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支援制度はあるのに、困っている人が助かっていない現実…社会が家庭の悲鳴を見逃しているワケ【参議院議員 伊藤たかえ氏インタビュー】

  • 2026.4.14

「家庭の努力だけでは、もう限界。助けを求めても、声はどこにも届かない」子育てには、そんな場面がいくつもあります。家庭にとっては死活問題であっても、社会からみると見過ごされ、支援制度が追いついていない……そう感じる瞬間も少なくありません。
愛知県選出の参議院議員・伊藤たかえ氏は、ひとりの母として抱えた違和感を起点に、ヤングケアラーや内密出産など、制度の隙間に落ちてしまいやすい――社会の中で少数派になりやすく、声を上げる人が多くないために可視化されにくい――課題を政策につなげてきました。

日々の「困りごと」は、どうすれば政治の議題となり、具体的な制度となって動き出すのか。「どうせ言っても変わらない」と諦めるのではなく、政治というツールをどう使いこなせば、社会の「詰まり」を解消できるのか。その現実的な道筋を、伊藤氏の言葉から探ります。

「我がこと」から始まる政策 見えにくい困りごとを見える化する

ーー議員になりたてのころ、議員活動と子育てを両立されるなかで、特に大変だったことは何でしたか?

伊藤たかえ議員(以下、伊藤):正直に言うと、疲れ果てていました。お熱で一睡もしない乳幼児2人を夜中にあやしながら、数時間後に始まる委員会で大臣と一問一答するための原稿を書き、病児保育の空きを探す。「あぁもう詰んだ」と感じることの連続です。

子どもが小さいと、時間に追われるだけでなく気持ちの余裕もなくなり、果ては子どもに寂しい思いをさせているという罪悪感にも苛まれます。さらに政治活動という仕事の性質上、さまざまな立場や意見と向き合うなかで、批判されたり、待ち伏せされたりするなど、家族の安全に関わるリスクも少なからずありました。

そうした経験があるからこそ、育児中は日々の生活に精いっぱいで、支援を探したり、声を上げたりする余裕がないことを骨身にしみてわかっています。支援制度が存在していても、時間的・心理的な余裕がなければ、そこにたどり着くこと自体が難しい……。

加えて、制度が想定していない“ちょっとした生活のつまずき”はたくさんあるのに、当事者たちがひとかたまりになって声を上げることができないので、その課題は存在しないことになってしまい、課題は課題であり続ける。これは個人の責任ではなく構造的なバグです。

私が、たった1つの声の中に普遍性を見出し、定性定量データ(生の声と全体を示す数字)を集めて政策をつくることにこだわっているのは「個人的なことは政治的なこと」だと信じているからです。

ーー実際に、現場の声から生まれた政策として、たとえばどんなものがありますか?

伊藤:たとえば、ヤングケアラー(※1)や内密出産(※2)は、どちらも家庭の中で起きるため、周囲の人間が把握しにくく、制度の隙間に落ちやすい社会課題です。加えて、当事者たちが、自分が支援対象であると気付かない、またはスティグマ(社会的な差別や特別な目で見られることへの不安)があって相談できないといった現実があります。

※1:育児や介護、通訳や障害のある兄弟のケアなど、本来大人が担うと想定されていることを日常的におこなっている子ども・若者のこと
※2:望まない妊娠や困難な事情を抱えた女性が病院の担当者にだけに身元を明かして出産する仕組み

ーー相談しようにも窓口が分かれていて「困っていることを、どこに言えばいいのか」が見えづらいという指摘もありますよね。

伊藤:ヤングケアラーがまさにそうで、子どもたちは市役所に相談に行く知識も時間も交通費もありません。支援する側から積極的に働きかけ、施策を届けることが必要です。

2024年6月に、ヤングケアラー支援法が成立したことで今ようやく、学校というタッチポイントから行政の支援に繋げるための取り組みが全国で始まっています。

私がヤングケアラー問題に取り組んでいる理由の1つが次女の存在です。彼女に耳の障がいがあるかもしれないと告げられたとき、まず次女の将来が心配になりました。同時に、長女のことも頭に浮かびました。

親の関心が、ケアが必要な兄弟に向いてしまうことで、障がいや病気のある兄弟姉妹がいる子ども、つまりきょうだい児が寂しい思いをしたり、当たり前のようにケア労働の一端を担ったりすることの是非は、以前から議論がありました。

