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隣人「時間ができたらやりますから」と言ったまま…何年も越境し続けた庭木に、40代夫婦がついた深いため息

  • 2026.8.3
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

夏休みや帰省、旅行などで家を空ける機会が増えると、忙しさから“庭木”の手入れが後回しになってしまうご家庭も少なくありません。

しかし、その枝が隣の敷地まで伸びてしまうと、落ち葉の掃除や虫除け対策の手間、日当たりの悪化などが原因で、思わぬ近隣トラブルへ発展することがあります。

今日は、隣家の庭木が何年も自宅敷地へ越境し、「どうして切ってくれないの…」と悩み続けた40代夫婦の実際のエピソードをご紹介します。

毎日続く落ち葉掃除と日当たりの悪化

弊社の仲介で、戸建て住宅を購入された40代のAさん夫婦のお話です。入居から数年が過ぎた頃、隣家の庭木の枝が少しずつ自宅敷地へ伸び始めました。

最初は気になるほどではありませんでした。しかし年々枝は大きく育ち、夏になると朝玄関を開けるたびに、庭やカーポートには茶色い落ち葉が一面に散らばっていました。

週末には子どもと庭で水遊びをしようとしても、まずはほうきを持って落ち葉を集めるところから始まります。掃除を終えても、風が吹くたびに枝が揺れ、パラパラと新しい葉が舞い落ちてきました。

さらに枝葉が窓の前まで広がったことで、リビングへ差し込んでいた日差しも少しずつ遮られるようになります。晴れた日でも室内はどこか薄暗く感じられ、湿気もこもりやすくなったそうです。

「せっかく南向きの家を買ったのに…」

Aさんは肩を落としていました。

「切ってほしい」と何度も依頼。それでも状況は変わらなかった

Aさんは、隣家へ何度もお願いしました。

「庭木の枝がこちらまで伸びているので、剪定(庭木の枝を切り整えること)していただけませんか?」

すんなり応じてもらえると思っていましたが、隣家から返ってきたのは意外な言葉でした。

「ここ最近忙しいんですよ…時間ができたらやりますから」

Aさんはその言葉を信じて待ちました。しかし、数週間、数ヶ月と過ぎても枝が切られることはありません。

季節が進むにつれて枝はさらに大きくなり、風が吹くたびにサラサラ、パラパラと落ち葉が舞い落ちます。朝、玄関を開けると庭には落ち葉が散らばり、車のフロントガラスやカーポートの屋根にも積もっていました。

夏休みに家族で旅行へ出掛け、数日ぶりに帰宅したときには玄関アプローチから庭の奥まで落ち葉が敷き詰められ、スーツケースを置く場所もないほどだったそうです。炎天下で汗を拭きながら掃除を終える頃には、子どもたちは遊び疲れて室内へ入ってしまっていました。

「またか…。いい加減にしてほしいよ」

ほうきを動かしながら、Aさんは思わずため息をつきます。弁護士への相談も考えましたが、費用や時間がかかることを知り、簡単には踏み切れませんでした。

「切ってもらうまでこのまま我慢するしかないのか…」

庭へ出るたびに越境した枝が目に入り、気持ちまで重くなってしまったそうです。

民法改正を知り、長年の悩みが動き出した

転機になったのは、2023年4月の民法改正でした。弁護士への相談も考えながら、自宅で越境した庭木についてインターネットで調べていたAさんは、枝に関するルールが改正されていたことを知ります。

初めて知った制度に、Aさんは思わず驚いたそうです。

2023年4月の民法改正により、枝の所有者へ切除を求めてから相当期間(一般的には2週間程度が目安とされる)が経過しても対応されない場合や、枝が落下する危険があるなど急迫の事情がある場合には、一定の条件のもとで、越境した枝を自ら切り取ることが認められるようになりました。

もちろん、すぐに勝手に枝を切ってよいわけではありません。

Aさんは通知方法や条件を一つひとつ確認したうえで、改めて隣家へ切除を依頼し、「指定した期日までに切除されない場合は自ら切り取る」旨も伝えました。それでも対応はなく、制度に沿って越境している枝だけを専門業者へ依頼して剪定することにしたのです。

作業当日、枝が少しずつ切り落とされ、長年窓を覆っていた枝葉がなくなると、それまで遮られていた夏の日差しがリビングいっぱいに差し込みました。

剪定費用は約3万円でした。

一定の条件を満たした場合、自ら切除した費用は枝の所有者へ請求できる可能性があります。しかしAさんは、これ以上ご近所との関係をこじらせたくなかったため、自己負担することを選びました。作業が終わった翌朝、玄関を開けても新しい落ち葉はほとんどありません。

「もっと早く制度を知っていれば、何年も悩まずに済んだかもしれません」

そう話すAさんの表情は、ようやく長年の悩みから解放されたように見えました。

庭木は定期的な管理と早めの話し合いが大切

庭木は住まいに季節感を与えてくれる一方で、成長すると隣地へ枝が越境することがあります。2023年4月の民法改正により、一定の条件を満たした場合には、越境した枝を自ら切り取ることが認められるようになりました。ただし、条件を確認せずに切除すると、新たなトラブルへ発展するおそれがあるため注意が必要です。

また、一定の条件のもとで自ら枝を切除した場合、その費用は枝の所有者へ請求できる可能性があります。一方で、実際には費用負担を巡って話し合いが長引いたり、近隣関係がさらに悪化したりするケースも少なくありません。

今回のAさんも請求できる可能性はありましたが、「これ以上関係を悪化させたくない」という思いから、剪定費用は自己負担することを選びました。

そのため、越境に気付いたら放置せず、まずは隣地所有者へ早めに相談することが大切です。状況によっては、不動産会社や弁護士などの専門家へ相談しながら進めることで、不要な対立を避けやすくなります。

庭木は定期的に剪定し、お互いが気持ちよく暮らせる住環境を維持することが、近隣トラブルを未然に防ぐ大切なポイントといえるでしょう。

参考:〜民法233条改正を学ぶ〜|越境する根・枝の切除問題とは?(公益社団法人全日本不動産協会)



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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