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ドルビーシネマの“圧倒的没入感”の秘密は?色彩やスピーカーが生み出す立体感をドルビージャパン社長が徹底解説!

  • 2026.5.11

2026年3月にグランドオープンしたTOHOシネマズ 大井町。この劇場に導入された Dolby Cinema(ドルビーシネマ)の体験会「ドルビーシネマ特別体験会」が4月21日に開催された。開催にあたって「TOHOシネマズ 大井町のドルビーシネマを皆さんによく知っていただきたい。最高の映画体験をしていただきたい」と語っていたドルビーラボラトリーズ 日本法人社長(兼)東南アジア・太洋州統轄の大沢幸弘氏にドルビーシネマの魅力、ドルビーの今後について話を聞いた。

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ドルビーシネマの特長に暗いシーンでの鮮明な映像を挙げる映画ファンは多いが、これまでの上映システムとの違いは視認性の高さにあるという。

「プロの方にはドルビーシネマの黒がたまらないと言われます。映画ファンの方からは立体感がある、奥行きを感じるという声をよく聞きます。なぜそう感じていただけるのか、簡単にいえばドルビーシネマは輝度(光源の明るさ)とコントラストが自然の幅に近付けてグッと拡げたからなんです。例えば映画などの暗さや明るさは、黒から白まで少しずつ変化するグラデーションで表現されています。このグラデーションのキメが細かくて、黒と白の間に数えきれないほどの色がある。だから本当の自然の色が表現できます。ドルビーシネマは人間の目が認識できる最大限まで輝度とコントラストを広げているので、“本物の黒”だとか立体的に感じるという評価につながっているのです」。

「ドルビーシネマで味わうと色が増えたように感じられる」

ドルビージャパンの大沢幸弘社長 撮影/杉 映貴子
ドルビージャパンの大沢幸弘社長 撮影/杉 映貴子

グラデーションの豊かさは色彩表現も拡張する。「例えば、新海誠監督作品ほかアニメは色の美しさも見どころですが、ドルビーシネマで味わうと色が増えたように感じられます。7色の虹も実際はグラデーションですから、それを70で表現するのか700なのかで大きく違ってくるわけです」。

色彩の効果が際立っていた作品の一つとして、大沢社長が挙げたのは2024年の福山雅治の長崎ライブを映画化した『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM@NAGASAKI 月光 ずっとこの光につながっていたんだ』。コンサートが行われたのはV・ファーレン長崎のホーム、長崎スタジアムシティ。サッカーグラウンドのため屋根がなく、ステージの上に青空が広がる開放的なロケーションとドルビーシネマの相性が抜群だったという。「コンサートは午後から夜へと続くのですが、青かった空が徐々にオレンジ色になり黒になっていく色の変化がとても繊細に再現されています。空の色で何時なのかわかるぐらい美しいグラデーションは、ドルビーシネマならではですね」。

そんなドルビーシネマの映像体験を支えているのが、作品ごとに行ってきた明るさやコントラストの調整を、作り手の意図に合わせシーンやフレームごとに最適化するHDR技術、Dolby Vision(ドルビービジョン)。それを映画館で忠実に映し出すために、ドルビーシネマでは通常2台のレーザープロジェクターが使われる。スクリーンに同じ映像を重ねて投影することで、明るいところは光量が増し、暗いところは黒が重なり、くっきりとしたディテールと高いコントラストを実現するのだ。「大ヒットした『国宝』も今年からドルビーシネマで上映されました。通常版(SDR)の時でも十分美しかった着物など色の鮮やかさが、ドルビーシネマで観ることで一段と輝いて感じられました」。

「目をつぶっていても立体的な音を楽しめるオーディオ」

【写真を見る】『新幹線大爆破』を手掛けた樋口真嗣監督と作曲家・岩崎太整との豪華3ショット 撮影/杉 映貴子
【写真を見る】『新幹線大爆破』を手掛けた樋口真嗣監督と作曲家・岩崎太整との豪華3ショット 撮影/杉 映貴子

ドルビービジョンと共にドルビーシネマの核をなすのが、まるで映画の世界に入り込んだようにリアルなサウンドが360°駆け巡る立体音響システムのDolby Atmos(ドルビーアトモス)だ。「スピーカー1つのモノラルだった音の世界にステレオが登場した時に、左右のスピーカーから違う音を出すことで生まれる広がりに驚かされました。そこから進歩しスピーカーの数、つまりチャンネル数が5になり7つになりと水平に増えていったのです。このチャネルオーディオ方式とは全く異なる技術で立体音響を実現したのが、ドルビーが先陣を切って開発してきたオブジェクトオーディオです」。

「オブジェクトオーディオ」とは、個々のセリフや効果音などひとつひとつの音源にXYZの位置情報(メタデータ)を付けることで空間内に自由に音を配置、移動ができるシステムを指す。「3次元の空間で、この音源はここ、この音源はあそこと位置を決めることで、天から降ってくる稲妻や回転するヘリコプターの回転翼など目つぶっていても感じる立体的な音が再現できるのです」。

