1. トップ
  2. 恋愛
  3. 舞台「十角館の殺人」&言式第4回公演「とるわよ!」に挑む梅津瑞樹が、ミステリ愛と劇作家として貫くテーマを語る!「難しい作品こそ、やる意義や演じがいがある」【インタビュー】

舞台「十角館の殺人」&言式第4回公演「とるわよ!」に挑む梅津瑞樹が、ミステリ愛と劇作家として貫くテーマを語る!「難しい作品こそ、やる意義や演じがいがある」【インタビュー】

  • 2026.3.30

この記事の画像を見る

数々のミステリ小説ファンを唸らせてきた綾辻行人の大人気小説『十角館の殺人』が待望の舞台化。主人公の島田潔を演じるのは俳優業のみならず、脚本家・演出家としてもマルチに活躍する梅津瑞樹。まもなく上演される自身の演劇ユニット・言式の最新作『とるわよ!』と併せて、この2作品に挑む今の思いをうかがった。

『十角館の殺人』は僕の推理小説好きの間口を広げてくれた作品

──傑作ミステリ小説『十角館の殺人』がついに舞台化されます。まずは、出演が決まったときの気持ちをお聞かせください。

梅津瑞樹さん(以下、梅津):『十角館の殺人』は僕にとっても思い入れの深い作品なんです。子どもの頃に初めて読み、ミステリ小説の間口を広げてくれた一冊でした。実際には、それ以前にも有栖川有栖さんの小説などを読んでいました。ただ、『十角館の殺人』では作中に登場するミステリ研究会のメンバーたちが、著名なミステリ作家の名前をお互いのニックネームにして呼びあっているんですよね。例えば、「カー」(※ジョン・ディクスン・カー)であったり、「エラリイ」(※エラリイ・クイーン)であったり。そうした名前を調べていくうちに、海外作品にも興味を持ち、たくさん触れるようになっていったんです。元々小説好きだった僕にとって、まさしく大きなターニングポイントの一つとなった一冊だと言えますし、時を経て、その作品の舞台に携わることができて本当にうれしいです。

──原作を書かれたのはミステリ小説界の巨匠、綾辻行人さんです。綾辻作品に触れたのも、この『十角館の殺人』が最初だったんでしょうか?

梅津:いえ、初めて読んだ綾辻さんの作品は『どんどん橋、落ちた』でした。僕の推理小説の遍歴をお伝えすると、小学生の頃に最初にハマったのが江戸川乱歩の明智小五郎シリーズでした。明智小五郎作品は推理小説というより冒険活劇に近いかもしれませんが、その後、有栖川さんの作品を知って、本格的な推理小説にのめり込んでいったんです。やがて、図書館や本屋さんでいろんな作家の作品を手に取っていくなかで知ったのが綾辻さんでした。『十角館』を読んだのは中学生のときでしたね。

──元々小説をよく読まれていたとお話しされていましたが、そのなかでも推理小説がお好きだったのでしょうか?

梅津:そうですね。なりたい職業を聞かれたら「探偵」と答えるぐらいには(笑)。ただ、リアルな探偵の仕事について調べていったら、そうそう殺人事件を解決するような場面にはでくわさないんだ、ということに気づきまして(笑)。それで、いつしか別の道を探すようになりました。

──『十角館の殺人』は多くのミステリ小説ファンの間で長く愛され続けている作品です。その魅力はどんなところにあると思われますか?

梅津:まず、これが綾辻さんのデビュー作ということに驚かされます。初めてとは思えないほど情景描写が緻密ですし、個性豊かなキャラクターたちが多く、群像劇にもなっている。物語もテンポよく進んでいくので、最初から最後まで一瞬たりとも飽きさせないんですよね。それに、なんと言っても一番驚かされたのが構成の巧妙さ。ラストに明かされる大どんでん返しは、ミステリ小説史に残るトリックと言っても過言ではないです。

