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ロバと世界各地を徒歩で旅する人物に本を書いてもらう。「行商とSNSの組み合わせた独自の販売戦略」とは?【河出書房新社 高野麻結子さん インタビュー】

  • 2026.5.29

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。

◎今月の編集者 河出書房新社 編集第一部 第二課 高野麻結子さん

私が高田さんを知ったのは、ロバを飼いたいという知人から教えてもらったのがきっかけです。当時、高田さんは“ロバと共に世界各地を徒歩で旅する人物”としてSNSで注目を浴びていました。Xの文章を拝見し、以前担当した“レンタルなんもしない人”さんとの共通点を感じ、興味をそそられました。レンタルさんは自らを差しだすことで、相手から思いもよらない力を引きだす方。高田さんはロバがいれば、どこまででも歩いていける生き方を発見し、実践しておられる方。どちらも魅力的です。

さっそくDMでコンタクトをとりました。すでに他社からもオファーがきていたそうですが、高田さんは学生時代ジャック・ケルアックの『オン・ザ・ロード』を愛読していて、その翻訳版を出した河出書房なら、と。いま思えば依頼した時点で、内澤旬子さんや河田桟さんのような本を書いてほしいと具体的な要望をだしたのも良かったのかもしれません。

制作で苦労したのは各章扉に掲載した地図の作成です。高田さんとロバのクサツネが実際に歩いたルートを、Googleマップと原稿を照合して作りました。大変でしたが、作業を通して私自身も旅を追体験できました。特に四万十川の上流を雨のなか歩く場面は、高田さんの文章と相まって雨の匂いや現地の雰囲気が伝わってきて。形容詞を使わず、見たものをそのまま描写する彼の文体には押しつけがましさがないんです。それが読む人に落ち着きを与えるのではないでしょうか。

その後、高田さんは北海道で塩づくりを始め、クサツネと旅をしながら塩とこの本を売っています。Xで現在地を発信しているので、実際に読者の方が会いにきていて。SNSと、行商という組み合わせが他にはない販売戦略となっています。本書は、そんな彼の生き方そのものが、旅する先々で出会う人たちとの新しい関係を生みだしていく試みでもあると思います。

たかの・まゆこ●交通新聞社などを経て現職。「14歳の世渡り術」シリーズ、『〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。』はじめ様々なジャンルの本を編集。最新担当作に『カモノハシくんの事件ファイル』。

『ロバのクサツネと歩く日本』

(高田晃太郎/河出書房新社) 1892円(税込)

ロバと旅する日々をXで発信する“太郎丸”こと著者のロバ旅本、第2弾。50万円で新たな相棒の雄ロバを迎え、栃木から下関、九州を経て北海道へ戻る1年1カ月を記録。歩くことで見えてくる、いまの日本の姿とは。

気になるポイント

SNSから書籍転換に成功した背景を知りたい

ロバと旅する紀行本と聞いて、発想のユニークさに惹かれつつも「どうやって人々の関心をつかんでいるんだろう」と思ってしまった。イランをロバ連れで旅するという、特異な体験記ながらも五刷りまでいってるなんて! さらに国内編まで続いているのが興味深い。ただ、大きく宣伝している印象もない。それでも売れているということは、書店でふと手に取った人に確かな魅力が伝わっているのだろう。SNSでの広がりが起点なのか、それとも書籍としての編集の工夫が効いているのか。その成り立ちや届け方を知りたくなった。

さどしま・ようへい●1979年生まれ。講談社勤務を経て、クリエイターのエージェント会社、コルクを創業。三田紀房、安野モヨコ、小山宙哉ら著名作家陣とエージェント契約を結び、作品編集、著作権管理、ファンコミュニティ形成・運営などを行う。

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