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井上八千代さん、安寿子さん母娘が楽しむ「帝国ホテル 京都」|伝統とくつろぎの1泊2日

  • 2026.4.4
撮影=森山雅智

京都の花街・衹園甲部の中心地に、「帝国ホテル 京都」が今春、2026年3月5日に開業。

衹園の雅な伝統文化、京舞の担い手であり、帝国ホテルとも長くご縁のあるおふたりが、新しくて懐かしい、くつろぎの空間で1泊2日の滞在を楽しみました。

井上八千代さん、安寿子さん母娘が体験する
「帝国ホテル 京都」での21時間


● 1日目
15:00 チェックイン
15:30 お部屋でのんびり
16:00 プールでリフレッシュ
17:30 バー「ザ ルーフトップ」へ
18:30 フランス料理「練」でディナー

● 2日目
08:00 和の朝餉(あさげ)
12:00 チェックアウト

【1日目】

[15:00 チェックイン]

“「こうと」な趣の空間。日本建築のような掛け込み天井が素敵です”
──八千代さん

“おいしいお菓子とお茶をいただくと、心がほっと和みます”
──安寿子さん

まさに庭屋一如。掛け込み天井の傾斜が外のひさしへと続き、庭と一体となる空間。差し込む穏やかな光におふたりの表情も緩む。コンシェルジュデスクの背景は、杉本博司さん作《松竹図襖絵》。 撮影=森山雅智
宿泊者ラウンジで季節の和菓子を

エントランスの扉を抜け、ラウンジへ。和菓子とお茶をいただきながらチェックイン。京都の御菓子司「鍵善良房」または「末富」による特注品は口にしやすいサイズ。「細かなところまで行き届いた、いい大きさですね」と八千代さん。

[15:30 お部屋でのんびり

撮影=森山雅智

“きもので訪れたとき、畳のある空間は、心から落ち着けます”
──八千代さん

帝国ホテル初、畳のある客室

衹園町の空気が感じられる「北棟グランドプレミア」は、靴を脱いで上がるスタイルで、畳のある客室は帝国ホテルでは初めて。「ちょっと座れるというのが、やはり安心できますね」と八千代さん。

[16:00 プールでリフレッシュ

撮影=森山雅智
岡山・北木(きたぎ)島の巨石が映える空間

ダイナミックな北木石が迎えてくれる洞窟のようなプール。「本当に洞窟の中にいるようで、リラックスできました」と、安寿子さん。ウェルネスエリアにはプールほか、サウナ、フィットネス、スパトリートメントを完備。

[17:30 バー「ザ ルーフトップ」へ

清水寺や八坂神社、遠くには平安神宮の鳥居も見える。カクテルは、1924年に誕生、帝国ホテル初のオリジナルカクテル「マウント フジ」と、香り高い「柳桜園」製の抹茶を使用した京都版「マウント 比叡」。 撮影=森山雅智
伝統が息づくカクテルで、乾杯

古都を取り囲む山々と、遠く近くに灯る街の灯りを見渡せる特等席。「いつもと視線が変わり、知らなかった衹園の姿に出合えます」と八千代さん。歴史を受け継ぐカクテルとともに。3月下旬~11月下旬の営業。

[18:30 フランス料理「練」でディナー]

“カウンターで味わう、至福のフランス料理。シェフとの対話も醍醐味です”
──安寿子さん

「帝国ホテル」伝統のフランス料理に、京の季節感を添えて表現。壁面は東山から吹く風の揺らぎを映した左官職人・久住誠さんの作品。 撮影=森山雅智
二十四節気の移ろいをひと皿に

料理長・今城浩二さんによる料理を目の前で楽しめる、10席のみのカウンター。素材の色や香り、調理の技、そしてシェフとの対話まで堪能できるひととき。「お料理に合わせたペアリングも素晴らしい」と八千代さんも笑顔。

桜鯛のロースト。ズッキーニとうすい豆、香ばしい筍を合わせた春薫るひと皿。 撮影=森山雅智
徳島特産神山(かみやま)しいたけの最高級品「極」のロースト。マッシュルームと椎茸の軸のソテーを合わせたもの、風味豊かな亀岡牛の生ハム、さらにマッシュルームのスープを添えたスペシャリテ。 撮影=森山雅智