たまに無礼だけど、理知的で魅力あふれる主人公になれば

──原作は一昨年にドラマ化されたものの、それまでは実写化不可能と言われていました。それほどのトリックを描いているだけに、今回の舞台も多くの関心が集まっています。

梅津:僕も最初にお話をうかがったときは、“どんな形で成立させられるんだろう?”と思いました。そもそも、作中に登場するミステリ研究会のメンバーたちは、十角形の建物の中に作られたいくつもの部屋に一人ずつ泊まっているんですね。それを、映像ならまだしも、はたして舞台でどう見せていくのか想像がつきませんし、密室のような緊張感や閉塞感をステージ上で表現していくのも、きっと簡単ではないだろうなって。

──たしかに。

梅津:でも、難しさがあるからこそ、やる意義や演じがいがあるとも言えます。思いきった演出に挑戦できるのも舞台の醍醐味ですし。……と、僕は今回、演出家でもないのに、一人でいろんなアイデアを考えては、好き勝手に妄想して楽しんでます(笑)。

──いち原作ファンとして、この舞台を心から楽しみにされているのが伝わってきます。

梅津:今はまだ稽古が始まる前(取材時)ですので、ホントそんな感じですね(笑)。それに、どんな舞台になるのか想像がつかないという意味では、僕と同じように原作のファンであったり、ラストまでの展開を知っている方でも、きっと小説とは違う感覚を味わってもらえるのではないかと思います。

──また、梅津さんが演じる島田潔は事件を追う主人公ということもあり、非常に人気のあるキャラクターです。現時点ではどのような人物像にしていこうと思われていますか?

梅津:実は、そこが今の悩みどころでもあるんです。というのも、つかみどころのない人物なんですよね。それでいて、頭の回転がよく、気づけば事件の真相に近づいていっているカッコよさもあって。

──飄々としつつ、でもどこか気になってしまう魅力がありますよね。

梅津:そうなんです。ともすれば、“それは不躾で、ちょっと失礼すぎるでしょ?”というようなことも平気で言ってしまう(笑)。ただ、彼の言葉には一つひとつに意味があるから、おっしゃるように、“この人は次に何を言うんだろう?”と期待してしまうところがある。そうした理知的な部分を出しつつ、観る人に魅力的に映るような人間性をお芝居で見せていければなと思っています。

──そして、その島田とバディとなる、通称こなん君(江南孝明)の役には小西成弥さん。どのような印象をお持ちですか?

梅津:小西さんとは面識があるものの、共演するのはこれが初めてです。ですから、どんなお芝居をされるのかとてもワクワクしています。島田と比べると、こなん君は大きなクセもなく、フラットなキャラクターという印象なんです。それだけに、島田とどんなバディ感を一緒に作り上げていけるのか、今から稽古が楽しみです。

──脚本・演出の中屋敷法仁さんとも初めてですか?

梅津:2020年に中屋敷さんが主催されたオンラインイベント(『中屋敷法仁プレゼンツ 即興監獄【エチュードプリズン】』)に参加したことがあります。ただ、コロナ禍ということもあり、ほとんど挨拶程度の会話しかできなかったんです。そのときは、不思議な空気感を持った方という印象がすごく残りましたので、今回、こうしてしっかりと一緒にお芝居を作れるのが楽しみです。

言式は、僕が普段から抱えている思想を具現化していく場所

──『十角館の殺人』の前には橋本祥平さんとの演劇ユニット・言式の第4回公演『とるわよ!』も4月からスタートします。こちらは前作『んもれ』から、わずか半年のスパンでの公演となりますね。

梅津:言式は2023年の旗揚げ以来、毎年一作ずつ公演をやらせてもらっています。これもひとえに、期待して待っていただいている方々がいるからこそできることで、応援してくださっている皆さんには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。特に今回は“大コメディ”と謳っていますので、存分に心から笑っていただけるものを提供できたらなと思っています。

──コメディに特化した内容にしようと思ったのは何がきっかけだったのでしょう?

梅津:前作の『んもれ』では、“生みの苦しみ”であったり、“はたして自分は何者なのか”といったことをテーマにしていました。僕自身が役者という存在になるまでの間にいろんな出会いがあり、ときには悩んだり、苦しんだりもしましたので、その実体験を作品に投影したこともあって、やや重たい内容になってしまったんです。もちろん、それがダメだったということではなく、今回はその反動みたいなもので、真逆にベクトルを振り、しっかりと新しいテーマ性を内包させながらも、たくさん笑えるものにしたいなと思ったんです。

──なるほど。『とるわよ!』というタイトルもいろんな深読みができそうです。

梅津:そうですね。本番をご覧いただくまで、自由に考察して楽しんでいただければと思います。ヒントとしては、キービジュアルでは橋本くんがカメラを持っていて、その横で女性的な雰囲気を漂わせている僕が立っているので、なんとなくそこから察していただければ、と(笑)。それと、今回はチャレンジの一つとして、全公演の配信も行う予定なんです。

──それはつまり、“配信=とる(撮る)”という意味合いを込めているのでしょうか?

