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息子「父は口座を一つしか持っていないはずです」調べると…家族が“初めて知った事実”。銀行員が伝える“相続手続き”での思わぬリスク

  • 2026.5.15
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。くまえり銀行員です。
今日は、私が窓口で対応した相続手続きの中でも、今でも強く印象に残っている出来事についてお話ししたいと思います。

銀行の窓口というと、「お金のやり取りをする場所」というイメージが強いかもしれません。
けれど実際には、その奥にある“人間関係”や“過去”が、思いがけず表に出てくる場でもあります。

今回のケースも、まさにそうでした。

相続手続きのはずが、空気が変わった瞬間

ある日、来店されたお客様。
亡くなられたお父様の相続手続きのため、必要書類を一式そろえてお持ちでした。

手続き自体はよくある流れです。
戸籍を確認し、相続人を特定し、預金の解約・分配へ進む。

ところが、照会を進めていく中で、ひとつの違和感がありました。

「お持ちの通帳の中に、この番号の口座が見当たりませんね」

お持ちいただいた通帳にはないものの、システム上には“履歴だけが残っている口座”があったのです。

通常、解約済み口座の情報も法令等の規定により一定期間保持されます。ただ、その口座について、ご家族は誰一人として「知らない」とおっしゃいました。

「父は口座を一つだけしか持っていないはずです」

そう断言されるほど、ご家族の認識は一致していました。

存在しないはずの口座の正体

さらに確認を進めると、その口座には過去に一定期間、定期的な入出金があったことが分かりました。

そして何より、名義は確かにお父様ご本人。

ご家族の表情が、少しずつ変わっていきます。
「知らないはずの事実」が、現実として目の前に出てきた瞬間でした。

規定に従い、ご家族からのご依頼で該当口座の取引履歴明細を発行した結果、その記録から、ご家庭の収支とは明らかに毛色の異なる、継続的な支出が記録されていました。それは、お父様が生前、密かに守り続けていた何らかの秘密を物語るものでした。

相続という手続きをきっかけにご家族の誰も知らなかったお金の動きが判明したのです。

窓口の内側で起きていること

こうしたケースは、決して珍しいものではありません。

銀行員として感じるのは、「お金の流れは嘘をつかない」ということです。口にせずとも記録としては残り続けます。

そして相続の場面では、その記録が“家族全員の前に提示される”ことになります。

もちろん、私たちは事実を淡々とお伝えする立場です。
どんな事情があっても、感情に踏み込むことはできません。

ただ、その場の空気が一変する瞬間には、何度立ち会っても慣れることはありません。

相続で必ず起きる「見えない落とし穴」

今回の出来事を通じて、読者の方にお伝えしたいのは、相続手続きの“本質的なリスク”です。

多くの方が、「通帳にあるものがすべて」と考えがちですが、実際にはそうではありません。

特に注意すべきポイントは、以下の通りです。

  • 家族が把握していない口座や資産が存在する「可能性」
  • 解約済みや休眠状態でも記録は残るという「事実」
  • お金の動きから、想定外の人間関係が明らかになる「リスク」

近年はマネー・ローンダリング対策や本人確認の厳格化の影響もあり、相続手続きにおいても各金融機関の確認はより慎重になっています。

「知らなかった」では済まされない場面が、確実に増えているのが現状です。

知っておくべき“備え”とは

では、こうした事態を防ぐために、何ができるのでしょうか。

答えはシンプルですが、多くの方が後回しにしています。

それは、「生前の情報共有」です。

どこに口座があるのか、誰にどのようなお金の流れがあるのか。
すべてを詳細に話す必要はありませんが、“存在だけでも共有しておく”ことが重要です。

相続は、お金の問題であると同時に、家族関係が試される場でもあります。
だからこそ、見えない部分ほど、事前に整理しておくことが求められます。

あの時のご家族の表情は、今でも忘れられません。
手続きの場で初めて知る事実は、想像以上に大きな衝撃をもたらします。

それを避けるためにできることは、決して特別なことではないのです。


※プライバシー保護および守秘義務の観点から、記事内のエピソードは実際の事例を基に一部設定を変更・再構成しています。

ライター:くまえり銀行員
金融機関の窓口業務に携わり、日々さまざまなお客様対応を経験。
忙しい日常の中で起こりがちな銀行手続きの行き違いやトラブルを、窓口の内側から見た視点で、読者に寄り添いながら伝えています。「知らなかった」が「なるほど」に変わる瞬間を大切に執筆中。


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