DATA
ディナーコース38,000円(サ込)
営業時間/17時30分~22時30分(20時30分L.O.)
定休日/日曜(祝日の場合は営業、翌月曜休み)
※個室もあり(~8名)

フランス料理「練」

【2日目】

[8:00 和の朝餉(あさげ)]

撮影=森山雅智

“「衹園川上」さんのお味が朝からいただけるなんて!”
──安寿子さん

衹園の名店の味を特別仕立てで

名割烹「衹園川上」が店舗同様に季節感と味、香り、彩りを大切に献立を作り上げた「和の朝餉」で、体に優しい目覚めを。「川上さんの朝食がいただけるのはここだけ」と、安寿子さん。


長く愛される帝国ホテルの洋食、薪窯料理を掛け合わせた、独自のメニューを味わえるオールデイダイニング「弥栄」。自然光が心地いい。 撮影=森山雅智

DATA
営業時間/《朝食》※宿泊者限定 6時30分~10時30分(10時L.O.) 《ランチ》11時30分~14時30分 《ティータイム》14時30分~17時30分 《ディナー》17時30分~22時(21時30分L.O.)
無休

オールデイダイニング「弥栄」

[12:00 チェックアウト]

撮影=森山雅智
ゆったりとした朝の出発

「朝起きてカーテンを開けた時、隣が稽古場であることを忘れていました」と安寿子さんが語るほど、館内は静かな別世界。チェックアウトは正午、朝も落ち着いて過ごせる特別な時間に。

“古の雅をいまに伝える衹園の町並みに新たな物語が始まりました”
──八千代さん

「弥栄会館」の一部壁面を残して再構築された建物。かつての面影を懐かしみつつ、新たな角度から楽しげに衹園を眺めるおふたり。 撮影=森山雅智

いのうえやちよ〇京舞井上流五世家元。観世流能楽師九世片山九郎右衛門の長女として京都・衹園に生まれる。75年八坂女紅場学園教師となり以降「都をどり」などを指導。15年重要無形文化財各個指定(人間国宝)に認定。

いのうえやすこ〇京舞井上流名取。五世井上八千代の長女。四世および五世井上八千代に師事し3歳で初舞台。15年より八坂女紅場学園教師。芸術選奨文部科学大臣新人賞、京都府文化賞奨励賞ほか受賞。

サービス第一を貫く帝国ホテル。真のくつろぎ、ここに

明治維新後の1890年、外国の賓客をもてなすために誕生した「帝国ホテル」。大正期、フランク・ロイド・ライトが手掛けた2代目本館には世界的な著名人が多数訪れ、以降国内外の文化交流の拠点として歴史を重ねてきました。

1933年には日本初の山岳リゾート「上高地帝国ホテル」、関西国際空港開港後の1996年には「帝国ホテル 大阪」が開業。時代のニーズに応えながら、130年以上にわたり守り継いできたのは、“メイド・イン・ジャパン”のホテルとしての風格と、日本の心を込めた上質なサービスです。そしてこの春、その歴史と伝統を継承し、未来に繫ぐ場として新たに誕生したのが「帝国ホテル 京都」です。

ホテルが位置するのは、京都にある五花街の一つ、衹園甲部の中心地。芸を磨き披露する場である衹園甲部歌舞練場の敷地内です。1936年に竣工、現在国の登録有形文化財となっている「弥栄(やさか)会館」の一部を保存活用し、再生することからこのプロジェクトが始まりました。

「弥栄会館」は、当時の芸妓・舞妓のお花代から建てられたもので、劇場建築の名手、木村得三郎(大林組)の設計による美しい建物は、優美な文化ともてなしの心を表した衹園の象徴といえるものです。

城の天守のように幾重にもなる屋根が町並みに溶け込んでいた「弥栄会館」。開業にあたり外観の一部やディテールを再生、「歌」印の瓦も受け継いだ。 撮影=森山雅智


内装と庭は「新素材研究所」が手掛けた。松明垣、井筒石など、見どころは多い。宿泊者ラウンジに配された多角形の家具は、榊田さんによるアールデコを意識したデザイン。 撮影=森山雅智


