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運転中に意識を失ったら…?鉄道乗務員が年2回受ける健診と"命綱"の正体

  • 2026.8.5
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

ここ数年、日本の夏の暑さは災害とも言えるレベルで、熱中症などで体調を崩す人が後を絶ちません。それは、電車の運行に携わる鉄道乗務員にとっても例外ではなく、過酷な環境下での健康管理は鉄道会社にとって重要な課題となっています。

もし、大勢の命を預かる運転士が運転中に体調を崩してしまったらどうなるのでしょうか。今回は、鉄道乗務員の健康管理と万が一の事態に備えた安全対策、そして夏を乗り切るための現場の取り組みについてご紹介します。

年2回の健康診断と毎日の点呼

鉄道乗務員は、早朝から深夜に及ぶ不規則なシフトや泊まり勤務が多く、身体への負担が非常に大きい職業です。そのため、深夜業を含む業務として、労働安全衛生法における「特定業務従事者」に該当します。一般的な会社員であれば健康診断は年に1回ですが、乗務員の場合は「6ヶ月に1回」の頻度で実施することが義務付けられており、より緻密な健康状態のチェックが行われています。

さらに、日々の乗務前に行われる点呼も健康管理において重要です。アルコール検査はもちろんのこと、「睡眠時間は十分に取れているか」「顔色や声の調子はおかしくないか」などを、管理者が対面で確認します。ここで体調に不安な要素があれば、決して無理はさせず、乗務から外す判断が下されます。

夏ならではの熱中症対策

日々管理をしていても、近年の猛暑は油断できません。特に運転室は前面の大きなガラスから直射日光が容赦なく差し込むため、温室のように温度が上がりやすくなります。

そこで鉄道各社では、近年、夏ならではの対策を強化しています。例えば、通気性の良いポロシャツやファン付きの冷却ベストを導入したり、直射日光から目を守るためのサングラスの着用や、制帽の着用を免除する「脱帽」を認めたりする会社も増えています。乗務員や駅員に対し、業務中に塩分や水分をこまめに補給することを推奨する会社もあり、各社がさまざまな面から対策を行っています。

万が一、運転中に意識を失ったら?

それでも、人間である以上、突然体調が急変する可能性はゼロではありません。もし運転中に熱中症や心疾患などで意識を失い、電車がそのまま走り続けて暴走してしまえば、大事故につながってしまいます。

そのような事態を防ぐため、運転席にはデッドマン装置と呼ばれる安全装置が備わっています。これは、運転士が常にハンドルを握っていたり、足元のペダルを踏み込んでいたりして正常な判断を行える状態かを検知するシステムです。もし運転士が気を失ってハンドルやペダルから手足が離れると、異常を検知して自動的に非常ブレーキがかかる仕組みになっています。

また、現在の日本の電車で主流となっているワンハンドルマスコン(一つのハンドルで加速・減速を行う装置)の多くは、手前に引くと加速し、前側に倒すとブレーキがかかる構造になっています。つまり、万が一運転士が意識を失って運転台に前のめりに突っ伏してしまった場合、体の重みでハンドルが前方に倒れ、自然と強力なブレーキがかかるよう設計がされているのです。

さらに、運転士の異変に気づいた車掌が、最後尾の車掌室から非常ブレーキのスイッチを操作して、電車を緊急停止させる仕組みも整っています。

プロとしての体調管理

乗務員が急な体調不良で乗務交代となれば、電車の運休や遅延が発生し、多くの利用者に影響が出てしまいます。だからこそ、何より大切なのは乗務員一人ひとりの日頃からの体調管理です。

休日の過ごし方や食事の栄養バランスに気を配り、不規則なシフトに合わせて睡眠時間を綿密にコントロールするなど、乗務員たちは仕事を意識しながら自分の体調を整えています。涼しい顔をして時間通りに電車を走らせている裏側には、こうした健康管理と安全装置が存在しています。

うだるような暑さの中、駅や車内で働く乗務員の姿を見かけた際は、乗務員たちの取り組みにも少しだけ想いを馳せていただければ嬉しいです。


参考:
職員の能力開発と健康管理(東京都交通局)
労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう(厚生労働省)
デッドマン装置(日本民営鉄道協会)
駅係員・乗務員を対象にポロシャツを導入(相模鉄道)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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