淡々と働くだけの日々を送っていれば、私はもっと早く音を上げていたかもしれません。現場で直接いただく『お客さまの笑顔』が私たちの心の支えになっていたことは間違いありません。

「お客さまの笑顔を直接見ることはなんの報酬にもならない」とは、全く結論付けられない、と私は思います。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