家族の状況がどうであっても、子どもには子どもらしい時間を過ごしてほしい……、親としての切なる願いがあるので、「我がごと」であるヤングケアラー問題については、国会で繰り返し問題提起し、実態調査の必要性を訴えてきました。まず見える化しないと、支援の必要性の判断もできませんから。

伊藤:内密出産も同じです。困りごとの声を届ける窓口があっても、そこにたどり着けない人たちがいます。母子手帳を取りに行くことすら難しく、誰にも相談できないまま、妊娠や出産の不安を一人で抱え込んでしまうでしょう。

そうなると、母子ともに危険な状況になりやすい。だからこそ、諸外国にあるような、匿名であってもまずは医療的介助のある安全な出産ができて、その後の支援にもつなげられるような“仕組み”が欠かせないと思っています。

命を繋ぐ最前線の医療現場では、法律の解釈がはっきりしない部分をリスクとして抱きしめたまま、ぎりぎりで母子を支えています。「どこまでできるのか」「どのような手続きが必要なのか」が曖昧だと、医療側も慎重にならざるを得ず、結果的に受け皿になる施設は増えません。

だから立法府は見て見ぬふりをせず、ガイドラインや法整備で道筋をつけていくべきだと歴代の総理に問い続けてきました。母子の命を守るセーフティーネットを、限られた受け入れ拠点に頼るだけでなく、全国で機能する形にしていく必要があります。そのために必要な「内密出産法」を、私は残された任期の中で必ず立法するつもりです。

与野党を超えてつくる!ママ・パパのための支援

ーーいまのお話を聞いて、ママとしての経験も政策の出発点になるのだと感じました。当事者の声を、党派を超えて政策にすることや、子育て中でも議員が働き続けられる環境をつくるため、「超党派ママパパ議員連盟」を立ち上げられたそうですね。

伊藤:政治家は、時間も不規則で会食も多い、休みをとるのもはばかられる滅私奉公の職業です。しかしそんな、マッチョで、がむしゃらに頑張れる人だけが続けられるフォーマットのままだと、担い手は増えません。子育て中でも政治家として働けるよう、選挙活動や政治活動の“新しい当たり前”をつくっていく必要があります。

政策のみならず、そんな後進に道を拓く議論もする仲間が欲しいと思って立ち上げたのが『超党派ママパパ議員連盟』です。子育て当事者でもある議員たちが集まり、子ども子育て政策の推進や、現役世代の議員を増やすための活動をしています。

子育ての課題を「個人的な事情」ではなく「政治の中心課題」とするために、すべての政党すべての議員に参加を呼びかけ、現在100名弱の衆議院議員・参議院議員が参加しています。

超党派の議員が声を持ち寄り、それが議題となり、実装へとつながっていく流れを可視化することで、「声を上げれば社会が動くかもしれない」「政党が違っても想いを共有する人たちがいる」ことを知ってもらいたい。

政治参加は何も政治家になる事だけではなく、私たちにお手紙やSNSで、“たった1つの声”を届けて下さるのも政治参加です。そうした“関わる道筋”をつくり、実際に“変わった体験”をしてもらうことで初めて、政治と暮らしが繋がっていることを実感してもらえるのだと思います。

ーー超党派ママパパ議員連盟の活動のなかで、「これは象徴的だな」と感じる取り組みはありますか? 具体例を教えてください。

伊藤:2018年当時、まだ発売されていなかった乳児用液体ミルクの流通に向けて活動したことや、2022年に母子手帳の内容や役割を時代の変化に合わせて見直し「令和の母子手帳」にアップデートしよう呼びかけた活動は、国会議員のみならず、地方自治体議員も巻き込んで動いた点も含め、象徴的かもしれません。

母子手帳は、妊娠がわかったときに手にするところから始まって、健診や出産、その後の子育てまで、ほとんどの人が使い続ける“共通のツール”ですよね。だからこそ、そこには「困ったときに相談にいく場所」が明記されていたほうがいいし、記録を通じて「困っていること」のアラーム機能があったほうがいいのではないかと考えました。

私自身、母親になってから初めて知ったことがたくさんあります。たとえば「こんなに寝られないんだ」とか「乳腺炎ってここまで痛いんだ」とか、ホルモンの乱高下による感情の起伏にも、産後の抜け毛にも、かなり動揺しました。

