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圧倒的なエネルギーで自身の世界を拓く、3人の料理人に注目[門上武司さん今月のおすすめ]

  • 2026.6.14
撮影=福森クニヒロ

門上武司さん、秋山都さん、山路美佐さん、森脇慶子さん他、食通のジャーナリストや編集者が毎月ひとつのテーマから着想した3軒をまとめてご紹介する小誌連載「ガストロノミーの杜 極私的店案内」。

今回はフードコラムニストの門上武司さんが、京都、滋賀、北海道の3店をご紹介します。

それぞれのジャンルで独自のスタイルを追求

令和6年の厚生労働省の統計によると、「宿泊業、飲食サービス業」の女性の雇用者数の増加率が他業種と比べて最も大きくなっています(前年比約3パーセント増)※。こうした流れに合わせるように、飲食店を構えて話題になる女性が増えています。この傾向はパティスリーやブーランジェリーの世界で顕著な一方、料理店では印象が薄かったのですが、その感覚を覆す料理人に出会いました。

一人目は2025年秋に京都で寿司店を開いた「ちさき」の射場智左季(いばちさき)さん。京都出身で京都のホテルで働いていましたが、江戸前の技に憧れて東京の名店「日本橋蛎殻町すぎた」で仕事を覚え、故郷の京都で独立。江戸前の仕事をもとに、まぐろに頼らず関西ならではの魚を使い、個性を生かした柔和な接客で、その世界を作り上げつつあります。

左から、真鯛、かすご、琵琶鱒、こはだ、北寄貝。 撮影=福森クニヒロ

また、滋賀・瀬田の「炭火割烹 蔓ききょう」の西澤芽久美(めぐみ)さんは、京都で培った割烹や焼き鳥の経験を生かし、結婚を機に瀬田に移り、炭火を中心とした和食の店を切り盛りしています。滋賀・南草津の「サカエヤ」の肉類や琵琶湖の天然うなぎ、本もろこ、すっぽんや湖北の山で獲れる鹿、月の輪熊など、できるだけ周辺の食材を主体に料理を構成。本人もハンターの資格を持って山に入り、生産者や他ジャンルの料理人と交流し、アップデートを続けています。

北海道・札幌の中心部から離れた立地にある「アグリスケープ」。店主の吉田夏織(かおり)さんは、農業・畜産業に関わる料理人という稀有な存在です。午前中は野菜を育て、養豚を行い、昼前からシェフに。料理を提供する前に、食材が入った大きな籠を抱え、「今日の食材、私たちが作りました」と見せてくれますが、その説得力に魅了されてしまいます。吉田さんの料理は"料理は元気の源"と実感させるフランス料理で、食べ終わるとまた食べたいと思います。

この3人に共通しているのは、しなやかさと芯の強さ、そしてエネルギー量の多さ。こうした女性の料理人が次第に料理界を席巻するのではと感じています。

※厚生労働省年次報告書「令和6年版 働く女性の実情」より。

撮影=福森クニヒロ

「ちさき」(京都・御所南)

幅広い人脈を生かして、独自の江戸前寿司を追求

築百余年の古民家を改装した店内には、カウンター8席のみ。京都、東京の老舗魚専門店から琵琶湖の若い漁業従事者まで幅広くネットワークを広げていて、これからさらに食材を充実させていくのではと期待が高まります。「ちさき」の幕は上がったばかり、今後の展開が楽しみです。

DATA
営業時間/17時30分〜 ※要予約
不定休
tel.非公開
Google mapで確認
京都府京都市中京区布袋屋町508

ちさき

撮影=福森クニヒロ

「炭火割烹 蔓つるききょう」(滋賀・瀬田)

琵琶湖周辺の魚介や滋賀の山の恵みを、炭火を使って滋味深く仕上げる

1913年建造の蔵を改装した店舗の風情が心地よい。西澤さんの優れた食材を選ぶ眼力と、情報を運んでくれる仲間の多さには驚きです。注目する料理店に足を運ぶフットワークの軽さも特徴で、地元生産者との関わりや広がりを生かして、料理に反映させています。

DATA
昼夜とも多彩なコースとアラカルトがあり、昼コース2,750円~、夜コース7,150円~(おまかせコースは1週間前に要予約)。
営業時間/11時30分~14時、16時~19時30分(ともにL.O.)
定休日/水・木曜
tel.077-545-7837
Google mapで確認
滋賀県大津市瀬田2-2-1

炭火割烹 蔓ききょう

撮影=福森クニヒロ

「Restaurant AGRISCAPE(アグリスケープ)」(北海道・札幌)

生産者の視点で、レストランの枠を超えて北海道の食材と向き合い、生かす

札幌市中心部から車で20分。ゼロから農業をはじめ、5年間の構想期間を経てレストランをオープン。吉田さんは日常の暮らしが大地とのつながりから成り立つというたくましい存在で、料理を前にして言葉をつなぐときの輝きある表情に気持ちが昂ります。

DATA
昼コース4,400円~、夜コース13,200円~、キッズメニューあり。カフェとショップを併設し、ショップでは平飼い卵や野菜、ベーコンやジャムなどを販売。
営業時間/12時~13時、17時45分~19時(ともにL.O.)
不定休
tel.011-676-8445
Google mapで確認
北海道札幌市西区小別沢177

Restaurant AGRISCAPE

教えてくださったのは……

門上武司さん(フードコラムニスト)
かどかみたけし●フードコラムニスト。食にまつわる執筆、編集の業務を中心に、プロデューサーとして幅広く活動。「一般社団法人 全日本・食学会」 副理事長。「食の都・大阪」推進会議メンバー。料理雑誌『あまから手帖』編集顧問。著書多数。最新刊は『別冊あまから手帖 食べる仕事 門上武司』。

文=門上武司 撮影=福森クニヒロ 編集=平田剛三(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年7月号より

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