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17年前、“びしょ濡れ”の制服で演奏したガールズバンド。活動終了を発表した今、聴きたい「初夏のロックアンセム」

  • 2026.8.26
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2009年撮影、4人組のガールズロックバンド「SCANDAL」(C)SANKEI

2009年6月19日の『ミュージックステーション』。SCANDALは『少女S』を演奏しながら、全身びしょ濡れだった。演出として本当に水が降り、髪が張りつき、シャツが色を変えていく。それでも4人は演奏をやめず、笑っていた。テレビの前で見ていた側の記憶に残ったのは、曲名よりもまずその絵だった。

SCANDAL『少女S』(作詞:TOMOMI 作曲:田鹿祐一)ーー2009年6月17日発売

デビュー曲『DOLL』から8か月。あのとき「制服の女子高生バンド」という一行で紹介された4人は、この初夏、制服とは別の絵で覚えられ直すことになる。

ずぶ濡れでも演奏をやめなかった、という一枚の絵

『少女S』は2009年6月17日発売、メジャー3枚目のシングルである。発売2日後の生放送で、彼女たちはミュージックビデオ同様にずぶ濡れの演出を受けた。

ドラムのRINAはまだ17歳、TOMOMIとMAMIは19歳、HARUNAが20歳。その4人が、濡れて重くなった楽器を抱えたまま平然と演奏を続けている絵は、「制服」の記号よりずっと強く、バンドの体力を伝える。

デビュー時の一枚の絵が「まだ何にでもなれる4人」だったのに対して、この日の絵は「もう止まらない4人」だった。半年強で、伝わる情報が入れ替わっている。

歌番組ではなくアニメが、先に声を運んだ

もうひとつ、この曲の広まり方には当時らしい特徴がある。『少女S』がテレビから流れ始めたのは、CDが出るより前だった。

この曲はテレビ東京系アニメ『BLEACH』の10代目オープニングテーマで、オンエアは2009年4月14日から9月末まで。つまり発売の2か月以上前から、毎週、全国の子どもと10代がイントロを聴いていたことになる。SCANDALにとっては初のアニメタイアップで、初回生産限定盤には『BLEACH』描き下ろしのステッカーやポスターが封入された。

歌番組で顔を知り、そのあと曲を買う——という順序ではない。まずアニメの30秒で曲だけが記憶され、あとから「これを演奏しているのは制服の4人組だ」と顔が追いついてくる。2000年代の終わりに、アニメのオープニングがどれほど強い流通経路だったかを、この曲の伸び方はきれいに示している。

ミュージックビデオの作りも変わっていた。監督は品川庄司の品川ヒロシで、これが彼の初のMV監督作。次長課長・河本準一も出演し、さらに「あらびき団ver.」まで作られている。音楽番組・アニメ・お笑いの導線を同時に使う。いま見るとかなり手数の多いプロモーションだ。

26位から6位へ、数字が動いた

結果は数字にはっきり出た。前作『DOLL』のオリコン週間最高位は26位。それが『少女S』ではデイリー3位、週間6位まで上がる。チャートに13週とどまり、バンドは初めて「ヒット曲を持つバンド」になった。

そしてこの年の暮れ、SCANDALは『少女S』で第51回日本レコード大賞の新人賞を受ける。結成3年、メジャーデビューから1年2か月。城天(大阪城公園)の路上から始まった4人が、年末の大型音楽番組の席に座っていた。

曲そのものは、実はかなり凝っている。作詞はベースのTOMOMI。イントロ、間奏、アウトロにはベースのスラップが入り、単純な8ビートのガレージロックでは終わらせていない。10代の書いた歌詞に、演奏で見栄を張る余地をきちんと残してある。

「S」は、一人の少女ではなかった

タイトルの「S」について、レコード会社は「Girls=少女たち」の意味だと説明していた。一人の物語ではなく、複数形の「S」だ。

当時の紹介文には、こんな言葉が添えられている。「女性がたくましさを増している時代の中で、物怖じせずあからさまにぶつかっていく姿や、心の奥のすごくシンプルな想いを真っ直ぐに表現したロック」。宣伝文としては大きい言い方だが、Mステで水を浴びながら演奏をやめなかった映像を思い出すと、あながち外れてもいない。

『少女S』は、誰か一人の女の子の歌ではなく、そこで鳴らしている4人と、それを見ていた同世代のこと全部をまとめて指す「S」だった。

そのバンドが、2027年8月21日に終わる

あれから17年。SCANDALはメンバーを一人も入れ替えないまま活動を続け、2012年に日本武道館、2015年に初のワールドツアー、2023年8月には「同一メンバーによる最長活動ロックバンド(女性)」としてギネス世界記録に認定された。

そして2026年8月21日、結成20周年の記念公演を大阪城ホールで行った3日後の8月24日、公式サイトに「SCANDALから皆様へ大切なお知らせ」が出た。2027年8月21日をもって活動を終了する。声明で4人は「4人で出来ることの全てを"やり切った"と実感しています」と述べている。選ばれた言葉は「解散」ではなく「活動終了」。

最後の1年は『SCANDAL FINAL TOUR 2026-2027「SCANDALの47都道府県ツアー」』に充てられる。全47都道府県・全52公演、初日は2026年10月22日、そして最終公演は2027年8月21日の横浜アリーナだ。

濡れた髪で笑っていた4人のこと

いま『少女S』を聴くと、演奏はまだ少し硬い。それでもサビに入る瞬間の押し方は、17年後のライブでもそのまま通用する強さを持っている。

あの日のテレビに映っていたのは、水を避ける4人ではなかった。かけられたものをそのまま浴びて、そのうえで一音も落とさずに弾き切る4人だった。あれから17年、彼女たちは終わり方まで自分たちで決めて、最後の1年を47都道府県の移動に使うと言っている。

『少女S』の「S」が複数形だったことは、たぶん正しかった。あの曲を歌っていた少女たちは、そのまま20年、同じ4人で鳴らし続けたのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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