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子どもがはしかにかかったかも?予防法や対処法についてクリニック理事長林裕章先生にお伺いしました

  • 2026.5.16

今流行している「はしか」ってどんな病気?感染力が強いと言われているけれど、どれくらい強いの?治療方法は?そんな疑問について、今回は林外科・内科クリニック理事長の林裕章先生へお伺いしました。

ママ広場

はしかは、医学的には「麻しん」と呼ばれる感染症で、原因は麻しんウイルスです。
最初は発熱、咳、鼻水、目の充血など、風邪とそっくりな症状で始まります。ここで「ただの風邪だろう」と判断してしまうのが最大の落とし穴です。発症から2〜4日たつと、いったん熱が少し下がったように見え、その後再び39℃以上の高熱と全身に広がる赤い発疹が出てきます。発疹が出る少し前、口の中の頬の粘膜に「コプリック斑」という白い小さな斑点が現れることがあり、これははしかに現れるほぼ特異的な症状です。合併症には肺炎、中耳炎、脱水、脳炎などがあり、決して「発疹が出るだけの軽い病気」ではありません(※1)。

はしかの怖さは驚異的な感染力

2026年は、国内のはしか報告数が急増しています。
国立健康危機管理研究機構(JIHS)によれば、2026年4月15日時点の国内累積報告数は299例で、前年同時期(78例)の約3.8倍。すでに2025年通年の報告数(265例)を上回っています。患者の中心は10〜20代で、ワクチン2回接種が未完了か接種歴不明の方が約半数を占めています(※2)。「海外の話」ではなく、日本国内の問題です。

はしかが特に怖いのは、感染力がとびぬけて強いことです。基本再生産数(R0、免疫のない集団で1人から平均何人にうつるかを示す指標)は12〜18で、インフルエンザ(1〜3)の約10倍、新型コロナ初期株(2〜2.5)の6〜7倍に当たります(※3)。

しかも飛沫感染や接触感染だけでなく「空気感染」もします。麻しんウイルスは空気中で最大2時間程度生存します(※1)。感染者がその場を離れた後の部屋に、免疫のない人が入っただけでもうつる可能性があるということです。
だからこそ厚生労働省も「手洗いやマスクだけでは麻しんを予防することはできない」と明言しています(※4)。中心になる予防策はあくまでワクチンです。

特効薬がないはしかは「かからないように防ぐ病気」と考える

意外と知られていませんが、はしかの原因である麻しんウイルスを直接やっつける特効薬はありません。治療は解熱、水分補給、安静などの対症療法が中心です(※1)。だからこそ、「かかってから治す病気」ではなく「かからないように防ぐ病気」と考える必要があります。

予防の柱はMRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)です。日本では1歳の1年間に1回(第1期)、小学校入学前の1年間に1回(第2期)、合計2回が定期接種です(※4)。2回接種でワクチン有効率はおよそ97〜99%とされ、世界的にも信頼性の高いワクチンです。ご家庭でまずできる一番大切な行動は、母子健康手帳でMRワクチンを2回受けているかを確認することです。

見落とされがちなのが大人の接種歴です。世代によっては定期接種として2回受ける機会がなかった方がいて、今回の流行で患者の中心が10〜20代になっているのもこの背景があります。(※2)。医療・保育・教育関係者、海外渡航予定の方、妊婦さんと同居しているご家族などは、接種歴が不明であれば、抗体検査や追加接種についてかかりつけ医にご相談ください。妊婦さんご本人はMRワクチン(生ワクチン)を接種できないため、ご家族が代わりに免疫を持っておくこと(コクーン戦略)が、お腹の赤ちゃんを守ることにつながります。


