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“出ているドラマにハズレなし”と言われる理由 野呂佳代の強みとは

  • 2026.5.2
野呂佳代 クランクイン! 写真:上野留加 width=
野呂佳代 クランクイン! 写真:上野留加

先日、Xで「野呂佳代が出ているドラマにハズレなし」というポストを見かけた。いわゆる“主役級のスター”という立ち位置ではないはずなのに、彼女の名前があるだけで、作品への信頼度がグッと上がるのはなぜだろう――。10クール連続でのドラマ出演。4月13日スタートのドラマ『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)では、ついに二番手ポジションに抜てきされた。“よく見かける存在”から、作品の核を担う役者へと着実にステップアップを重ねてきた野呂。本稿では、『銀河の一票』での名演を中心に彼女の魅力を深掘りしていく。

【写真】野呂佳代、『銀河の一票』スナックのママ役が話題

■アイドル・バラエティタレント・役者——キャリアの連続性

筆者が初めて野呂の存在を知ったのは、SDN48のキャプテンを務めていたときのこと。彼女は、2006年にAKB48の2期生としてデビューしたのち、2010年にSDN48へ完全移籍。2012年に“全員卒業”を迎えるまで、キャプテンとしてグループを牽引してきた。背中で引っ張るキャプテン…というよりは、いじられキャラの愛されリーダー。卒業後に出演したバラエティ番組で、「キャプテンらしさを見せるために、秋元(康)さんの楽屋にあったお菓子を『食べていいから』と勝手にメンバーに振舞っていた」というエピソードを明かしていたときは、「野呂ちゃんっぽすぎる」と思わず爆笑してしまった。

芸能活動未経験のメンバーが多いなかで、すでにAKB48としてデビューしていた野呂は、本来ならば“先輩”として一線を引かれてもおかしくない立場にあったはず。しかし、彼女は距離を生むどころか、自らその壁をぶち壊しにいくことで、親しみやすいキャプテンとして愛されていたのだ。

グループ時代に、メンバー間の“和”を保つ潤滑油のような役割を担っていた経験は、『ゴットタン~The God Tongue 神の舌~』(テレビ東京系/以下『ゴットタン』)でのアシスタント業において、より洗練された形で発揮されていた。芸人の“本気の悪ふざけ”を追求する『ゴットタン』は、バラエティタレント・野呂佳代のブレイクのきっかけとなった番組だ。最初こそ自信なさげな様子を浮かべていたが、劇団ひとりによる本気のお説教などを乗り越えていくうちに、だんだんと本来の力を発揮するように。また、同番組内で繰り広げられていたコント企画での演技は、振り返れば役者・野呂佳代の原点だったように思えてならない。

■『ブラッシュアップライフ』『アンメット』での好演

個人的に、野呂が役者としての頭角を表すきっかけとなったドラマは、2023年放送の『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)だと思っている。彼女が演じたのは、主人公の同級生“ごんちゃん”こと丸山美佐。ごんちゃんは、テレビ局でメイク担当の仕事をしているため、華やかな世界にいるけれど、中身はいたって等身大だ。

ランチタイムに愚痴を吐きながらも、仕事中はきちんとプロとして振る舞う。その切り替えが、いかにも社会人らしく、「こういう人、いるよな」と思わせるリアリティがあった。特別なことはしていないはずなのに、彼女がいるだけで作品の雰囲気が一気に“現実”に引き寄せられるのだ。こうした質感は、ほかの役者が「野呂ちゃんみたいに」と言われても再現できるものではない。

また、野呂の出演作のなかで、とくに印象に残っているのが、2024年放送のドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系/以下『アンメット』)である。このあたりから、コアなドラマファンの間では、「野呂佳代が出るドラマは名作が多い」といった声が、なかば“定説”として語られるようになっていった。野呂の演技が好きで、同作を未視聴の方がいたら、まずは第10話だけでも観てほしい。

『アンメット』第10話では、野呂演じる麻酔科医の成増貴子に、パートナーと死別した過去があることが明らかになった。普段は明るい成増が、「なんかさ、わたしのなかではまだ生きてるっていうか」「とっくにいないのに、ずっと居座ってるんだよね」と同僚に向けてぽつりぽつりと本音をこぼす。このときの、感情を“見せる”のではなく、“にじませる”ような芝居が、喪失の深さをよりリアルなものにしていたのを覚えている。

■『銀河の一票』から見えた役者・野呂佳代の強み


そして、『銀河の一票』だ。同作は、政界を追い出された主人公・星野茉莉(黒木華)が、“選挙参謀”として政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂)をスカウトし、都知事選に挑む…という選挙エンターテインメント。出会ったばかりの人に、自分の人生を託すというのは、正直なところ無理がある設定のようにも思えた。しかし、野呂が演じているからだろうか。「分かる、この人になら託したい、託せると思うよね」と茉莉に共感している自分がいた。

第1話、茉莉の自殺(勘違いだったわけではあるが)を止めようとしたあかりは、「影響ないですよね。わたしが死んでも、あなたの人生に」と突き放すように言う茉莉に、「そんなわけないでしょ。大だよ、影響大! さっき言ってたじゃん。世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ないって。あなただって世界の一部でしょ? わたしが幸せでいるために、あなたにも幸せでいてもらわないと」と返す。本来であれば、どこか“綺麗事”と処理されてもおかしくない台詞だが、そうはならないのは、野呂が持つ包容力ゆえだろう。

太陽のように明るいキャラ…に見えて、実は闇を抱えているというのも、野呂の真骨頂である。第2話では、あかりの命を救ってくれた恩人・鴨井とし子(木野花)が、認知症を患っていることが明かされた。なかでも、とし子が「なくなっちゃうのかね、わたし」と弱音を吐いたとき、「なに言ってんの」と震える声で返すシーンが、印象に残っている。いちばん辛いのはとし子だから、自分は笑顔でいなければならない。だけど、どうしようもなく切ない。そんな心の揺れが、この1シーンに凝縮されていたのだ。

今のところ、あかりが都知事選に出馬する様子はない。もしも、彼女が政界に進出するときが来ても、きっと特別なことはなにも起こらないのだろう。ただ、誰かの言葉を受け止め、自分ができることをしていく。その積み重ねが、結果として人の心を動かしていくのだと思う。そんなふうに、どんな物語のなかでも、“日常”を信じさせてくれるところに、野呂佳代の強さがある。

(文:菜本かな)

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