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「掃除はしているつもりだったので」築25年・北側の押し入れに黒い点々…30代夫婦が直面した"異変の正体"【一級建築士は見た】

  • 2026.7.29
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「梅雨明けのころから、押し入れにしまっている布団が、なんだかカビ臭いんです。おかしいなと思って奥をのぞいたら、壁にうっすら黒い点々が…。北側の和室の押し入れなんですが、掃除はしているつもりだったので、ショックで。この家、大丈夫なんでしょうか」

そう話すのは、2年前、郊外の住宅地に中古の一戸建て(築25年・4LDK・延床約103㎡/土地約150㎡、約2,800万円)を買ったIさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。

1階北側の和室が寝室で、日中は子どもの遊び場。だから朝は、布団をすぐ押し入れにしまうのが習慣でした。購入時の説明で、築年数の経った家は湿気がたまりやすいところがあると聞いてはいましたが、夏を迎えて、その押し入れがここまで悩みの種になるとは思っていませんでした。

カビは「3つの条件」が揃うと生える

カビが生えるには、条件があります。25〜28℃ほどの温度、高い湿度、そしてほこりなどの栄養。この3つが揃った場所に生えるのです。文部科学省の資料でも、湿度が70%を超えると数か月で、75%を超えると数週間で、90%ではわずか2日ほどでカビが生えるとされ、湿度が高いほど一気に育つことが示されています。

夏の押し入れは、この条件が揃いやすい場所です。ふすまを閉め切っているため空気が動かず、湿気がこもります。しかも、しまっている布団は寝汗を吸っています。朝の布団をそのまましまえば、湿気を毎日運び込んでいるのと同じことになるのです。

さらに、北側で外壁に接した押し入れは、日が当たらず温度が低めで、湿気がたまりやすい場所。築年数の経った家では断熱材が薄く、外壁側の壁が外気の影響を受けやすいことも、湿気のたまりやすさに拍車をかけます。Iさんの押し入れは、条件のオンパレードでした。

「詰め込む」と「すぐしまう」が、カビを育てる

見落とされがちなのが、日々の使い方です。

押し入れにものを詰め込むほど、中の空気は動かなくなり、湿気の逃げ場がなくなります。そして、起きてすぐ布団をしまう几帳面な習慣が、じつは湿気を運び込む習慣になっています。

大事なのは、これは家の故障や欠陥とは限らず、「条件が揃った」結果だということです。栄養になるほこりや皮脂は、掃除をしていても完全には断ちきれません。だから、現実的に崩しやすい条件は湿気。裏を返せば、湿気の条件を崩せば、カビは防げます。

Iさん夫婦はどう対応したのか

Iさん夫婦は、まず生えてしまったカビの手当てから始めました。消毒用エタノールを乾いた布に含ませて拭き取ります(水拭きは湿気を足すので避け、使った布はそのまま捨てます)。ただし、エタノールは建材によっては変色や色落ちを起こすことがあるため、目立たない場所で試してから、壁全体を拭きました。そして、よく乾かします。臭いのついた布団は、天日にしっかり干してから戻しました。

そのうえで、条件を崩す習慣に切り替えました。朝の布団はすぐしまわず、めくって1時間ほど乾かしてから。押し入れの床と壁ぎわにすのこを置いて、空気の通り道をつくります(数千円)。詰め込みを減らして隙間をあけ、週に1回はふすまを左右とも開けて、サーキュレーターで風を通します(湿気の多い雨の日は避けて、乾いた日に)。冷たく湿った空気は下や隅にたまりやすいので、除湿剤はそこへ(数百円。水がたまったら交換)。

ひと月ほどで臭いは気にならなくなり、黒い点々の再発もありません。「これで繰り返すようなら、床下の湿気や断熱など、家の側の点検を頼むつもりでした。習慣の改善で済んで、ほっとしています」とIさんは話します。

北側の押し入れは「湿気がたまる前提」で使って

押し入れは、布団を収納できる日本の暮らしの知恵です。奥行きがあり、かさばる寝具もまとめてしまえる収納力も魅力です。一方で、北側・外壁側の収納は、家の中でいちばん湿気のたまりやすい場所でもあります。以下を意識して付き合ってみてください。

・布団や衣類は、乾かしてからしまう(起きてすぐしまわない)
・すのこと隙間で、空気の通り道をつくる。除湿剤は下と隅に
・換気は乾いた日に、ふすまを左右とも開けて風を通す
・エタノールで取れないカビや、対策しても繰り返す場合は、床下や断熱など家の側の点検を
※エタノールでカビを拭き取る際は、換気と火気厳禁を徹底し、マスクと手袋を着用する

カビは条件が揃えばどの家でも生えると知って、湿気の条件をひとつ崩す習慣を続ければ、布団と押し入れをいちばん安く守れます。

参考:
カビ対策マニュアル 基礎編(文部科学省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。

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