自動車のなかでも「目の前でアーティストが演奏しているような臨場感」

音響の研究・開発メーカーとして1965年に誕生したドルビー社。映画の世界に入り込んだような臨場感や、ホール全体に包まれるようなコンサート会場の一体感が再現できるドルビーアトモスは、大沢代表が「30数年ぶりにサウンドの世界に起きた技術革新」と評するように、ドルビーならではの画期的テクノロジーだ。

映画館のほか、テレビやスマートフォンなど日常のデバイスにも数多く採用されているが、それらを可能にしたのがスピーカーの数に頼らないシステムだという。スピーカーが多ければ多いほど迫力が増すのはもちろんだが、ドルビーアトモスはスピーカーの数を問わずオブジェクトオーディオを再生できる。「スピーカーが2台や4台でも、もちろん天井に設置しなくても立体音響が味わえます。アマゾンのEcho Studio(エコースタジオ)という筒型のスピーカーは、1つだけで立体音響になるんです。AppleやD&Mからも同種のすばらしい商品が出ています。天井のスピーカーをいま、使ったか使わなかったか、聴いていただいたあとにお尋ねすると、お詳しい方も含めてなかなか当たりません」。

視認性の高い色彩や立体的な音響により、圧倒的な映画体験を提供するドルビーシネマ 撮影/杉 映貴子
視認性の高い色彩や立体的な音響により、圧倒的な映画体験を提供するドルビーシネマ 撮影/杉 映貴子

そんなドルビーアトモスの普及で現在特に力を入れているのが自動車の分野だという。「対応機器が広まっているなかで、残る分野のひとつが自動車です。すでにメルセデスやポルシェ、アウディなど世界の6社が日本市場でも採用しており、世界全体では30以上の車ブランドでドルビー技術の導入が進んでいます。目の前でアーティストが演奏しているような臨場感ある音楽が味わえますから、目的地に到着しても曲が終わるまでは降りたくないと思うほど感動的ですよ」。いまやモビリティとしてだけでなくプライベート空間としての活用も注目されている自動車だが、ドルビーアトモスは乗車中に好きな音楽や映画を堪能できる場所としても力を発揮するはずだ。

コンサート、スポーツ、旧作のリバイバルまで「最高の作品を最高の品質で、日本はもちろん世界の人にお届けしたい」

ハードウェアの環境が充実している現在、ソフト面もますます充実する一方だ。「すばらしい映像と音響が体験できるのは、クリエイターのみなさんがドルビービジョンやドルビーアトモスの技術を活かした作品を作ってくださっているからです」と語る大沢社長が拡充させたいジャンルに挙げているのがスポーツ。コンサート同様、競技を目の当たりにしている臨場感が味わえるスポーツはドルビーのシステムに最適だが、そこには個人的な想いもあるという。

「いま世界中の先進国・主要国におけるスポーツ中継で、ドルビービジョンやドルビーアトモスが使われています。臨場感と迫力たっぷりに中継されています。日本ではWOWOWとdocomoの一部の方々が先進的ですが、技術立国日本の放送系に大きなウネリが出てくる事を期待しています。視聴率が挽回するでしょうね」。

コンサートの映画は人気のジャンルで、ドルビーに最適だ。近年はその数も増加傾向にあり、「2019年の嵐のコンサートフィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』は、当時日本で7館しかなかったにもかかわらず、ドルビーシネマだけで先行独占上映されました。スクリーンだと会場の最高の席で生で観ているような臨場感で何度でも味わえます。ライブを超えた体験と言えるのではないでしょうか」。

近年は4Kなど高精細リマスターによる旧作のリバイバルも盛んだが、これもドルビーシネマと相性がよい。「アナログのフィルムもリメイクに向いています。古いものはフィルムの保存状態により効果に違いは出てきますが、この方面での活用も楽しみですね。黒澤明監督作品など名作は、いずれドルビーシネマにリマスターされるものが出てきてほしいですね」。

「ドルビーシネマを一度体験してほしい」と熱く語っていた大沢社長 撮影/杉 映貴子
「ドルビーシネマを一度体験してほしい」と熱く語っていた大沢社長 撮影/杉 映貴子

日本の映画館で初めてドルビーアトモスが採用されたのは2013年、ドルビービジョンも採用したドルビーシネマが誕生したのは2019年のこと。いまやドルビーアトモスは全国の主要映画館で採用され、ドルビーシネマも11館になった。「映画やアニメ、ゲーム、そして音楽など、日本はすばらしいコンテンツをたくさん持っています。政府もコンテンツ産業を自動車産業並みに大きくしていきたいという方針を打ち出しました。クリエイターの方たちと協力しながら、最高の作品を最高の品質で、日本はもちろん世界の人にお届けしたい。それが私たちの役割だと思っています」。

取材・文/神武団四郎

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