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「冷却水が少し減るだけ」と出発した結果。猛暑の高速道路でレッカー搬送になった理由

  • 2026.8.3
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

夏休みの帰省や旅行など、車で長距離を移動する機会が増える季節。出発前に愛車の点検をしていても、「冷却水が少し減っているだけなら、補充しておけば大丈夫」と考えてしまう人もいるかもしれません。

しかし、冷却水の減少には、思わぬ故障のサインが隠れていることがあります。以前、私が自動車整備関係の仕事をしていた頃、修理や点検で来店されたお客様の中に、まさにそんな経験をした人がいました。

「少し減っているだけだから、旅行から帰ってきてから修理します」

そう話していた30代男性のTさん。しかし、その数日後、猛暑の高速道路で車が動かなくなってしまったのです。

「旅行から帰ってきてから修理します」と言われた冷却水漏れ

Tさんは、私が自動車整備関係の職場に勤務していた時に、車の点検で来店されたお客様です。30代男性で、普段から車を通勤や休日の外出に使用していました。

ある日、夏休みの旅行を控えていたTさんが、出発前の点検に訪れました。

「来週、家族で遠出するんです。高速道路を使うので、一応見てもらえますか?」

そこで各部を点検したところ、冷却水の量が少し減っていることが分かりました。さらに点検を進めると、ウォーターポンプ周辺や冷却水ホースの接続部から、微量の漏れが見つかったのです。この時点では、冷却水を補充すればしばらく走れる可能性はあったものの、漏れがある以上、長距離走行前に修理しておくのが安全です。

「冷却水が減っている原因を直したほうがいいですね。旅行前に修理しておくことをおすすめします」

私がそう伝えると、Tさんは少し考えたあと、こう答えました。

「そうですよね。でも、旅行まで時間がなくて。今回は冷却水を足して、帰ってきてから修理します」

整備する側としてはオーバーヒートの危険性を伝え、早めの修理を勧めました。ですが、Tさん自身が「今回は出発前に修理する時間が取れないので、旅行後に改めて来店する」と判断したため、その時点では冷却水を補充し、長距離走行中に水温計や警告灯に異常が出た場合は安全な場所にすぐに停車するよう注意点をお伝えしました。

「もし水温が上がったり、警告灯が点灯したりしたら、無理に走らないでください」

私がそう念を押すと、Tさんは一度帰宅したのです。

猛暑の高速道路で冷却能力が限界に

数日後、Tさんは家族とともに夏休みの旅行へ出発しました。出発時には冷却水を補充していたため、「これなら大丈夫だろう」と考えていたそうです。

ところが、その日は気温が非常に高く、高速道路を長時間走行。車内ではエアコンをほぼ全開にしていました。しばらくは問題ありませんでしたが、時間が経つにつれて冷却水の漏れが悪化。少しずつ冷却水が減り、エンジンを冷やすための冷却能力が低下していきました。

さらに高速道路では渋滞にも遭遇。

「最初は普通に走れていたんですが、渋滞に入ってから水温計がいつもより高いことに気づいたんです」

Tさんはそう振り返ります。そしてついに、水温警告灯が点灯。

「これはまずいと思って、すぐに路肩へ寄せました」

冷却水が不足した状態で走り続ければ、エンジン内部の温度は急激に上昇します。いわゆるオーバーヒートです。

この段階で無理に走行を続けると、エンジン内部の部品が熱によって変形したり、潤滑不良によって深刻なダメージを受けたりする可能性があります。Tさんは幸いにも走行を続けず、安全を確保して停車。その後、ロードサービスを利用してレッカー搬送されることになりました。

数万円の修理を先送りした結果、旅行も中止に

最終的にTさんの車は、旅先で修理が必要な状態になりました。旅行は当然ながら中止。予約していた宿泊施設のキャンセルや、帰宅のための交通手段の手配など、車の修理費以外にも負担が発生しました。

「旅行前に修理しておけばよかったです。最初は数万円くらいの修理で済む話だったのに」

Tさんはそう話していました。

冷却水漏れは、漏れている場所や部品によって修理費が異なります。ホースやクランプなど比較的軽微な部品交換で済む場合もあれば、ウォーターポンプやラジエーターなどの交換が必要になるケースもあります。さらに、オーバーヒートによってエンジン本体にまでダメージが及べば、修理費が数十万円規模になることもあります。

つまり、「冷却水を足せば大丈夫」と安易に考えてしまうと、最初に修理しておけば済んだはずのトラブルが、旅行中止やレッカー搬送、交通費などを含む大きな負担につながってしまう可能性があるのです。冷却水が減っている場合、まず大切なのは「なぜ減ったのか」を確認することです。冷却系統は基本的に密閉されているため、目立って減少しているなら、どこかから漏れている可能性があります。単純に補充するだけでは、根本的な解決にはなりません。

特に帰省や旅行などで高速道路を長時間走る予定があるなら、出発前に点検を受けることをおすすめします。もし漏れが見つかった場合は、「これくらいなら大丈夫」と自己判断せず、修理時期について整備工場に相談しましょう。

また、任意保険に付帯しているロードサービスも、遠出の前に確認しておくと安心です。レッカー搬送が無料になる距離や条件は保険会社や契約内容によって異なるため、いざという時に「思っていたより無料で運べる距離が短かった」とならないよう、事前に補償内容を確認しておきましょう。もし旅先で故障すれば、修理費だけでなく、宿泊先のキャンセル料や代替交通手段の費用など、予想外の出費が重なることもあります。

夏の猛暑は車にとっても過酷な環境です。「少し減っているだけ」「水を足したから大丈夫」と考えず、異常の原因を早めに確認すること。旅行や帰省を安心して楽しむためにも、出発前のわずかな点検と修理を惜しまないことが、結果的に最も安く済む対策になるかもしれません。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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