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「エアコンは効くから安心」“シャー”“ゴロゴロ”を甘く見て夏の旅行へ→高速道路でレッカー搬送された「高すぎる代償」

  • 2026.7.30
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

「エアコンはちゃんと冷えているから大丈夫」

そう思っていたのに、真夏の高速道路で突然車が止まってしまう。そんなケースは決して珍しくありません。

実は、エアコンが正常に冷えていても、「シャー」「ゴロゴロ」といった異音は重大な故障の前兆である場合があります。今回は、私が自動車整備士として勤務していた頃に、車を修理で入庫されたお客様、Hさん(40代・男性)の事例をもとに、エアコン異音を放置する危険性について紹介します。

エアコンは冷えていたのに聞こえていた「シャー」という音

私が自動車整備士として勤務していた頃、Hさんが点検で来店されました。

「最近、エアコンを入れると"シャー"って音がするんですよ」

私は詳しく状況を伺いました。

「エアコンはちゃんと冷えますか?」

「はい。冷えは全然問題ありません。OFFにすると音も消えるんですが、冷えているので気にしていませんでした」

点検すると、エアコン作動時だけコンプレッサー付近から異音が発生していました。冷房性能は正常で、風量や吹き出し温度にも異常はありません。しかし、音の出方からはコンプレッサーベアリングやクラッチ部の摩耗が疑われる状態でした。

私はHさんへ説明しました。

「今は冷えていますが、この音は故障のサインかもしれません。早めの修理をおすすめします」

ところがHさんは、

「夏が終わったら修理します」

と言って、その日は帰られました。実は、この「冷えているから大丈夫」という判断が、大きなトラブルにつながることがあります。

真夏の酷使で一気に故障が進行

その後、数週間が経過した真夏の日。Hさんから整備工場へ連絡が入りました。

「高速道路で急に警告灯が点いて、そのあとハンドルが重くなってしまいました。エアコンも止まり、車が動かせません」

現場へ向かうと、車はレッカー搬送されることになっていました。点検すると、原因はエアコンコンプレッサーの焼き付きでした。コンプレッサー内部のベアリングの摩耗が進み、潤滑不足によって高温となり、最終的には内部が完全にロックしてしまっていたのです。

コンプレッサーが回転できなくなると、エンジンの補機ベルトへ一気に大きな負荷がかかります。その結果、ベルトが切断。車種によっては補機ベルトでオルタネーターやウォーターポンプ、パワーステアリングの油圧ポンプも駆動しているため、充電が止まりバッテリー警告灯が点灯します。さらにウォーターポンプも停止する構造では冷却水が循環せず、オーバーヒートを引き起こす危険もあります。

Hさんの車も補機ベルトが切れたことでオルタネーターが停止し、充電できなくなって走行不能となっていました。

「冷えるから安心だと思っていました」

そう肩を落とすHさんの言葉が、とても印象に残っています。

「冷えている」は故障していない証拠ではない

エアコンコンプレッサーは、壊れる直前まで冷房機能を維持しているケースが少なくありません。つまり、「ちゃんと冷える」という事実だけでは、安全とは言い切れないのです。今回のように異音だけが唯一の前兆になっている場合もあります。

特にエアコンをONにした時だけ「シャー」「ゴロゴロ」「ガラガラ」といった音が出る場合は、ベルトだけでなく、コンプレッサー本体やクラッチ、ベアリングの劣化が隠れている可能性があります。また、夏はエアコンの使用時間が長くなるため、コンプレッサーへの負荷も一年で最も大きくなります。春や初夏には問題なく使えていた部品でも、猛暑の連続使用によって一気に摩耗が進み、焼き付きに至ることも珍しくありません。

もし旅行や帰省、高速道路での移動中に故障すれば、レッカー費用や宿泊費、予定変更など修理代以外の出費が発生する可能性もあります。さらに、コンプレッサー交換だけで済まないケースでは、補機ベルトやテンショナーの交換、コンプレッサー内部の金属片が冷媒回路へ回ってしまった場合には配管洗浄やコンデンサー、エキスパンションバルブなど関連部品の交換が必要となり、修理費用が数十万円規模に膨らむこともあります。費用は車種や故障の進行状況によって大きく異なります。

エアコン作動時だけ音が変わることに気付いたら、「まだ冷えるから大丈夫」と自己判断せず、早めに整備工場で点検を受けることが大切です。点検では異音の有無だけでなく、コンプレッサーの作動状態やクラッチの動き、補機ベルトの摩耗、テンショナーの状態まで確認してもらうことで、大きな故障を未然に防げる可能性が高まります。

小さな異音は、車からの大切なSOSかもしれません。快適な夏のドライブを安心して楽しむためにも、「音だけだから」と軽視せず、早めの点検を心掛けてください。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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