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4年前に3,200万円で買った家の前で、夏休みを迎えた30代Aさんが"ヒヤヒヤ"しているワケ【一級建築士は見た】

  • 2026.7.31
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「買ったときは、車なんてほとんど通らない静かな道だったんです。それが最近、朝と夕方になると、けっこうなスピードで通り抜けていく車が増えて。夏休みに入って、子どもが家の前で自転車に乗る時間も長いので、いつか飛び出すんじゃないかとひやひやしています」

そう話すのは、4年前、郊外の住宅地に一戸建て(4LDK・延床約97㎡/土地約135㎡、約3,200万円)を買ったAさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。家の前は、車がすれ違うのがやっとの、中央線のない生活道路。それがこの1〜2年で、見知らぬ車が次々と通り抜ける道に変わってしまいました。

なぜ静かな道が「抜け道」になるのか

生活道路が抜け道になるのには、いまの時代ならではの理由があります。

カーナビや地図アプリは、渋滞を避けて速く着くルートを案内します。近くの幹線道路が朝夕に混むと、アプリは住宅街の中の道を「速いルート」として示し、その案内に従う車が、次々と流れ込んでくるのです。ドライバーに悪気があるわけではなく、多くは画面の案内どおりに走っているだけです。

そして、生活道路もみんなが使える公道です。地域の住民が「通らないでほしい」と思っても、通行そのものを止めることはできません。だから、静かだった道が抜け道に変わっても、それ自体は誰のルール違反でもないのです。

車の速度が上がるほど、事故は重くなる

見落とされがちなのは、住宅街の道の交通量や車の速度が、「買ったときのまま」ではないということです。周りの道路事情やアプリの案内しだいで、暮らしの環境は変わっていきます。

そして、速度は事故の重さに直結します。歩行者と車の事故では、車の速度が時速30kmを超えると、歩行者の致死率が急激に高まることが分かっています。狭い道を速い車が通り抜けること自体が、リスクなのです。

夏休みは、子どもが日中も家のまわりで過ごす季節です。通学の列がない代わりに、遊びや習い事で、思い思いの時間に子どもが道に出てきます。Aさんのひやひやは、この季節にこそ現実味を帯びるのです。

Aさん夫婦はどう対応したのか

Aさん夫婦は、家庭でできることと、地域として動くことを分けて考えました。

家庭では、子どもとルールを決めました。道路では遊ばない、家の前でも一度止まって左右を見る、自転車ではヘルメットをかぶる。お金はかからず、今日から始められます。

そして地域としては、市と警察に相談することにしました。生活道路には「ゾーン30」という、区域を決めて最高速度を時速30kmに規制する仕組みがあります。さらに「ゾーン30プラス」では、警察と道路管理者が連携し、ハンプ(路面の盛り上がり)や狭さく(道幅を部分的に狭める仕掛け)などを組み合わせて、速度と抜け道利用そのものを抑えます。

こうした対策は、地域の要望や事故のデータをもとに検討されるため、まず声を届けることが出発点になります。Aさんは通り抜けの多い時間帯や様子をメモし、最初の窓口として、町内会を通じて市の道路課に相談しました。

「すぐにハンプがつくわけではないですが、現地を見てもらえることになりました。黙っていたら、何も始まりませんでした」とAさんは話します。

なお、速度の標識がない道路の法定速度は現在、時速60kmです。2026年9月からは、中央線(センターライン)や車両通行帯のない道路に限って時速30kmに引き下げられることが決まっており、Aさんの家の前のような道は、まさにその対象ですが、確実に速度を落とさせるには、こうした地域の声も欠かせません。

家の前の道は「変わりうるもの」として見て

静かな住宅街の道は、子育て世帯には大きな魅力です。子どもが歩いて通える学校や公園が近いのも、こうした住宅地の良さです。一方で、その静けさは周りの道路事情しだいで変わりうるもの。住んでいる人も、これから買う人も、以下の点を意識しておくと安心です。

・家を見に行くなら、平日の朝夕にも前面道路の交通量を見てみる
・ゾーン30などの指定があるか、標識や路面表示を確かめる
・通り抜けが気になり始めたら、時間帯や様子を記録する
・記録をもとに、町内会や学校を通じて、市の道路担当や警察に相談する

危ないと感じたら記録して声を届けること、そこから生活道路を守る仕組みは動き出します。

参考:
ゾーン30とは?(警視庁)
生活道路の交通安全対策ポータル(国土交通省)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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