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「梅雨の大雨のあと、壁に細いひびが…」築32年の中古住宅を購入した30代夫婦を襲った“庭の異変”【一級建築士は見た】

  • 2026.7.31
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「梅雨の大雨のあと、庭の擁壁に細いひびを見つけたんです。雨がやんで何日もたつのに、壁の一部が湿ったままのところもあって。これから台風の季節も来るのに、崩れたりしないか、不安で…。でも、どこに相談すればいいのかも分からなくて」

そう話すのは、3年前、ひな壇状に造成された住宅地の中古の一戸建て(築32年・4LDK・延床約93㎡/土地約165㎡、約2,400万円)を買ったAさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。

庭の先には、下の家との高低差を支える高さ2mほどの擁壁があります。買うときの説明で、擁壁があること自体は聞いていました。ただ、家の状態ばかり気にしていて、擁壁を意識したことは、ほとんどありませんでした。

擁壁は、土の圧力とずっと向き合っている

擁壁とは、高低差のある土地で、土が崩れるのを防ぐために設けられた壁状の構造物です。ひな壇状の住宅地では、擁壁がそれぞれの宅地を支えています。

擁壁は、背中側の土から常に圧力を受けています。そして雨が降ると、土にしみ込んだ水のぶん、この圧力はさらに高まります。そこで擁壁には「水抜き穴」が設けられ、土の中の水を逃がして、圧力が高まりすぎないようにしています。

つまり、雨がやんで何日もたつのに湿ったままだったり、水がしみ出していたりするのは、水がうまく抜けていないサインかもしれないのです。ひびやふくらみも、圧力の影響が形になって現れたものの可能性があります。大雨や台風で擁壁の負担が増す夏は、こうした変化が現れやすい季節でもあります。

家は点検しても、擁壁はノーマークになりがち

見落とされがちなのが、擁壁の点検や手入れは、その土地の所有者の役割だということです。なお、ひな壇の擁壁が上と下どちらの家のものかは、造成の経緯や境界によって異なります。分からないときは、購入時の書類や自治体の窓口などで確かめられます。

外壁や屋根は意識していても、庭の端の擁壁まで気にかけている人は多くありません。とくに中古の家では、擁壁も家と同じだけ年数を重ねているのに、買うとき・買ったあとに状態を確かめる機会がないまま、時間が経ちがちです。

小さなひびも、放置して劣化が進めば、補修ではすまない大がかりな工事につながることがあります。さらに、放置した擁壁が崩れて、下の家や通行する人に損害を与えた場合には、民法の「土地工作物責任」の定め(717条)により、所有者が賠償責任を負う可能性もあります。逆にいえば、早く気づいて手を打つほど、選べる対処は増えるのです。

Aさん夫婦はどう対応したのか

そこでAさん夫婦は、お金のかからないことから順に始めました。

まず、国土交通省が公開している「我が家の擁壁チェックシート(案)」を使ったセルフチェックです。ひび割れ・傾き・ふくらみ・水抜き穴のようすなどを点数化して、おおまかな危険度を自分で確かめられる、住民向けの無料のシートです。

あわせて、水抜き穴の手前にたまった土や落ち葉を取り除き、穴をふさがないようにしました。見つけたひびは、日付の分かる写真で記録し、広がっていないかを見ていきます。

そのうえで、市の宅地・建築の窓口に相談しました。自治体によっては、専門家の派遣や、対策工事の費用の一部を助成する制度もあります。セルフチェックの結果、Aさんの家の擁壁はすぐに危険という判定ではありませんでしたが、詳しい点検を専門家に頼む段取りができ、「何をすればいいか分かっただけで、気持ちが楽になりました」とAさんは話します。

擁壁のある家は「壁のようす」を年に1回

擁壁のある土地は、高低差を活かした眺めや日当たりが魅力です。見晴らしのよいリビングや、明るい庭をつくりやすいのも利点です。一方で、擁壁は家と同じように年を取り、手入れの主体は所有者です。擁壁のある家に住んでいる・これから買うなら、以下を確かめておくと安心です。

・ひび割れ・ふくらみ・傾きがないか、年に1回と大雨のあとに見る
・水抜き穴がふさがっていないか、雨後もしみ出しが続いていないか
・国土交通省のチェックシートで、おおまかな危険度を確かめる
・不安があれば、自治体の窓口や専門家に相談する(助成制度の有無も確認)

擁壁を「あって当たり前の壁」にせず、年に1回ようすを確かめることが、家と土地を費用を抑えて安全に守る近道です。

参考:
我が家の擁壁チェックシート(案)(国土交通省)
擁壁の点検と適切な維持管理のお願い(調布市)


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
行政で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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