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鍼灸の観点で「手と指」メンテナンス|不調を予防・緩和する日々のケア

  • 2026.5.28
イラスト=River Rie(Softdesign)

鍼灸の観点では手と指のトラブルをどう捉えるのでしょうか?また、手と指の不調を防く緩和するためのセルフケアはあるのでしょうか?鍼灸師の岡尾知子さんに教えていただきます。

お話を伺ったのは

写真=本人提供

岡尾知子さん 国際薬膳師・国際中医師・鍼灸師
おかおともこ●編集者、ライターとして美容・健康をテーマに記事を執筆。取材を通して東洋医学への関心を深め、資格を取得。「つぼみ堂はりきゅう院」院長として鍼灸の臨床に当たると同時に、薬膳のスクールも主宰。著書に『はじめての薬膳生活』(法研)がある。

痛みが出るその前に手指のセルフケア“始めどき”チェック

1つでも当てはまるものがあれば、マッサージやツボ押しなど、手と指のセルフケアの始めどきです。

□ 爪が変化した(縦の筋、割れやすい、凹凸がある)
□ 関節が太くなった
□ 動かすと指からパキッと音がする
□ 朝起きたとき、手がこわばっている
□ 首が硬く動かしづらい
□ 手のひらを反らせると硬い感じがする
□ ビンやペットボトルの蓋が開けづらい
□ キーボードやスマホの操作で指がとても疲れる
□ 重い荷物を持ったとき、指の付け根や関節にしびれを感じる

早めに予兆に気づきセルフケアのきっかけに

鍼灸の考え方を取り入れると、手と指の不調をまた別の視点で捉えることができます。

「来院する方を見ていても、やはり50歳前後から、手や指に不調をきたす方が増えます。リウマチなどほかの原因がないか、医師の診察を受けることは大切ですが、ばね指の症状を鍼灸治療で軽減した症例もあり、状態によっては鍼灸で腱をゆるめて軽減するアプローチも有効です。ただ、プロに頼らず自分でケアできることも多々あるので、予防も含めて鍼灸視点でのセルフケアをお伝えできたらと思います。

まずは早めに不調に気づくこと。目安として爪の状態があります。東洋医学では“余り”という概念があるのですが、爪は“筋(すじ)”の余りといわれています。“筋”とは腱や筋膜のことで、そこに“血(けつ)”(うるおいや栄養)が足りていないと、爪の縦筋や弱さにつながります。爪が弱っていたら、手や指も“黄信号”なのです。

また“筋”は東洋医学の五臓でいう“肝”と関連があり、爪の弱さは血を蓄えて全身に栄養を届ける“肝”の働きが弱っている表れでもあります。クコの実やナツメを摂るなどの食養生も意識してみてください。

またヘバーデン結節など関節のトラブルの前兆ともいえるのがむくみ。水は炎症のある場所を冷やそうと集まるので、指輪がきつく感じるなどのむくみは、指に炎症が起き始めているサインかもしれません。

じつは手と指の悩みを持つ方の多くは、肩甲骨や首、鎖骨周りの筋肉も固まっていることが多いです。指と肩、さらに背中、胸は筋膜で繋がっているので手や指のストレッチで首肩の悩みが改善することも多々あります。動作をするときは手先だけを使うのではなく、肩や肩甲骨など大きな筋肉と連動させる意識をもちましょう。これだけで末端の関節にかかる負担はかなり分散されます。この先もずっと使う大切な部位ですから、日常の動作の癖を見直すことが、何よりのケアになります。

手と指メンテナンスに効果的なツボ

“痛気持ちいい”程度の強さで数回指圧します。入浴中など血行がよくなっている時がおすすめです。

イラスト=River Rie(Softdesign)

1.井穴(せいけつ)
爪の生え際にある。両サイドから押すと末端の血流が促される。

2.合谷(ごうこく)
親指と人差し指の骨が交差した所から、少し人差し指寄り。

3.手三里(てさんり)
肘を曲げてできるシワの親指側の先端から指3本分手首寄り。

4.労宮(ろうきゅう)
手を軽く握ったときに、中指と薬指の先が当たるところの間。

5.大陵(だいりょう)
中指から手首に向かい、中央の大きなシワと交わった腱の上。

6.内関(ないかん)
手首のシワから指3本分肘寄り。握ると出る2本の筋の間。

7.少海(しょうかい)
手のひらを上に肘を曲げたときにできる横ジワの小指側の先端。

朝のセルフケア

イラスト=River Rie(Softdesign)

起床時に手のこわばりを感じる方は多いはず。いきなり指を動かすのではなく、肩甲骨から動かして血流をよくしましょう。その後手指の“グーパー”を繰り返すと動きがスムーズになります。

バスタイムのセルフケア

イラスト=River Rie(Softdesign)

体が温まっている入浴中に、大きな筋を伸ばすストレッチをします。指先を持って手を上下に反らして、指先から肘の上までしっかり伸びているのを感じます。痛すぎない程度に加減しましょう。

イラスト=River Rie(Softdesign)

前腕を反対側の手でつかみ、ゆっくりとグーパーを繰り返します。つかむ位置をずらしながら行い、最後は肘の両脇をつかみながら行うと腕のだるさもスッキリします。

日中のセルフケア

イラスト=River Rie(Softdesign)

日中はデスクワークや家事などの作業によって凝り固まった姿勢を、たびたびリセットすることが大切です。大きく伸びをすることで巻き肩の解消にもつながります。

イラスト=River Rie(Softdesign)

手や指につながる腕の始まりは肩甲骨と意識しましょう。肩甲骨をぐっと寄せるストレッチを行うことで肩から腕までしっかりとほぐれ、胸が開いて姿勢もよくなります。

イラスト=River Rie(Softdesign)

指先のぶらぶら運動も効果的。指先の毛細血管の血流を促すことができます。ケアの前後には十分に水分を補給するのも重要。老廃物の回収・排泄がスムーズになります。

「手と指」メンテナンス
手指のトラブル別にセルフケアの方法と病院での治療法を紹介します。

1.更年期から増加する痛みやこわばりは女性ホルモンが原因?
2.手指トラブルの症状と治療法
3.検査と治療のQ&A
4.鍼灸の観点で症状を和らげるセルフケア(この記事)
5.手を慈しむ装いの力とマッサージ法(5/30公開予定)

イラスト=River Rie(softdesign) 取材・文=増田美加(女性医療ジャーナリスト) 編集=本田リサ(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年6月号より

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