1. トップ
  2. エンタメ
  3. 実は野球名門校出身!キャッチャーで甲子園を目指していた、今はワイルド路線のイケメン俳優とは

実は野球名門校出身!キャッチャーで甲子園を目指していた、今はワイルド路線のイケメン俳優とは

  • 2026.7.28
undefined
2025年10月、「洋服の青山/スーツスクエア」CM発表会に出席した水上恒司(C)SANKEI

甲子園という舞台は、球児にとって残酷なほど明快だ。届いたか、届かなかったか。その二つしかない。水上恒司は、届かなかった側にいた。福岡の家を離れて長崎の強豪・創成館高校へ推薦で進み、特待生として捕手を守り、副主将を務めた。それでも最後の夏は地方大会のベスト8で終わっている。

いまこの人は、第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受けた俳優として、主演作の公開が続く場所に立っている。届かなかった側の人間が、別の舞台で主役を張る。この落差をたまたまの転身と読むと、何も見えてこない。届かなかった夏を敗北のまま抱え込まず、勝負する場所を丸ごと入れ替えた。水上恒司のキャリアは、その切り替えの速さで一本につながっている。

負けた夏を引きずらない

野球を始めたのは小学2年のとき。中学時代には芸能事務所のスカウトが声をかけてきたが、野球を優先して断り続けた。プロを目指すなら甲子園は通るべき場所で、そのために福岡の家を出て、長崎の常連校へ進む。

ところが高校で渡されたのは背番号12だった。正捕手の一つ後ろである。特待生として招かれた選手が、二番手のまま副主将を任された。最後の夏は準々決勝で敗れ、ここで野球部を離れる。二番手で副主将という立ち位置は、自分が打つより、チームが回るほうへ早くから振られていたということだ。

捕手はもともと、味方の投手を含めた全員を見ながら試合を組み立てる位置にある。中心の華やかさではなく、場を成立させる側の視野。それを高校の3年間で身体に入れた人が、のちに画面の中で相手の芝居を受け止める仕事に就く。そして引退の直後、演劇部に誘われた。部は九州ブロック大会最優秀賞を受賞した。

夏に野球を終えた人間が、その年のうちに別の舞台へ上がっているのだ。失ったものを数える時間より、次の場所へ移る速さのほうが先に来る。この身のこなしが、適応力の芽になる。

支える側から物語の中心を任される

2018年、TBS系ドラマ『中学聖日記』。約500人が集まったオーディションを勝ち抜き、教師と生徒の関係を軸にした物語の、その生徒役で俳優デビューを果たす。約500人から1人という数字は、通過した本人の努力の話に見えて、選ぶ側の判断の話でもある。演技経験の量で決めるなら、経験者を採ればいい。それでも作品の重心に近い役を渡したのは、画面に置いたときにその人がまとう温度が、ほかの誰とも違ったからだろう。

長く二番手で場を支えてきた側が、作品の中心を任される。立ち位置が反転した最初の瞬間である。2022年、所属事務所との専属契約が終了し、以降は本名の水上恒司として活動を続けている。名義が変われば、それまで積み上げた名前の資産の一部は引き継がれない。看板を外して一から立て直すのに近い。それでも出演の流れは途切れなかった。用意された場所で続けるのではなく、俳優という仕事そのものを自分の側から取り直している。この道は、ここから本人が敷いたものになる。

澄んだ青年像の次に影を背負う

undefined
2024年撮影、映画「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」の大ヒット御礼舞台あいさつに登壇した水上恒司(C)SANKEI

2023年公開の映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で特攻隊員を演じ、第47回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受けた。命の期限を区切られた青年である。濁りのない目をした役で、水上は主演男優として高く評価された。問題はその次にどこへ行くかだ。澄んだ青年像は一度当たると、同じ方向の依頼を呼び込む。ところがこの人に渡されたのは、まるで温度の違う男たちだった。

2025年の映画『九龍ジェネリックロマンス』では吉岡里帆とともに主演を務め、誰にも明かせない過去を持つ不動産会社の先輩社員を演じている。観客に見せない情報を抱えたまま、平然と画面に立ち続ける役だ。同じ年の12月に公開された映画『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』では、不良たちが街を守っている高校へ頂点を取りに乗り込む転校生として主演した。

純度で評価された俳優に、影を隠した男と、拳で押し通す男を続けて任せる。どちらも、まっとうな道の外側に片足を置いた人物だ。そういう役を預けるのは、澄んだ顔の下にもう一つの質量を見た者が現場にいるということである。この判断が、賞を終点にしなかった。相手を受け止める視野で育った捕手が、今度は相手を黙らせる側で呼ばれている。役の幅が広がるとは、こういう順番で起きるのだ。

勝負する場所を移した男

2026年5月には映画『TOKYO BURST-犯罪都市-』で主演し、新宿の署に配属された新人刑事を演じた。10月には映画『本当にあった話(の話)』の公開が控えている。犯罪の渦中に放り込まれる役と、身近な話をすくい上げる役。年内に並ぶ2本の主演作の温度差が、いまの守備範囲をそのまま示している。

2月には、結婚したこと、そして新たな生命を授かったことが所属事務所から公式に報告された。仕事の場でも、その外でも、局面が変わっている。甲子園には届かなかった。その事実は動かない。ただ、この人はその場所にとどまらず、戦う舞台ごと持ち替えて主役の座まで歩いてきた。届かなかった夏は終点ではなく、通過点だったのだ。


※記事は執筆時点の情報です

の記事をもっとみる

注目コンテンツ