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普段の“ひまわりスマイル”が狂気に変わる瞬間。「クズ男」と呼ばれた令和のバラエティ担当アイドル

  • 2026.7.21
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※ChatGPTにて作成(イメージ)

自分の中にない感情を、かみ砕いていく。2022年、生きることへの希望を見失った男をテレビドラマで演じた重岡大毅は、役作りのなかにそういう作業があったと語り、その人物を演じる難しさを口にしている。

2020年を境に、重岡が演じる役には、選択を誤る男、生活を崩す男、倫理の線を越える男が並ぶようになった。その男たちについて本人が残している言葉をたどると、驚きの言葉と理解の言葉が同じ役へ同時に向けられる、二重の距離の取り方が見えてくる。

並びの途中に折り返しがある

重岡は1992年、兵庫県に生まれた。2006年に事務所へ入所し、関西ジャニーズJr.、Hey! Say! 7WESTなどを経て、2014年4月23日にジャニーズWESTの一員として『ええじゃないか』でCDデビューしている。グループは2023年10月にWEST.へ改名。俳優の仕事はアイドル活動と並行して積み重ねられてきた。

また俳優業以外でも活躍をみせ、『櫻井・有吉THE夜会』の人気企画「地獄坂ママチャリ」では、電動アシストのないママチャリで強烈な坂道を一度も足をつかずに上り切れるかに挑んでおり、こうしたバラエティの仕事も並行のなかにある。

初期の出演作は『DRAMADA-J いつかの友情部、夏。』(2009年)、『ごめんね青春!』(2014年)など、仲間や恋する相手を受け止める側、正義感や包容力を備えた人物を演じることが多かった。

その流れが変わり始めたことを印象づけたのが、2020年の『知らなくていいコト』である。重岡が演じた週刊誌記者・野中春樹は、主人公ケイトの婚約者でありながら、彼女の出自を知ると婚約を破棄し、その情報を他誌へ漏らす。放送当時は「クズ男」「闇堕ち」と評され、重岡の演技も「怪演」と注目された。しかし、野中を突き動かしていたのは劣等感や嫉妬、疎外感であり、極端な悪人ではなく、人間の弱さが積み重なった人物として描かれていた。

この転換を本人が意図したかはわからない。ただ、2020年以降の重岡のフィルモグラフィーには、選択を誤る男、生活を崩す男、倫理の線を越える男が目立つようになる。画面の上で演じる人物の重心は、確かにこの時期を境に変わり始めている。

劣等感も初恋も、線を越える理由になる

2022年のドラマ『雪女と蟹を食う』で演じた北は、痴漢の冤罪によって仕事も信用も人間関係も失い、生きる希望を見失った男だ。旅費を得るため住居へ侵入し、北海道への旅へ出る。その逸脱の出発点にあったのは、悪意ではなく喪失だった。

そして2026年9月11日公開予定の映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』では、妹を守るために生成AIへ完全犯罪の方法を尋ねる兄・初海航を演じる。犯罪計画へ踏み出す人物でありながら、製作陣は航を「人情味のある犯罪者」と表現している。

並べてみると、彼らを「悪役」や「サイコパス」といった言葉では括れない理由が見えてくる。春樹を動かしたのは劣等感と嫉妬、北を動かしたのは喪失、航を動かしたのは妹への思いだった。行動はそれぞれ違っていても、その出発点にあるのは、誰もが抱えうる感情である。

劣等感も、大切なものを失う経験も、家族への愛情も、それ自体は特別なものではない。不穏なのは感情ではなく、その感情がある瞬間、一線を越える選択へと人を導いてしまうことだ。2020年以降の重岡大毅が繰り返し演じているのは、まさにその境界に立つ人物たちだった。

自分にない感情の前で

北を演じるにあたって、重岡は、自分の中にはない感情を一つひとつ噛み砕きながら役へ近づいていく作業が必要だったと振り返っている。演じるうえで向き合ったのは、極端な行動ではなく、その行動へ至るまでの心の状態だった。

2026年9月11日公開予定の映画『5秒で完全犯罪を生成する方法』でも、重岡が語っているのは決断そのものではない。生成AIが示す答えと、それを受け止める初海航自身の考え。そのあいだにある揺らぎを積み重ねながら、人物が犯罪へ踏み出す過程をどう成立させるかが、この役の難しさだったという。2026年7月のプチョン国際ファンタスティック映画祭でも、近藤亮太監督とともに、航の動機と決断について語っている。

二つの作品で扱う人物像は大きく異なる。それでも、本人の言葉が向かう先はよく似ている。重岡が掘り下げようとしているのは、「何をした人物か」ではなく、「なぜその選択に至ったのか」という部分だ。感情を理解することと、思考の積み重ねを理解すること。一見すると別の作業のようでいて、どちらも人物の内側から行動を組み立てようとする姿勢につながっている。

だからこそ、2020年以降に重岡が演じてきた人物たちは、単純な悪人にも狂気の人物にも見えない。理解しがたい行動であっても、その手前にある感情や思考には現実の手触りが残されている。その境界を埋めることが、この時期の重岡大毅の演技を貫く一つの特徴になっている。

呼び名の向こう側

2020年以降に重岡が演じてきた人物には、婚約者を裏切る男、住居へ侵入する男、犯罪計画へ踏み出す男が並ぶ。しかし、その誰もが最初から悪意だけで動いているわけではない。劣等感や嫉妬、喪失、家族への思いといった、ごくありふれた感情を抱え、その先で一線を越えていく。

だからこそ、役に与えられる「クズ男」「犯罪者」といった呼び名だけでは、この人物たちは説明しきれない。重岡大毅が演じているのは、善人でも悪人でもなく、誰もが理解できる感情と、理解しがたい行動とのあいだで揺れ動く人物たちだ。

その人物像が強く印象に残る理由は、重岡自身とのギャップにあるのかもしれない。明るく飾らない人柄で知られる一方、俳優として向き合うのは、人の弱さや迷い、理屈だけでは割り切れない感情である。

ただ、その落差だけでは説明はつかない。重岡は、役を「悪人」として演じるのではなく、その人物がそうならざるを得なかった過程を積み重ねていく。だから画面に現れるのは、理解できない人間ではなく、理解できる感情を抱えたまま、理解しがたい選択をしてしまう人間になる。その積み重ねがあるからこそ、重岡大毅が演じる人物は、最後まで一つの呼び名では片付かない。


※記事は執筆時点の情報です

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