1. トップ
  2. ヘルスケア
  3. 医師から『食道がん』と診断された50代男性→数年前から、身体に起きていた“恐ろしい異変”に「あの時、忠告を聞いていれば…」

医師から『食道がん』と診断された50代男性→数年前から、身体に起きていた“恐ろしい異変”に「あの時、忠告を聞いていれば…」

  • 2026.6.17
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。緊急手術をはじめとして大血管の危機に日々向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。

「最近太ったせいか食後に咳が出ることが増えている、それに咳が長引いてるような気もするんだよ。」

「一度、病院で診てもらったら?」

家族の忠告を「咳止めで何とかなるよ」と笑って流した50代男性のEさん(仮名)。

しかし数年後、彼を待っていたのは「食道がん」による食道全摘出という過酷な現実でした。現在はかつてのように楽しく食事を囲むことはできず、少しずつしか飲み込めない嚥下障害や、食後に動悸・発汗・吐き気などが急速に起こる後遺症に苦しんでいます。「あの時、忠告を聞いていれば…」一生続く後悔と食事制限に向き合う日々を送っています。

胃酸の逆流が招く「バレット食道」からのがん化

なぜ「長引く咳」が食道がんの引き金となるのでしょうか。これは「胃食道逆流症(GERD)」によって、「バレット食道」を経てがん化する次のメカニズムで起こります。

【逆流と刺激】
酸の暴露:胃の入り口が緩んで胃液が逆流し、酸が気管支を刺激して収縮させることで「長引く咳」を引き起こします。
粘膜の変質:強烈な酸の暴露を長年受け続けた食道の粘膜(扁平上皮)は、身を守るために胃や腸のような粘膜へと変質するケースがあります(バレット食道)。
がんの発生:この変質した粘膜を放置し続けることで、その一部から「食道腺がん」が発生し、発見が遅れれば食道の全摘出を余儀なくされることもあります。

「ただの咳」や「太り気味」に潜む危険な境界線

「仕事の付き合いでつい食べ過ぎてしまう」「疲れているから、食べてすぐ横になって休みたい」。毎日懸命に働く皆さんが、多少の咳を「いつものこと」とやり過ごしてしまうのは、ごく自然な心理です。

しかし、のちに重大な結果にならないために今知っておいてほしいことがあります。
「胸焼けがないから胃酸の逆流ではないはず」と思うかもしれませんが、逆流によって引き起こされる咳の多くは、典型的な胸焼けの症状を伴わないとされています。また、肥満の場合、お腹の内側にかかる圧力が高まることで胃酸の逆流を誘発し、食道腺がんのリスクが約2〜3倍に跳ね上がります。

実は、日本人の食道がんの約90%は喫煙や飲酒が主な原因となる「扁平上皮がん」であり、この「食道腺がん」は約7%と少数派です。しかし、近年の食生活の欧米化に伴い、バレット食道と食道腺がんのリスクは増加傾向にあります。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

もし「太り気味」で、長引く咳がある場合、以下の3つのサインをご自身で確認してください。

1. 風邪薬を飲んでも「咳が長引く」

微小な酸の粒子が気管支を慢性的に刺激して収縮させているサインであり、単なる風邪とは原因が異なります。

2. 食後や就寝時に「酸っぱい胃酸が上がってくる(呑酸)」

胃酸が食道へ逆流している直接的な証拠であり、横になったり腹圧がかかったりするとより逆流しやすくなります。

3. 食べ物を飲み込むときに「胸の奥がつかえる・しみる」

酸の慢性的な暴露によって食道の粘膜がただれて炎症を起こしているか、がんが進行して食道が狭くなっている危険なサインです。

食後の不調や、長引く咳はお近くの消化器内科クリニックへ

「忙しいから」「これくらい大丈夫」と油断して受診しないのはよくあることです。

痛みもなく咳が出るだけだから、というのもよく聞きます。GERDの場合、胃酸を抑える薬などを飲むことで症状もバレット食道への進行も抑えることが期待できます。まずは「食後の違和感、長引く咳」があったら近くの消化器内科クリニックを受診するなど、ハードルの低い一歩から始めてみましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

の記事をもっとみる