赤ちゃんのお世話で睡眠不足になり、心身が削られていくのに、頼れる人は近くにいない。これは困りごととして声を上げてもいいものなのか、どこに相談したらいいのか、何をどこまで“支援”してほしいのか、自分自身の気持ちを整理することすら煩わしかったのを覚えています。

こういった不安や孤独は当事者にならないとわからないのに、子どもが少し大きくなり、その苦しみから解放されると途端に忘れてしまう。子ども子育てに関する社会課題は“当事者が毎年入れ替わる”ため顕在化しにくく、だからこそ政治課題になってこなかったのかもしれません。

これまでの母子手帳は、赤ちゃんが生まれるまでは「母体管理手帳」、赤ちゃんが生まれた瞬間からは「子どもの成長記録手帳」になり、産後の母親の心身の変化や、保育する人の睡眠不足といった“親の側のしんどさ”は、十分に扱われてきませんでした。

母子手帳が記録媒体に留まらず、困りごとが可視化され、支援につながる「入口」として機能するようにしたいとの想いから、超党派ママパパ議員連盟では、当事者や医療従事者、自治体や支援団体など、現場の声を聞きながら、産後ケアや睡眠といった、保育者に関わる項目を加え、健診等の場で自然に話題にできるよう提案しました。

こうした個人の実感を、制度に反映させるためには国会内の手順やタイミングも大切で、超党派だとその知恵も集まりやすいのです。

ーー母子手帳の話を聞いていても思うのですが、子育ての困りごとはたくさんあるのに、支援につながりにくかったり、「あっても十分に機能していない」と感じてしまったりする場面が少なくありません。なぜそう感じてしまうのでしょうか?

伊藤:今ある制度には「現場で本当に起きている困りごと」を順次反映する仕組みが備わっていないからではないでしょうか。子育ての課題のほとんどが家庭の中で生まれるので、外からは見えにくいんです。毎日の生活がうまく回らない中で、声を上げる余裕はなく、相談や困りごとが具体的な数字や実態として顕在化しないでしょう。

また、行政も現場に足を運んでまで調査をしません。

その結果、行政は、「どこで、何が、どれくらい困っているのか」を正確につかめないので、制度の見直しが後回しになったり、的外れな改善がおこなわれてしまったりします。当事者たちが「助けてほしいのに制度がない」と感じる“空白”が生まれる理由はそこにあります。

また何より、相談に行っても窓口が分かれていて、たらい回しにされてしまいます。ネットで検索しても情報過多で疲れてしまうことも挙げられるでしょう。そうなると当事者にとっては、支援制度は「ないのと同じ」です。

ーーその“たりない部分”を埋めるために、伊藤さんご自身は普段どのように現場の声を集めて、政策につなげているのですか?


伊藤:ママ友だちなどの身近な人はもちろん、町の人の生の声に耳を傾けるようにしています。Xを使って意見を集めたこともあります。

先日は、いじめの問題をもうこれ以上放置できないと思い、Xに投稿したところ、想像以上の数のDMが届きました。具体的な困りごとや、「どこに相談して、何と言われたか」といった生々しい経緯もたくさん寄せられました。

私は、こうして集まった現場の声から「どこが詰まっているのか」の仮説を立て、「その詰まりが解消できるのは国会なのか?県議会なのか?市議会なのか?」を整理します。

ただ「大変なんです」という声に寄り添うことだけで終わらせない。さらに、課題を抱えた当事者の声(定性データ)のみならず、AIを使ってSNSや党に寄せられた声を広く集めます(定量データ)。

その上で、省庁や自治体の担当者、学校関係者、医療や福祉の現場やNPOなど、立場の違う人たちからも話を聞いて「いまの制度はこのままでいいのか?」「変えたほうがいいなら、どのように動くのが適切か?」を言語化して、超党派の仲間に相談します。もちろん地域によって状況が異なるので、複数の声を重ねることも意識しています。

法律をつくるのは決して簡単ではありません。しかし、法律を作る国会で働いているのは衆議院議員・参議院議員合わせて713人です。この中に1人でもよいので、捨て置かれている課題を“見える化”し、国会内で地団駄し続ける議員がいれば必ず、地殻変動は起きます。

