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「かわいくないと幸せになれない」歪んだ価値観を持つ毒親に育てられた娘が、その呪縛を乗り越え母親になるまでの物語【書評】

  • 2026.5.6

【漫画】本編を読む

『親に整形させられた私が母になる エリカの場合』(グラハム子/KADOKAWA)は、「毒親」という言葉では簡単に片づけられないほど重い親を持つ子の生きづらさと解放を描いたコミックエッセイだ。母親の価値観に縛られ、自分の意思を奪われて育った女性が、自分の人生を取り戻していくまでの道のりが描かれている。

主人公・エリカの母は、「女の子はかわいくないと幸せになれない」が口癖の人物だった。娘の意思よりも外見や世間体を重視し、自分の理想の娘像を押しつける母は、中学卒業後すぐに二重整形を勧める。そしてエリカは、春休みの間に初めての整形手術を受けることになる。服装や髪型、進学先までも母が決め、反抗すれば叱責される……。エリカはそうした環境の中で、いつの間にか自分の意思を持つことができなくなっていった。

虐待は必ずしも暴力の形を取るだけではない。「あなたのため」と繰り返しながら、娘の人生をコントロールしていくことも十分虐待と言えるだろう。エリカも当初は母の言う通りにすれば幸せになれると信じていた。しかし、整形しても心は満たされず、過食や嘔吐に苦しむなど精神的な不調が現れていく。親の期待に応え続けるうちに、自分の感情や望みがわからなくなっていく苦しさがリアルに描かれている。

やがてエリカは、母の価値観に従って生きてきた人生を見つめ直し、自分の意思で未来を選び取ろうとする。この過程が大きな見どころだ。親の期待から逃れることは、単に物理的な距離を置けば済む問題ではない。長年刷り込まれた価値観と向き合いながら、時間をかけて少しずつ自分自身を取り戻していく必要があるのだ。

タイトルにある「母になる」という言葉も重要なテーマである。過去の傷と向き合いながら、新しい家族の形を模索するエリカの姿は、単なる被害の記録では終わらない。

子どもへのは親の期待は、どこからが支配になるのか。自分らしく生きることの素晴らしさを子どもに教えるにはどうすればよいのか。これから親になる人たちにぜひ手にとってほしい一冊である。

文=馬風亭ゑりん

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