梅津:それもあります。漠然とですが、「撮る側」と「撮られる側」、それに「見せたいもの」「見たいもの」「見られたくないもの」といった事柄もテーマに盛り込んでいきたいなと思っています。また、せっかく連日配信をするわけですから、毎日でも配信を見たくなるような仕掛けも考えています。

──それはとても気になります。梅津さんは言式で毎回、脚本と演出も担当されていますが、テーマはどういったところから考えていくことが多いのでしょう?

梅津:ひと言でいうと、僕の常日頃の思想を具現化していくという感じですね。例えば、生きていくなかで肩身の狭さを感じる瞬間って誰にでもあると思うんです。そうした瞬間を壺の中に収め、何年もかけて発酵させて、すごく味が濃くなったものを演劇として表現しているという感覚に近いかもしれません。

もっと分かりやすく言うと、僕は元々美術予備校に通っていて、メディアアートやインスタレーション的なアート作品を学んでいたんです。その頃から、“ただ単に美しいとかキレイだと思えるものを作ることに、どんな意味があるんだろう?”と考えることが多かったんですね。今でこそ、美しいものにはそれだけで価値や意味があるという考え方も理解できますが、それでも自分が作るものに関しては、当時から感じていた違和感や思想がテーマの根底にあり、それを物語として肉付けしていくという作り方をすることが多いです。

──ということは、今回の『とるわよ!』に関しても、ただ笑わせるだけの内容では終わりそうにないですね。

梅津:ええ。もしかすると、「大コメディと銘打ってるんだから、ただ笑わせてくれればそれでいい」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、それだと僕が作る意味がないと思ってしまう。先ほどのテーマ性についての話につながることですが、きっと誰もが、日常生活の中で心に傷を負ったり、忘れたふりをしているけど何度も襲ってくる痛みなんかを抱えて生きている。そういった痛みに対する答えを、お芝居を通じて、自分なりに出していきたいんです。そのことで、舞台をご覧になった方が、“そうか、こういう考え方なら自分も傷を受け入れて次に進めるかも”と感じてもらえたら、こんなに嬉しいことはない。自分が作る舞台では、いつもその気持ちを大切にして臨んでいますね。

取材・文=倉田モトキ 写真=金澤正平

スタイリスト:MASAYA(PLY)

ヘアメイク:白石恵梨

<公演情報①>

 ©︎綾辻行人・講談社/舞台「十角館の殺人」製作委員会
©︎綾辻行人・講談社/舞台「十角館の殺人」製作委員会

舞台「十角館の殺人」

◼公演期間

【横浜】 2026年5月10日(日)〜20日(水)

【名古屋】 2026年5月27日(水)〜31日(日)

◼劇場

【横浜】 横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール

【名古屋】 中日ホール

◼原作

綾辻行人『十角館の殺人』(講談社文庫)

◼脚本・演出

中屋敷法仁

◼出演

島田 潔 役 梅津瑞樹

江南孝明 役 小西成弥

エラリイ役 田村 心

ポウ役 皇希

カー役 益永拓弥

アガサ役 岡部 麟

オルツィ役 永田紗茅

ルルウ役 高野渉聖

ヴァン役 砂川脩弥

中村青司 役 中村誠治郎

◼公式サイト

https://jukkakukan-stage.com

◼チケットURL

https://l-tike.com/jukkakukan-stage/

<公演情報②>

 ©︎言式
©︎言式

言式「とるわよ!」

◼公演期間

2026年4月4日(土)~4月12日(日)

◼劇場

【東京】シアターサンモール

◼脚本・演出

梅津瑞樹

◼出演

梅津瑞樹

橋本祥平

◼公式サイト

https://genshiki.com/

元記事で読む
の記事をもっとみる