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「虫に刺されて朝を待ちわびた」鉄道員の仮眠室が、今やホテル級に様変わりしたワケ

  • 2026.7.27
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役鉄道会社社員の福本明文です。

乗務員や駅員など、鉄道の現場で働く多くの人が経験するのが泊まり勤務です。シフトによっては、週に2回程度、駅や乗務員区所での泊まり勤務が発生することもあります。最終電車を見送り、数時間後にはもう始発電車を動かさなければならないハードなスケジュールの中で、鉄道員たちは現場に設けられた仮眠室で休息を取っています。

数百人、数千人の命を預かる鉄道員にとって、しっかりと睡眠を取り、疲労を回復させて万全の状態で業務に臨むことは、安全運行のために必要不可欠な義務でもあります。今回は、普段は利用者の目に触れることのない、鉄道現場の仮眠室の裏側に迫ってみましょう。

短い夜を過ごす、ある日の仮眠室

かつての鉄道現場における仮眠室といえば、和室の相部屋であったり、中には2段ベッドがいくつも並べられた合宿所のようなスタイルの仮眠室も珍しくありませんでした。

ある日の深夜、一日の運行を終えた運転士と車掌の様子を覗いてみます。

「今日もお疲れ様でした。明日の始発もよろしくお願いします」

夜の点呼を終え、張り詰めた緊張から少しだけ解放された二人は、点呼場の上階に設けられた仮眠室へと向かいます。この現場の仮眠室は、昔ながらの和室スタイルでした。さほど広くはない畳の部屋に、あらかじめ布団が二つ並んで敷かれており、出勤時間が同じ運転士と車掌が同室で仮眠を取ります。

翌朝の出勤時間が早いため、二人は手早くシャワーを浴びて着替えを済ませると、少しでも長く睡眠時間を確保できるよう、会話もそこそこに布団へと潜り込みました。静まり返った駅の片隅で、彼らの短い夜が過ぎていきます。

虫に刺された苦い記憶と「大部屋」の時代

実は筆者自身も、若い頃に駅の研修で古い仮眠室を利用して苦しんだ記憶があります。そこは長らく使われていなかった予備の仮眠室で、研修中の筆者のために久しぶりに使われたのですが、いざ寝ようと布団に入ると、何かの虫に身体中を刺されてしまったのです。痛いやら痒いやらでとても眠れる状況ではなく、ひたすら朝が来るのを待ちわびた記憶は、今でも鮮明に思い出されます。

当時は、現場の仕事とはこういうものだと我慢する風潮もありましたが、決して褒められた環境ではありませんでした。

時代とともに様変わりした快適な空間

しかし現在では、仮眠室の環境は以前とは様変わりし、劇的な改善が進んでいます。

昔ながらの布団から寝心地の良い快適なベッドが用意されるようになり、プライバシーが守られる完全個室化が主流となってきました。この変化の背景には、社会全体で働き方が見直され、ハードな現場仕事であっても、しっかりと質の高い休憩を取ることも安全対策のために必要であると再認識されたことがあります。

さらに大きな要因として、女性の乗務員や駅員が現場で広く活躍するようになったことが挙げられます。以前のような相部屋や合宿所スタイルでは当然対応しきれず、設備を根本からリニューアルする必要に迫られました。

また、各業界で人手不足が深刻化する中、かつて筆者が経験したような、虫に刺される不衛生な仮眠室しかない環境では、若い世代から就職先として選ばれなくなってしまうという、会社側の切実な危機感も大きく影響しています。

ホテルのような仮眠室で英気を養う

最近では設備投資がさらに進み、鉄道会社の中には有名メーカーの高級寝具やオーダーメイドの枕を用意して、まるでワンランク上のビジネスホテルのような洗練された環境の仮眠室を備えているところもあると話題になりました。冷暖房完備の快適な個室でしっかりと疲れを癒やせる環境は、働く社員のモチベーション向上にもつながっています。

鉄道の安全は、最新のシステムだけでなく、現場で働く人の力によって支えられています。次に早朝の電車に乗る際は、鉄道員たちが進化を遂げた仮眠室でしっかりと休息を取り、私たちの安全を守ってくれているのだと、少しだけ思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


参考:
西武鉄道株式会社 上石神井保線所 仮眠室(コトブキシーティング)
働き方とキャリアパス(東京メトロ)


ライター:福本明文
大学卒業後、鉄道会社に総合職として入社し、同業界に15年以上従事。鉄道部門だけでなく、タクシーやバス、小売りといった関連事業にも幅広く携わる。現在はWebライターとしても、広報を担当した経験を活かし、コラム記事の執筆からSNSへのコンテンツ提供まで多岐にわたって活動中。


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