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肩を見れば一発で分かる…リハビリ医が断言「ヨボヨボ老人になる人」と「死ぬまでピンピンな人」の決定的な違い

  • 2026.6.23

自分自身の老いには、どうすれば気づけるのか。リハビリテーション科医の安保雅博さんは「肩を見れば老いの始まりや進行度がすぐにわかる。腕が上がりにくい、天井を見上げられないといった4つのサインを覚えてほしい」という――。(第1回)

※本稿は、安保雅博『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)の一部を再編集したものです。

最初の老化が「肩」に表れる理由

突然ですが、ひとつ質問です。20代の頃と70代では、筋肉の量はどれくらい減っていると思いますか? 厚生労働省の健康情報サイト「生活習慣病などの情報(旧e-ヘルスネット)」によると、全身の骨格筋量は、20代を100とした場合、70代では70まで低下します。つまり、約3割の筋肉が失われているのです。

筋肉は、年齢とともにまんべんなく減るわけではありません。特に減りやすいのは、「歩く」「立つ」「姿勢を保つ」ための筋肉です。これは、特別な病気がある人の話ではありません。ごく普通に年を重ねただけで誰にでも起こる変化です。

厄介なのは、こうした変化のほとんどに「自覚症状がない」ということです。

「大きな痛みはない」
「ゆっくりでも歩けている」
「日常生活も何とかこなせている」

そのため、多くの人が「まだ大丈夫」「年のわりには元気」などと思いながら、気づかないうちに老化を進めてしまいます。

そして、その“最初の変化”が表れやすい場所――それが肩なのです。

【図表1】「歩く」「立つ」「姿勢を保つ」ための筋肉は減りやすい
『歩幅を見れば、寿命がわかる』(アスコム)より
頭の重さは「米1袋分」

肩から始まる老いは、次のような流れで全身へ波及していきます。

①体全体の筋力(特に背中の筋肉)が衰え、肩の関節可動域が狭くなってくる
②肩が前に倒れ、首~頭が前に出る
③背中が丸まり、重心が後ろに傾く
④骨盤が後ろに傾き、ひざや股関節に負担がかかる
⑤重心バランスが崩れて不安定になり、転びやすくなる

【図表2】加齢に伴う上体起こしの変化
『歩幅を見れば、寿命がわかる』(アスコム)より

「肩が少し前に出るくらいで、そんなに影響があるの?」と思われるかもしれません。しかし転倒の多くは、こうした小さな姿勢の崩れの積み重ねによって起こります。

【図表3】「筋力がある状態」と「筋力が衰えた状態」
『歩幅を見れば、寿命がわかる』(アスコム)より

なぜ老いは、「肩が前に倒れ、首~頭が前に出る」という形から始まるのでしょうか。理由はとても単純で、「人の頭はとても重い」からです。頭の重さは、体重の約8%。体重60kgの人なら、約5kgに相当します。5kgというと、よく売られているお米の袋と同じ重さです。

それだけ重たいものを支えているのですから、体にかかる負荷は相当に大きいということが想像できるのではないでしょうか。頭の重さは年を取ってもほとんど変わりません。しかし、重たい頭を支える背中の筋肉は、年齢と共にどんどん弱っていきます。その結果、背筋はいきんは頭を支えきれなくなり、首~頭が前に出てしまうのです。

「肩の老化が始まっている」4つのサイン

さらに、背筋には背中をシャキッと伸ばし、よい姿勢を保つという役割もあります。背骨そのものに大きな問題がなければ、背中が丸くなる原因の多くは、筋力の低下です。

背筋が弱る→体をまっすぐ保てなくなる→腕の重みが前方にかかる→肩も前に倒れていく。こうして、肩から始まった老いが、全身へ広がっていきます。

この状態を放っておくと、「肩が前に倒れた姿勢」「首~頭が前に出た姿勢」が体に記憶されてしまいます。その結果、肩・首・背中まわりの筋肉や腱けん、靭帯じんたいが硬くなり、関節の動く範囲(可動域)が狭まっていくのです。

肩の老化度は、次のような症状があるかどうかでわかります。

□ 腕が上がりにくい
□ 肩や首、背中に張りや痛み、違和感がある
□ 後ろを振り向きにくい
□ 首を後ろに倒して天井(真上)を見上げられない

特別な病気などがない場合、このような症状は、肩から始まる姿勢の崩れによるものです。当てはまるものがあれば、すでに肩の老化が始まっているサインです。そして、この状態こそが、転倒しやすい体への入り口なのです。

