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「枝豆がのどに…」2歳の命を救うには150キロの距離が…北海道で見た小児救急の現実

  • 2026.6.14

「もしも地方で子どもが突然、重篤な状態になったら―」

親なら誰もが抱くこの不安が、広大な北海道の医療現場で現実の課題となっています。

深刻化する医師不足の中、道内すべての地域に高度な小児医療資源を網羅することはもはや不可能です。

喉に異物を詰まらせた2歳の男の子や、火災で気道にやけどを負った幼児を救う緊迫の現場に密着。
命の格差をなくすため、奔走する医師たちの現場を取材しました。

連載「じぶんごとニュース」

喉つまりで150キロ先から搬送された2歳

この日、札幌の病院に、150キロ以上離れた北海道南部から患者が運ばれてきました。
患者は2歳の男の子です。

状態をみる手稲渓仁会病院小児科・小児集中治療科の荻原重俊医師が「ガッツリ詰まってますね」とつぶやきます。

Sitakke

食事中、男の子が息を吸い込んだ瞬間に、枝豆が右側の気管支につまってしまったのです。

左側の肺と右側のわずかな隙間から呼吸はできている状態ですが、もし何らかの拍子に枝豆の位置が変われば、気管全体を塞いでしまい窒息してしまう可能性があるといいます。

枝豆を「バルーン」と引きずり出す

Sitakke

まずは、ファイバースコープ=気管支鏡で詰まっている枝豆の状況を確認します。
ファイバースコープは直径3ミリ弱で、子どもの狭い気管や喉などを傷つけることなく観察することができます。
奥へと進めていくと、枝豆が見えました。

次に準備したのはバルーンカテーテルです。

空気を入れると、先端についている風船が膨らみます。
バルーンを枝豆より奥で膨らませ、そのまま一緒に引きずりだそうという仕組みです。

Sitakke

しかし、表面がツルツルした枝豆は滑りやすく上手く引き出すことができません。

荻原先生は「1回バスケットカテーテルに変えます」というと先端部分がバスケット状になっているカテーテルを新しく用意しました。再び挑戦すると…

Sitakke

バスケット状のワイヤーが枝豆をつかみました。よかった…!

しかし、なぜわざわざ道南から患者が運ばれてきたのでしょうか。

子どもも医師も偏在する今だから

Sitakke

「小児用の細いファイバースコープを持っている病院がそもそも少ない。大人用のは大きい病院はどこでもあると思いますが」と荻原先生が教えてくれました。

重症の子どもなど地域で対応が難しい患者を道内各地の病院から受け入れているのが、札幌の手稲渓仁会病院です。

通常各都府県に1つある3次医療圏。広大な北海道には6つあります。

「それぞれの医療圏に住んでいる子どもの数は今非常に減っている」と話すのは手稲渓仁会病院小児科・こども救命センターの和田宗一郎副センター長です。

「患者のためにいろんなサイズの機材を用意したり、対応できるスタッフを常時確保しておくのは医療経済上効率が悪い」

医師も都市部に偏在していて、札幌以外の小児科医が重症の子どもを診療する機会は年間で数えるほどだといいます。

「患者が多く集まれば集まるほど、その施設の医療レベルが上がっていく。札幌に一極集中させて、コストを下げ医療のレベルを上げていこうと」

その実現のため、手稲渓仁会病院では8年前、医師と看護師の搬送チームをつくりました。

やけどでのどが黒く…2歳未満の男の子

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2025年12月、新たな搬送依頼が舞い込みました。患者は、2歳に満たない男の子です。

「この中に黒っぽくついているのが全部、煤(すす)です」

男の子は、自宅が火事になり、熱い煙を吸い込んだことで気道にやけどをした。

武知峻輔医師が状況を説明します。

「これが挿管チューブ。ここの奥に声帯などがあるが、やけどで腫れて奥が全く見えない」

チームが函館へ…「迎え搬送」とは

Sitakke

この日、搬送チームがヘリで函館市に向かいました。地域で不足する小児科医の不在時間をできる限り少なくする「迎え搬送」と呼ばれる手法だ。

こども救命センターの和田宗一郎副センター長は「気道を観察し挿管チューブの位置の確認をして、よければそのままの長さで固定する」と治療を進めます。

通常、気道の腫れがひくのは3~4週間ほど。
長期の専門的な呼吸管理が必要なため、搬送依頼となったのです。

「チューブの位置はこれでいく。搬送だったらこれがちょうどいいと思う」

揺れるヘリの機内で万が一チューブが抜けてしまえば、腫れている気道に再び管を通すことは難しく、窒息してしまう恐れもあります。

札幌でスムーズに治療が開始できるよう、患者の様子や治療歴を引き継ぎます。

搬送中の患者への影響を少しでも少なくするため万全の準備を重ねました。
函館市を離陸するころには、日が傾き始めていました。

Sitakke

ですが、陸路なら4時間余りかかるところをヘリは40分で搬送することができます。

患者の男の子は、札幌で呼吸管理が続けられ、その後元気に退院していったそうです。

2025年度には、ほかの病院から50人近くの重症患者を受け入れました。
こうした搬送に取り組み続ける思いを和田先生に聞いてみると…

「誰も取りこぼさない。北海道内のどこの地域で暮らしている患者も、良い医療を受けてほしい、それだけです」

地方にもメリットが 命の格差をなくすために

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広い道内、どこで暮らしていても安心して暮らせるためには、やっぱり医療のネットワークは欠かせません。
高度な小児のための医療資源を全道網羅するのは、もう無理だという現実もあります。

逆転の発想で「一極集中」させて、全北海道も網羅できる病院が札幌にあること。
そして、地方の医師にとっても、重篤な子どもが運ばれてきたときに、手稲渓仁会病院のような存在があると、連携ができて負担が減るというメリットもあります。

高度な小児救急の症例などの情報が、地方の医療現場にフィードバックできるメリットもあります。

広い北海道、命の格差をなくすために現場の医師たちは奮闘しています。

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2026年5月20日)の情報に基づきます。

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