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砂糖ゼロの食習慣が「逆効果になる」可能性を発見

  • 2026.6.22
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

砂糖の取りすぎが体に悪いことは、よく知られています。

実際、添加糖の摂りすぎは肥満、2型糖尿病、心血管疾患などと関連しており、砂糖入り飲料や菓子類を減らすことは健康的な選択と考えられています。

では、砂糖を完全にゼロにすれば、体はもっと健康になるのでしょうか。

フィンランド・ヘルシンキ大学(University of Helsinki)らの研究チームは、マウスを対象に、食事からスクロース(一般的な砂糖)を完全に取り除いた場合、健康にどのような影響が出るかを実験。

その結果、砂糖ゼロの低脂肪食を与えられたマウスでは、体重が大きく増えたわけではないにもかかわらず、血糖調節の悪化、インスリン感受性の低下、腸と肝臓の炎症などが確認されたのです。

研究成果は2026年5月15日付で学術誌『Frontiers in Immunology』に受理されています。

目次

  • 砂糖を抜いたマウスで血糖調節が乱れた
  • 砂糖ゼロで「腸内細菌の乱れ」が起きる?

砂糖を抜いたマウスで血糖調節が乱れた

研究チームは、体重の近い健康なマウス12匹を2つのグループに分けました。

一方にはスクロースを含む低脂肪食を与え、もう一方にはスクロースを一切含まない低脂肪食を与えました。

実験期間は16週間です。

両グループには同程度のカロリー量が与えられており、「食べた量が違ったから結果が変わった」という可能性をできるだけ避ける設計になっています。

研究者たちは、体重や肝臓重量だけでなく、血糖の処理能力、インスリンへの反応、代謝に関わるホルモン、腸内細菌の構成、炎症の指標などを詳しく調べました。

すると意外なことに、砂糖ゼロの低脂肪食を食べていたマウスでは、体重や肝臓重量に大きな差がないにもかかわらず、代謝の健康状態が悪化していたのです。

具体的には、耐糖能の低下とインスリン感受性の低下が見られました。

耐糖能とは、体が血液中の糖をどれだけうまく処理できるかを示す能力です。

また、インスリン感受性が低下すると、血糖を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなります。

これらは、2型糖尿病のリスクとも関係する重要な変化です。

さらに、代謝や食欲調節に関わるホルモンにも広い変化が確認されました。

つまり今回の研究では、砂糖を完全に抜いたマウスが太ったから不健康になったのではなく、体重がほぼ変わらないまま、血糖調節やホルモン環境が乱れていたのです。

では、この変化は体のどこから始まっていたのでしょうか。

砂糖ゼロで「腸内細菌の乱れ」が起きる?

チームが注目したのが、腸内マイクロバイオームです。

腸内マイクロバイオームとは、私たちの腸内にすむ膨大な細菌や微生物の集まりを指します。

これらの微生物は、食べ物の分解だけでなく、免疫、炎症、血糖調節にも関わっていると考えられています。

解析の結果、砂糖ゼロの低脂肪食を食べたマウスでは、腸内細菌のバランスが大きく変化していました。

特に、腸の健康を支え、炎症の調節にも関わるとされる有益な細菌が減っていました。

一方で、炎症やストレス状態と関連する細菌は増加していました。

この腸内細菌の変化に伴い、砂糖ゼロ群のマウスでは結腸に炎症の兆候が確認されました。

腸の組織構造が乱れ、粘液を分泌する杯細胞が減り、免疫細胞の浸潤や炎症関連分子の増加も見られました。

さらに影響は腸だけにとどまりませんでした。

砂糖ゼロ群のマウスでは、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝の兆候や、肝臓の炎症も確認されました。

この結果から研究者たちは、低脂肪食からスクロースを完全に取り除くことが、腸内細菌叢を乱し、代謝の恒常性を損ない、腸や肝臓の炎症を促進する可能性があると考えています。

ただし、この研究を「砂糖は健康に良い」と読むのは誤りです。

過剰な添加糖の摂取が健康に悪いことは、これまで多くの研究で示されています。

今回のポイントは、「砂糖を減らすこと」と「特定の食事条件でスクロースを完全にゼロにすること」は同じではない、という点にあります。

また、この研究はマウスを対象とした小規模な実験であり、各群は6匹ずつです。

そのため、人間でも同じことが起こるかどうかは、今後の研究で確かめる必要があります。

それでも今回の結果は、食事の健康効果を単純に「悪い成分を完全に抜けばよい」と考える危うさを示しています。

栄養は、ひとつの成分だけで決まるものではありません。

砂糖、脂質、食物繊維、タンパク質、腸内細菌、免疫反応が複雑に関わり合いながら、体の状態を形づくっているのです。

健康のために砂糖を控えることは大切です。

しかし、「今日から砂糖は一切摂らない」とストイックになりすぎず、多少は自分に甘くしてもいいのかもしれません。

参考文献

Sugar-Free Diets May Have a Hidden Side Effect, Study in Mice Suggests
https://www.sciencealert.com/sugar-free-diets-may-have-a-hidden-side-effect-study-in-mice-suggests

How eliminating sugar may alter the gut microbiome: mouse study
https://www.medicalnewstoday.com/articles/how-eliminating-sugar-may-alter-the-gut-microbiome-mouse-study

元論文

Sucrose-Free Low-Fat Diet Induces Metabolic Dysfunction through Gut Dysbiosis and Colonic Inflammation in Mice
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2026.1813722/abstract

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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