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キャバ嬢もホストも税金からは逃れられない… 夜の街で実際に起こった“税金を巡る攻防戦”。歌舞伎町No.1ホスト兼税理士が見た人間ドラマ【書評】

  • 2026.4.20
夜職税理士歌舞伎町の底辺と頂点で目撃した、税金と人生の実録 夜野仁/イマジカインフォス
夜職税理士歌舞伎町の底辺と頂点で目撃した、税金と人生の実録 夜野仁/イマジカインフォス

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カネと欲望が渦巻く夜の街にも、昼と同じく逃れられないルールがある。そう、税金だ。ホストもキャバ嬢も、確定申告と納税は当然の義務である。だが現実には、「一度も確定申告をしたことがない」という夜職の人も少なくないらしい。そして、その無知や放置が、人生を大きく狂わせることもある。

そんな夜の街の厳しい現実に向き合い、救いの手を差し伸べているのが、夜職専門の税理士・夜野仁さんだ。年間1億円を稼ぐ現役ホストでありながら、歌舞伎町に事務所を構える税理士でもある著者の『夜職税理士 歌舞伎町の底辺と頂点で目撃した、税金と人生の実録』(夜野仁/イマジカインフォス)には、夜の街に生きる人々の苦闘と、知らなければ身を滅ぼしかねない税金の現実が克明に記されている。夜職に就く人にとって実用的な1冊であることはもちろん、そうでない読者にとっても学びは多い。何より、人間ドラマの濃さがノンフィクションとして抜群に面白い。

夜の世界と税金の濃密な人間ドラマ

40代でキャバ嬢デビューして経営者になったシングルマザー、夜逃げしたオーナーに代わって店を再建したニューハーフバーのママ、収監直前でも確定申告をしようとした風俗嬢、税理士を変え、経費を見直したり分社化をしたりしたことで納税額が3分の1になったゲイバーのオーナー、夜職が会社バレして大手広告代理店をクビになった銀座のキャバ嬢……。本書に収められた話はどれも濃密だ。

持ち込まれた大きなゴミ袋5袋と、ボストンバッグいっぱいに詰め込まれた領収書の山

なかでも印象深いのが、夜野さんの知り合いのホストに東京国税局から電話がかかってきたというエピソード。朝、夜野さんに「国税から電話がきたんですが……どうしたらいいですか……?」と助けを求めてきた彼に電話をしてきたのは、国税局の中でも通称「リョウチョウ」と呼ばれる資料調査課。大口で複雑な案件や、悪質な不正が疑われる事案を担う部署だ。しかも本人は数年間にわたって無申告だったというから、夜野さんが「終わったかも……」と感じたのも無理はない。それでも不幸中の幸いだったのは、そのホストが調査官と会う前に夜野さんへ相談してきたことだった。

「今すぐありったけの領収書を持って事務所に来てください!」。そんな指示に従って、嵐のような大雨の日、彼が事務所に持ち込んだのは、大きなゴミ袋5袋と、ボストンバッグいっぱいに詰め込まれた領収書の山。夜野さんは税務調査に向けて、すぐに膨大な領収書の整理に入った。ただし、無申告である以上、加算税も延滞税も避けられない。結局、提示された納税額は4000万円。それでも彼はホストとしての独立を目指しているのだという。「膨大な税金を払わなければならないから、予定していた時期は難しいとは思いますが……それでも絶対諦めません」———そう言い切る姿に、夜の世界で生きる人のしたたかさが垣間見える。

夜職だけでは終わらない税の話

また、エピソードの合間に挟まれる、税金にまつわるコラムも興味深い。確定申告って何をすればいいのか、どこまでが経費になるのか、会社や家族にバレないためにはどうしたらいいのか。

これって夜職に限らず、私たちにも役立つ話なのではないか。こっそり副業をしている会社員や、インボイス制度や経費処理に頭を悩ませるフリーランス、そして確定申告や税金に少しでも不安を抱える人にとって、本書の内容は決して遠い話ではない。歌舞伎町という特殊な世界で培われた知識や考え方には、私たちの日常にも通じるものがある。

知識は自分を守る武器になる

引用----

「やっと国民になれた気がする」

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これは夜野さんが顧客からかけられた言葉だそうだ。「確定申告をすることで堂々と歌舞伎町を歩けるようになった」と語る夜職の顧客は少なくないという。知らないままでいることが、ときに人を大きな窮地に追い込む。けれど逆にいえば、知識は自分を守る武器にもなる。税金という一見堅いテーマを、ここまで生々しく、スリリングに、そして人間くさく読ませる本はそうない。お金に苦手意識がある人にこそ、ぜひ手に取ってほしい1冊。

文=アサトーミナミ

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