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【意外なデビュー秘話】上野千鶴子は公募23回落ちてもなぜ折れない?「ガラスの天井」を越える生き方のコツ

  • 2026.4.14

【意外なデビュー秘話】上野千鶴子は公募23回落ちてもなぜ折れない?「ガラスの天井」を越える生き方のコツ

人と同じでなくていい——その「違い」を力に変え、人生を切り拓いてきた女性たちがいます。華やかな経歴の裏には、誰にも見えない葛藤と、「ガラスの天井」を越えてきた確かな歩みがありました。医師・鎌田實さんが、女性ゲストの人生をあたたかく、軽やかにひもとく新刊『女の“変さ値”』(潮出版社刊)。今回は、その中から上野千鶴子さんへのインタビューの一部をご紹介します。

フェミニストとしての論壇デビュー

上野さんは短大のポストを得るまでにさまざまな公募に23回もエントリーした。そして、2年後にフェミニストとして論壇にデビューすることになる。1982年の『セクシィ・ギャルの大研究』(光文社)の刊行である。

「『セクシィ・ギャル』は大顰蹙(だいひんしゅく)を買いましたね。大学の外でやっていた日本女性学研究会というサークルでの研究成果を本にしたんですが、下ネタで売り出した若いネエちゃん研究者というレッテルを貼られてしまいました。

ただ、私は軟派(なんぱ)なものだけじゃなくて常に硬派な研究もやっていて、同年には『主婦論争を読む』(勁草書房)という本も出版しています。これも同じ研究会の成果を本にしたものですが、ブレイクしたのは下ネタのほうでした」

デビュー作によって、アカデミアよりも先に、メディアからの注目が集まったようだ。いろいろなメディアから注文がくるようになったが、その一方で学生の親からは短大にクレームが入ったという。あんな女性研究者を女子教育の教壇に立たせるとは何事か──。

しかし、学生たちは“親近感”を抱いたのか、上野さんの研究室にやってきては赤裸々(せきらら)な相談事を持ちかけてくるようになった。

「彼女たちは、本を読まないリアリストでね。『先生って本書いてはるんやって? うちのお母さんが言うてたわ』って、自分は読んでいないんです。

そんな彼女たちを相手に社会学の入門講座をやるためには、マックス・ウェーバーやマルクスの名前を出さずに社会学の面白さを伝えないといけない。それはもう、本当に鍛(きた)えられましたよ。あの子たちが今日の私をつくったと言っても過言ではないですね。感謝しています」

Profile 上野千鶴子さん

うえの・ちづこ●社会学者
1948年富山県生まれ。京都大学大学院社会学博士課程修了。東京大学名誉教授・認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。女性学、ジェンダー研究のパイオニアとして活躍。高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。著書に『おひとりさまの老後』(文春文庫)など多数。

二度経験した青天の霹靂

アカデミアの世界では、初端(しょっぱな)から「ガラスの天井」にぶち当たった上野さんだが、障壁を突破したと自らが実感したのはいつだったのだろうか。

「二度ありましたね。いずれも青天の霹靂(へきれき)でした。

一度目は、1993年に東京大学の助教授になったとき。仰天しました。話があったときには、京都精華大学の教員でしたから関西に住んでいましたし、東京に引っ越すというのは人生にとっても大きな変化でした。

もう一つは、2019年の東大学部入学式の祝辞を頼まれたときです。東大は2011年に退職していたので、来賓として登壇しました。声がかかったときは、何かの悪い冗談かと思いました」

上野さんは、2019年の東京大学学部入学式の祝辞で、日本の性差別について言及し、男女問わず幅広い世代に大きな反響を呼んだ。特に40代の女性の中には、祝辞を聞きながら嗚咽(おえつ)するほど泣いた人も少なくなかったようだ。祝辞の中では、次のようなことが語られている。

「フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」

Profile 鎌田 實さん

かまた・みのる●医師・作家
1948年東京都生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり、潰れかけた病院を再生させた。「地域包括ケア」の先駆けを作り、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導いた。現在、諏訪中央病院名誉院長、地域包括ケア研究所所長。チェルノブイリ原発事故後の1991年より、ベラルーシの放射能汚染地帯へ100回を超える医師団を派遣し、約14億円の医薬品を支援(JCF)。2004年からはイラクの4つの小児病院へ4億円を超える医療支援を実施、難民キャンプでの診察を続けている(JIM-NET)。東北はもとより全国各地の被災地に足を運び、多方面で精力的に活動中。べストセラー『がんばらない』他、著書多数。

※この記事は『女の“変さ値”』鎌田實著(潮出版社刊)の内容をウェブ記事用に再編集したものです。

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