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30年前、日本中が"ゲッチュー"と叫んだ夏 80万枚超のヒットとなった5人体制最初のシングル

  • 2026.7.24
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

「Get you!」

テレビの前で、教室で、そしてカラオケボックスで。サビのその一瞬だけマイクを取り合った、あの騒がしくも幸せな記憶がある人は多いはずだ。

SMAP『青いイナズマ』(作詞:森浩美/作曲:林田健司)ーー1996年7月15日発売

22枚目のシングルにあたるこの曲は、たった一言の叫びで日本中をつかまえた。そしてじつはこの夏、SMAPはグループ史上最大の岐路に立っていた。

別れの直後に全力疾走という返事

1996年5月、森且行がSMAPを離れた。デビューからともに走ってきた6人が、5人になる。ファンにとっては胸のざわつく、忘れられない初夏だった。当時のSMAPは、歌だけの存在ではなくなりつつあった。テレビの真ん中で、アイドルの新しい形を自分たちの手で作っている真っ最中。その途中での別れだった。だからこそ、次の一枚が背負う重さは格別だった。

『青いイナズマ』は、5人体制になって最初のシングルである。だからこの一枚がどんな顔をして届くのか、当時は誰もが気にしていた。しんみりとしたバラードで区切りをつけるのか。決意表明めいた歌で仕切り直すのか。

5人が選んだのは、そのどちらでもなかった。出だしから一気に駆け出して、サビで「Get you」と叫ぶ、まぶしいくらいの疾走感だ。大切なメンバーを見送った直後に、うつむくどころか全力で走ってみせる。この選択がまず格好よかった。深刻な顔をしないことが、いちばん強い返事になることもある。5人はそれを、言葉ではなく音で証明した。

思えばタイトルからして、そういう曲だ。イナズマは、立ち止まらない。暗い空を一瞬で走り抜けて、見ている者の目に焼きつく。あの夏の5人に、これほど似合う名前もなかった。

たった一言を日本中が取り合うまで

この曲を毎週届け続けたのが、フジテレビ系『SMAP×SMAP』だ。あの看板番組である。そのテーマソングとして『青いイナズマ』が流れた。番組が始まるたび、威勢のいい歌が各家庭へ流れ込む。曲を覚えようと思わなくても、体が先に覚えてしまう環境が、毎週律儀に用意されていたわけだ。

そして覚えた体が向かう先は、カラオケボックスである。90年代半ばといえば、学校帰りも会社帰りも、とりあえずカラオケという時代。マイクは2本、部屋は満員。新しいヒット曲は、発売のたびにその狭い部屋で試験にかけられていた。

この曲のサビには、不思議な引力がある。「ゲッチュー」の一言が来る瞬間だけ、その場の全員が主役になりたがるのだ。誰かがマイクを握っていても関係ない。指をさし、身を乗り出し、声を張る。歌のいちばんおいしいところが、みんなで割り込むために設計されているように響く。この曲だけは、その部屋の全員のものになるのだ。

サビのたった一言を、日本中が自分の持ち歌にしてしまった。ここまでいくと、もうヒット曲という言葉では足りない。遊び方ごと共有された、社会現象だった。

作曲者自身が先に歌っていた借り物

音の作り手にも触れたい。作詞は森浩美、作曲は林田健司、編曲はCHOKKAKU。ここでひとつ、いまだに驚く人が多い事実がある。この曲、作曲者の林田健司が1994年4月、自身の4枚目のシングルとして発表していた楽曲なのだ。SMAP版は、そこからキーを変えて歌っている。

この2つぶんの調整が、じつは効いている。原曲の熱はそのままに、サビの頂点をぐっと手の届く高さへ引き寄せる。その気配りが、のちの大合唱を用意したように映る。

林田は『$10』などSMAPの印象的な楽曲を手掛けてきた。作詞の森浩美も『ダイナマイト』や『オリジナル スマイル』といった節目の曲を任され続けた常連であり、編曲のCHOKKAKUは次作『SHAKE』や大ヒット曲『夜空ノムコウ』の編曲を手がけていく。つまりこの一枚には、SMAPサウンドの背骨を作った面々が揃っている。

曲そのものの作りも、カラオケの定番になるべくしてなっている。メロディはサビへ向かって段階を踏んで高まっていき、頂点にあのかけ声が来る。難しい節回しで突き放さず、誰が歌っても気持ちよく声が出る高さに、聴かせどころが待っている。聴くだけで体が動き、歌えばもっと楽しい。この人なつっこさは、書いた本人が一度歌い込んだ曲ならではだと感じる。

それにしても、と思う。詞が描いているのは、恋人の心変わりを疑う男の嫉妬だ。アイドルが歌うにはずいぶん生々しい題材である。ところが、駆け抜けていくメロディと5人の声が、その湿り気をからりと乾かしていく。歌詞だけ読めば夜の感情なのに、聴こえてくるのは真夏の昼の景色。この不思議な配合こそ、この曲の癖になる味だ。

数字ではなく失速しなかった夏の手柄

『青いイナズマ』はその後も長く歌い継がれ、聴かれ続けた。街でも番組でもカラオケでも、鮮度が落ちることなく口ずさまれ続け、売上は累計80万枚を超える。

ただ、この曲の本当の手柄は数字ではない。5人になったSMAPが、ここでまったく失速しなかったという事実だ。不安をよそに、5人は歌でもテレビでも走り続けた。この夏の疾走を助走にして、SMAPは国民的グループへと駆け上がっていく。振り返れば『青いイナズマ』は、その最初の号令だった。

だからこの曲は、思い出の棚に収まってくれない。カラオケで誰かがこの曲を入れれば、イントロで体が前のめりになり、サビでは今夜も「ゲッチュー」の取り合いが始まる。発売から30年になろうという曲が、部屋をいちばん沸かせてしまう。

あの夏、5人が放った青い稲妻は、まだ放電を続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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