医者と患者
※写真はイメージです
「ひざの曲がり」は無意識の帳尻合わせ

ここまで、老いが肩から始まり、全身のバランスを崩し、転倒へつながっていく流れをお話ししてきました。では、これほど明確な変化が起きているにもかかわらず、なぜ多くの人は「自分の老い」に気づけないのでしょうか。

肩が前に倒れ、首~頭が前に出て、背中が丸くなる。この姿勢は、一見すると「ラクそう」に見えますが、実はとても不安定です。姿勢よく立っている状態と比べると、重心は前方に偏り、そのままではバランスを保ちにくくなります。

そこで人は、無意識のうちに帳尻を合わせようとします。重心を後ろへかけ、倒れないようにするのです。するとどうなるか……。

○骨盤が後ろに倒れる
○背中がいっそう丸まる
○股関節に余計な負担がかかる
○バランスを取るために、ひざまで曲がってくる

こうして、体全体で「崩れた姿勢」を支えるようになります。このバランス調整は意識していない状態で行われるので、自分が「そうなっていること」に気がつくことができないのです。

「昔の自分」を基準にしてはいけない

この2人のイラストのうち、どちらが若くイキイキとして見えるでしょうか。

【図表4】どちらがイキイキとしてみえる?
『歩幅を見れば、寿命がわかる』(アスコム)より

当然、Aですよね。Bのような姿勢で、小さな歩幅のちょこちょこ歩きをしていると、「老けて見える」「疲れていそう」という印象になります。

ところが、当の本人は気づいていなかったり、認めようとしなかったりします。そのため、周囲から老いを指摘されても、「私はまだ大丈夫」「年寄り扱いしないでほしい」などと言ってしまうわけです。電車などで若者から席を譲られて「自分は老人じゃない!」などと怒りの感情が湧いてしまう人は、周りから見えている姿と自己認識とのズレを自覚したほうがよいかもしれません。

なぜ、人はなかなか自分の老いを認められないのでしょうか。その大きな理由のひとつが、過去の栄光です。

「学生時代は運動部で、ずっと体を動かしてきた」
「若い頃は仕事で走り回っていて、体力には自信があった」
「趣味のスポーツでは、仲間内で一番だった」

私のところに来られる患者さんの中にも、このようにおっしゃる方がたくさんいます。こうした若い頃、元気に動けていた頃の記憶が心の中に強く残っていると、無意識のうちに“今の自分”ではなく、“昔の自分”を基準に体を評価してしまいます。

「そんな自分が、老いているはずがない」。そう思いたくなるのは、自然なことかもしれません。

「以前できたことができない」が分かれ目

では、どうやって自分の老いに気がつけばいいのか。一番わかりやすいのは、「以前できていたことが、できなくなった」ときです。

書影
安保雅博『歩幅を見れば、寿命がわかる 「死ぬまで歩ける体」のつくり方』(アスコム)

○階段をスイスイ上れなくなった
○少し歩いただけで息切れがする
○腕が思うように上がらない

これらは、体が出しているはっきりとした老化のサインです。

また、周囲からの「背中が曲がっているよ」などという指摘を素直に受け止め、日頃から全身鏡などで自分の立ち姿や歩き姿をチェックしておくことでも、自分の状態を知ることは可能でしょう。

人生100年時代と言われる今、「老後の時間」はどんどん長くなっています。その20年、30年を元気に自分らしく過ごすためには、まず老いに気づいて今の自分を認め、衰えた体と上手に付き合っていく必要があるのです。

(参考文献)
・安保雅博、中山恭秀『寝たきり老後がイヤなら 毎日とにかく歩きなさい!』(すばる舎)
・安保雅博、中山恭秀『何歳からでも 丸まった背中が2ヵ月で伸びる!』(すばる舎)
・安保雅博、中山恭秀『家でも外でも転ばない体を2ヵ月でつくる!』(すばる舎)
・スポーツ庁「令和6年度体力・運動能力調査」

安保 雅博(あぼ・まさひろ)
リハビリテーション科医/博士(医学)
1990年東京慈恵会医科大学卒業。1998年?2000年までスウェーデンのカロリンスカ研究所に留学。2007年よりリハビリテーション医学講座主任教授。2016年、同病院副院長に就任。現在、東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科診療部長、リハビリテーション医学講座主任教授。延べ15万人以上の患者を診療してきたリハビリテーション治療のパイオニア。著書に中山恭秀氏との共著『何歳からでも 丸まった背中が2ヵ月で伸びる!』『家でも外でも転ばない体を2ヵ月でつくる!』『首・肩・背骨の「可動域」を5度広げるだけで体がラクに健康になる!』(すばる舎)など多数。

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