客室「弥栄スイート」のリビングルーム。ガラス扉の向こうは開放的なバルコニー。 撮影=森山雅智


「帝国ホテル」と衹園甲部、伝統と歴史を有する両者が協力するこの改築再生は、会館の一部外壁を残すことで景観が守られ、またレリーフや外壁タイルなど、当時の意匠や素材も盛り込まれています。

内装も同様に、古いものが新たな価値を生み出すという考えのもと、「時間と記憶の継承」「新旧の調和と対比」「歴史を語る素材と意匠」をテーマに、現代美術作家の杉本博司さんと、建築家の榊田倫之さんが手掛ける新素材研究所により進められました。

榊田さんは「真にくつろぎを与える空間は、木の香りがほのかに漂い、漆喰が湿度のバランスを保って快適さを持続させるなど、日本的な作法があってこそ」と考え、地、水、火、風、空を空間の中で体感することが大事と、設計において特に素材の構成に心を砕いたそうです。

館内には花街衹園だけでなく、ライトゆかりの大谷石をはじめ、「帝国ホテル」のレガシーも随所に顔を出します。「場所が紡いできた物語を継承し、未来へ繋ぐ役割でありたい」と坂田玲子総支配人は語ります。

フランク・ロイド・ライトが帝国ホテル2代目本館の内外装に多用した大谷石を京都でも使用。 撮影=森山雅智
本棟7階の「オールドインペリアルバー」は、フランク・ロイド・ライトが手掛けた通称ライト館の趣を伝えるバー。17時~24時の営業。 撮影=森山雅智


伝統への思いと高い美意識をもとに築かれたこの新しいホテルを、井上八千代さん、安寿子さん母娘が訪れました。

夫・観世銕之丞(てつのじょう)さんとの結婚披露宴をはじめ、毎夏の上高地への家族旅行など、「帝国ホテル」とは以前からご一家でご縁があったそうで、「来れば落ち着きますし、安心感があります」と信頼を寄せています。初めて訪れた「帝国ホテル 京都」でも、お客さまを大切にしようという気持ちを最初に感じたとか。宿泊者ラウンジも「灯りのつくり方、自然の光の入れ方が上手」と早速お気に入りです。

「帝国ホテル」初という畳敷きの客室「北棟グランドプレミア」では、おふたり揃ってくつろいだ表情に。「日本のものを大切にしながら新しいものを目指す、その在り方が生かされていてとても素敵ですね。帝国ホテルさんは各地にそれぞれのよさがありますから、ここでは京都ならではのものをつくり上げていただけたら」と、八千代さんは語ります。

宿泊者専用のルーフトップバーでは、いつもと違う視点から衹園の夕景を眺め、「意外に瓦屋根が残っているんやね」と発見も。「都をどり」が行われる4月は、通りに提灯が灯り、いっそう情緒が増します。ディナーは、カウンターで味わうフランス料理「練」へ。シェフの技や話を間近で楽しめるのが、「帝国ホテル京都」のスタイルです。

朝食は、名店「衹園川上」がプロデュースする体に優しい献立。朝もゆったりと時が流れ、おふたりにとってもひとときの休養となったようです。

「地元の日常を忘れるほど別世界でした」と安寿子さん。八千代さんは「特別でありながら、ごく自然に過ごせる。それがおもてなしなのかもしれません。衹園も日々の“こうと”な暮らし、つまり慎ましさや落ち着きがあっての花街です。ホテルも京都も、変わらないところと受け入れるところ、両方をもちつつ、ともに花を咲かせていければ」と。

外に出れば聞こえる三味線の音、京都の趣と暮らしがそばにあります。

井上さんご一家の大好物という帝国ホテルのブルーベリーパイ。開業に際し、八千代さんの念願が叶い、おちょぼ口でも食べられる小さなサイズが登場。3個1,620円。 撮影=森山雅智

帝国ホテル 京都

エントランス正面に配されたロゴ看板は、奈良の白馬寺・水分(みくまり)神社に自生していた樹齢約1000年の欅の一枚板で仕立てられている。 撮影=森山雅智

DATA
一泊食事なし1室料金164,500円~(サ込、宿泊税別)
IN 15時 OUT 12時 全55室
tel.075-531-0111(10時~17時)
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京都府京都市東山区衹園町南側570-289

帝国ホテル 京都

撮影=森山雅智 取材・文=大喜多明子 編集=吉岡尚美(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年5月号より

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