【コラム】
「2回接種でも16人感染」をどう読むか
2026年4月、新宿区の小学校で集団感染が起き、感染した18人のうち16人がワクチン2回接種済み、1回以下が2人と報じられました(※5)。「ワクチンは意味がないのでは」という声がSNSで広がりましたが、医学的にはむしろ逆で、ワクチンが効いている証拠と読むべき数字です。
ポイントは「分母」です。日本のMR2回接種率は約95%(※4)。仮に5年生100人中、接種済み95人・1回以下5人だとすると、感染率は接種者17%、未接種側40%。率に直せば、未接種側は接種者の2倍以上ハイリスクということになります。接種率が高い集団では、感染者の絶対数は接種者のほうが多くなるのは、数学的に見た必然です。シートベルト着用率99%の社会で、交通事故死者の多くが「着用者」になるのと同じ構造で、CDC(アメリカ疾病予防管理センター)も古くから注意喚起してきた論点です。

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はしかにかかった?と思ったらまず電話で相談する

ぜひ覚えていただきたい行動の鉄則があります。
はしかが疑われるとき、連絡なしでそのまま小児科や救急外来に行くのは絶対に避けてください。待合室にいる赤ちゃん、妊婦さん、免疫が弱い方にうつしてしまう危険があります。

発熱と発疹がある、麻しん患者と接触した可能性がある、流行地域から帰国後に症状が出た、というときは、まず医療機関や保健所に「電話で」相談し、「麻しんの可能性がある」と伝えてから受診してください。公共交通機関の利用も可能な限り避けます(※4、※6)。

ご家庭では本人を別室で休ませますが、ここで知っておきたい意外な事実があります。はしかの感染力は「発疹が出る前から」始まっており、発疹出現の4日前から出現後4日目まで感染性があります(※3)。「発疹が出てから家で休ませればいい」では遅いのです。
もう一つ、専門医として強調したいのが、はしかが免疫の「貯金」をリセットしてしまうという話です。これは「免疫健忘(immune amnesia)」と呼ばれます。

2019年、ハーバード大学のMina博士らがScience誌に発表した研究では、はしかにかかった子どもは、それまで体内にあった他のウイルスや細菌に対する抗体の11〜73%が失われ、平均でも約20%の抗体レパートリーが消失。免疫の状態が新生児レベルにまで戻ってしまった子もいたと報告されています。MRワクチン接種児にはこの現象は見られていません(※7、※8)。

古い研究では、回復後およそ2〜3年にわたり他の感染症で死亡するリスクが上がることも示されています(※9)。「一度かかれば免疫がついて終わり」ではなく、「治った後しばらく他の感染症に弱い時期が続く」病気なのです。
そしてもう一つ意外な事実が、SSPE(亜急性硬化性全脳炎)の頻度です。SSPEは、はしか感染の数年〜十数年後に発症する進行性の脳の病気で、根本的な治療法はありません(※10)。「数万人に1人」と言われがちですが、JIHSが紹介する米国の解析では、5歳未満で麻しんにかかった子の1,367人に1人、1歳未満では609人に1人と、従来考えられていたよりかなり高頻度になる可能性が指摘されています(※11)。1歳になったらすぐMRワクチンをと私たちが繰り返しお伝えするのは、こうした背景があるからです。

まとめ

今日からできることは3つです。母子手帳で家族全員の接種歴を確認すること。発熱と発疹が出たらまず電話で相談すること。「自然感染で免疫がつくからいい」という考えは捨てること。
はしかは怖い病気ですが、有効なワクチンがあります。怖がりすぎず、しかし軽く見ず、家族で接種歴を確認することが、大切な人を守る第一歩です。

※本記事の作成・推敲にあたり、文章構成案および表現整理の補助として生成AIを使用しました。医学的内容については医師が確認し、必要に応じて公的機関・専門学会等の情報を参照しています。

執筆者

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林裕章
林裕章

林外科・内科クリニック理事長。国立佐賀医科大学を卒業後、大学病院や急性期病院で救急や外科医としての診療経験を積んだのち2007年に父の経営する有床診療所を継ぐ。

現在、外科医の父と放射線科医の妻と、その人その人に合った「人」を診るクリニックとして有床診療所および老人ホームを運営しており、医療・介護の両面から地域のかかりつけ医として総合診療を行っている。科学的根拠だけでは語れない、人間の心理に寄り添う医療を実践している。また、福岡県保険医協会会長として、国民が安心して医療を受けられるよう、医療者・国民ともにより良い社会の実現を目指し、情報収集・発信に努めている。

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