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「最初からあった傷なのに…」退去立会いで30代男性に7万円超の請求…賃貸トラブルを防ぐ“入居初日にやるべきこと”

  • 2026.5.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

賃貸物件へ入居した際、多少の傷なら気にせず住み始める方は少なくありません。特に築年数が古い物件では「中古物件だから多少は仕方ない」と考え、管理会社へ報告しないまま入居してしまうケースも多く見られます。また、管理会社側でも確認しているから大丈夫だろうと安心しがちです。

しかし実際には、この最初の油断が、退去時に数万円単位の請求トラブルへ発展することがあります。原状回復トラブルでは「入居時からあった傷なのか」「入居後に付いた傷なのか」を証明できず、揉めるケースが後を絶ちません。

今日は、入居時の“たった1つの行動”を怠ったことで、退去立会いで約7万円を請求された30代男性の実例をご紹介します。

「中古物件だからこんなもの」と思ってしまった

数年前、私の知り合いが経営する不動産会社の営業マンが経験した話です。担当していた30代前半の会社員男性Aさんは、市内の単身向け賃貸マンションへ入居しました。

築年数はやや古めで、室内には次のような多少の使用感が残っていたそうです。

  • フローリングのえぐれ傷
  • 壁クロスの剥がれ
  • 水回り周辺の汚れ

ただAさんは「中古物件だし、多少は仕方ない」と考え、そのまま生活を始めました。通常、入居前には管理会社側で「室内チェックシート」を用いて傷や不具合を確認しています。

しかし実際には、確認漏れや記載ミス、細かい傷の未記録は珍しくありません。特に築古物件や、リフォーム直後の物件では、既存傷が残ったまま募集されているケースもあります。

ところがAさんは、写真撮影や管理会社への報告を一切していませんでした。

「管理会社も確認してるだろうし、大丈夫だろう」

その油断が、数年後に大きな誤算へ変わります。

退去立会いで空気が一変した

数年後、Aさんは転勤を機に退去することになりました。問題が起きたのは、退去立会い(管理会社と室内状態を確認する作業)の場です。

担当者が部屋を確認するなり、次々と指摘が始まりました。

「このフローリングの傷、かなり深いですね」
「クロスも一部破れています」
「水回り周辺の汚損もありますね」

Aさんは慌てて「入居時からあった部分もあります」と説明します。

しかし担当者から返ってきたのは、厳しい言葉でした。

「入居時記録に残っていない以上、現時点では借主様負担という判断になります」

結果として提示された原状回復費用は、約7万円。

Aさんは「そんなはずないでしょう…」と強く反発しました。

ただ、この時点でAさんには決定的な弱点がありました。それは、“証拠がない”ことです。

  • スマホ写真がない
  • 管理会社への報告をしていない
  • チェックシートへの追記もない

つまり、入居前から存在した傷だと証明できなかったのです。

管理会社側でも“確認漏れ”が発覚した

その後、Aさんは納得できず、管理会社へ再調査を依頼しました。すると後日、管理会社側でも一部の確認漏れが判明します。

本来、深いフローリング傷やクロス破損は、入居前チェックシートへ記載されるケースが多いためです。担当者の変更や確認不足も重なり、一部が未記録になっていたことが発覚しました。

結果的に、一部費用は管理会社負担、一部は借主負担という形で決着。最終請求額は下がったものの、完全免除にはなりませんでした。

最終的にAさんは「スマホで写真を撮っておけばよかった…」と強く後悔していました。実際、不動産現場では“写真1枚で数万円の請求を防げた”というケースは珍しくありません。

原状回復トラブルは“入居初日”でほぼ決まる

近年は、原状回復費用(退去時に部屋を元の状態へ戻す費用)をめぐるトラブルが増えています。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、通常損耗(普通に生活して付く劣化)と、借主の故意・過失(不注意などによる破損)は区別されるべきとされています。

例えば、次のような傷や劣化は経年劣化とみなされて貸主負担になるケースが一般的です。

  • 家具設置による床の小さなへこみ
  • 日焼けによるクロスの変色

一方で、次のような破損で、借主の故意・過失によるものの場合、借主負担になる可能性があります。

  • 物を落としたことによる深い傷
  • 故意による建具や設備の破損
  • タバコや、結露などを放置したことによるカビなどの著しい汚損

ただ実際には「いつ付いた傷なのか」を証明できず、トラブル化するケースが非常に多く見られます。だからこそ、入居時には以下の箇所で気になるところをスマホで撮影し、保存しておくことが重要です。

  • クロス
  • 建具
  • 水回り
  • サッシ周辺

可能であれば、管理会社へメール共有まで行うと安心です。

「管理会社が確認しているから大丈夫」

その油断が、数万円単位の請求や長時間の交渉につながることがあります。賃貸物件では、“入居時の5分”が、数年後の自分を守る。この意識は、ぜひ持っておいていただきたいと思います。

参考:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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