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山口周&深井龍之介(COTEN RADIO)が「人文知」を語る。AIに仕事を奪われる現代、人文科学の知識が武器となる!?【書評】

  • 2026.4.17
人文知は武器になる 山口周・深井龍之介 / 文藝春秋
人文知は武器になる 山口周・深井龍之介 / 文藝春秋

「AIに仕事を奪われる……」

2013年、米・オックスフォード大の研究チームが発表した論文が世間をにぎわせた。

同論文は米国内の702職種を対象にAIなどによる自動化が雇用に与える影響を分析し、20年以内に、ブルーカラーを中心に雇用の47%が代替されるリスクがあると結論付けた。それから約13年。生成AIは業務でも当たり前に使われるようになった。

はたして職を奪われたのはブルーカラーではなくホワイトカラーだった。

テック大手を中心に、人員削減が進む。対してブルーカラーはAIに奪われない仕事として評価を高めている。ホワイトカラーから需要の増えるインフラ・建設業界のブルーカラー職に転職し、前職を超える所得を得る逆転現象も起こっている。

何十年もかけ身につけた技術が一つの革新で陳腐化する。一夜にして常識が変わる。一つ選択を間違えれば、次の瞬間には路頭に迷っているかもしれない。どうすればよいのか……。

人文知こそが今を生き抜く羅針盤になる。そう、力強く語りかけてくるのが『人文知は武器になる』(山口周・深井龍之介/文藝春秋)である。

本書は著者二人の対談形式で展開される。

山口周氏は独立研究者・著述家として活動中だが、新卒では電通に入社。その後はボストンコンサルティングなど外資系コンサルティングで鳴らした。

深井龍之介氏にしても、代表を務めるCOTENでは世界史データベースの作成や歴史を学ぶコンテンツCOTEN RADIOを手掛けているが新卒では東芝に入社すると経営企画部門で研鑽を積み、数々のスタートアップ設立や億単位のバイアウトにも関わった。

一方で人文知と言えば、ときに「儲からない」「役に立たないもの」とみなされる向きもある。象徴的なのが2015年に文部科学省が全国の国立大学に出した人文・社会科学系学部の廃止・縮小を促す通知だ。批判からすぐに撤回されたものの、大きな議論を呼んだ。

人文科学は「役に立たないもの」なのか?

ビジネスの第一線で活躍してきた二人はなぜ人文知推しなのか。二人の言葉をつぶさに見ていくと、こうした疑問こそが、偏見に基づいたものであることが分かってくる。

たとえば、ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグらも学んだハーバード大の学部には、いわゆる専門課程はない。哲学などの人文知や物理化学など広範なリベラルアーツを学び、専門課程は大学院からだ。ヨーロッパでもエリート教育の一環として歴史や哲学といった人文知にまつわる教育が行われる。一例をあげるとフランスでは大学入学資格であるバカロレアを得るための試験では文理を問わず歴史・哲学が必修となっているそうだ。世界で人文学は役立たずどころか、いわば帝王学として扱われているのである。

とはいえ、哲学から歴史まで、人文知の領野は広い。何を学べばよいのか。本書で紙幅を割いて紹介されるのが歴史を学ぶことの妙味だ。

分野を問わず、優れたリーダーに求められる条件の一つとして本書で提示されるのが「適時適切に判断を下すこと」である。何を当たり前な、と思うかもしれない。

だが、猛烈なスピードで技術革新が進み、社会規範すら一夜にして変わるような現代社会では、この当たり前が難しい。だからこそ、先人たちが生き抜いてきた過去を知る必要があるのである。

たとえば徳川家康は先に倒れた織田信長や豊臣秀吉の歩みを見て「個人の力量に依存する政権はいずれ不安定になる」と見抜き、権力を分散させる幕藩体制を築き、260年超にわたり続く長期政権を樹立した。

歴史を学ぶことができれば、私たちもまた徳川家康が先人たちの歩みに「政権崩壊のパターン」を見つけたように成功のための羅針盤を見つけることができるはずだ。

山口氏はそのような一例として売上高世界1位の食品企業「ネスレ」を引き合いに出す。ネスレは即席めんで世界最大規模の市場であるインドでシェアトップを収めている。勝利の背景には徹底して過去の歴史を学び、一人当たりGDPの成長と売れ筋商品に相関関係があるというセオリーを見つけ出したことがあるのだという。

とはいえ、一朝一夕で人文知が身につくはずもない。だが本書では在野で研究を行う二人だからこそ分かる独学技法も紹介されているので安心してほしい。この本は激動の現代社会を生きるあなたを導いてくれる一冊となるはずだ。

文=柳洋

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