もちろん、法律をつくって、困っている当事者の課題を解決するには、理念だけではたりません。予算と人員を確保するための根拠法と、当事者に支援を届ける自治体の制度設計の両方があって初めて当事者のもとに支援が届きます。

私は法律をつくった後、現場でどうなっているかまで見続けていくことを自分に課しています。

また、政治家に声をかけたりフォローしてDMを送ったりする行為にハードルを感じてしまう人は多いかもしれません。しかし、1つのDMが政治家を動かし、制度をつくることがたしかにあります。1つの声には力があるということをいろいろな場所で伝えています。

「いじめ対策」と「18歳の壁」現役世代の親を悩ます2つの課題

ーー当事者の声を聞いて終わりではなく、「どこでつまずくのか」「現行の支援制度に課題はないか」をたしかめながら、一貫して生活者目線で設計していくことが大切なんですね。そういう視点から2026年の今、優先して取り組むべき課題は何ですか?

伊藤:数限りなくありますが、まずは「いじめ問題」にこれまでとは違うアプローチで取り組みたいと思っています。いうまでもなく、いじめは被害者の心を砕き、時に命まで奪う許されない行為です。

現役世代の親の多くが、子どものいじめ問題に悩んでいます。“からかい”が“いじめ”に発展する前に大人が介入することが必要だとわかっていても、学校という閉じられた空間の中で起こっている事件を察知するのは難しく、今はSNSが当たり前の時代なので、放課後もトラブルが続いてしまい、逃げ場がありません。

いじめの厳罰化は当然ですが、同時に加害側の子どもを「罰して終わりにしない」という視点も欠かせません。いじめをしてしまう子にも、背景にしんどさや孤立、家庭や学校でのつまずきを抱えていることが少なくないのです。

加害に至った子がどんな問題を抱えていたのかを整理し、解決しないと、問題行動は形を変えて繰り返される危険があります。被害者側を守ることと、加害者側を立て直すことは、どちらかではなくセットだと思っています。

これまでのように、「学校のことは学校で何とかして」と任せるのは、もはや限界を迎えています。小中学校のいじめの認知件数は2023年、71万1,633件になりました。約10年で4.1倍、暴力行為の発生件数は10万3,626件で2.2倍です。

教室の中にいる被害者と加害者、双方の学ぶ権利を守り、主張の食い違う保護者の敵対を解消するための専門的な介入をする、それを教員不足が深刻で多忙を極める学校現場に任せられるとは到底思えません。

いじめに関する通報先や相談先をはっきりと明示し、外部の専門家と連携できるルートを作り、いじめを即時停止させる行政的アプローチと、人間関係を再構築する教育的アプローチを同時に実践する必要があります。

ーーほかにも、子育て世代の声の中で「このままだと問題が深刻化する」と感じている兆しがあれば教えてください。

伊藤:「18歳の壁」について、ご存知ですか? 18歳を境に、支援制度や窓口がガラッと変わり、本人や家族の負担が増えることが数多くあります。困りごと自体は変わらず続いているのに、制度の側が「子ども」と「大人」を線引きしてしまっています。

特に障がいのあるお子さんを育てているご家庭だと、これは本当に切実な問題で、これまでは、学校や放課後等デイサービスに通っていた子どもが18歳になると居場所を失い、ケアをするために保護者が仕事を辞めたりする事例が後を絶ちません。

障がいのある子どもより先に逝く親たちは、先立つものを遺したいからと、今日も一生懸命働いています。それなのに障害児福祉に所得制限があったり18歳の壁に阻まれて働けなくなったりするなんて、どう考えても理不尽です。

医療・福祉・教育・就労……これらはもともと、それぞれ窓口も法律も違います。その上、18歳になると、その多くが「子ども向けの制度」から「成人向けの制度」へと一斉に切り替わるんです。

困りごとはずっと続いているのに、制度のほうがわかれてしまうので、結果として「支援につながり直せない」という事態が起きてしまいます。そうならないように、年齢で分断せず、必要な支援が切れ目なくつながる形に変えていくことに、誰の異論もないはずです。

♢♢♢♢♢♢

「困っているけれど、声を上げたところでどうせ何も変わらない」——。


子育てをしていると、そうやって諦めてしまいそうになる瞬間が誰にでもあるはずです。しかし、伊藤たかえ議員のお話から見えてきたのは「私たちが抱く日々の違和感こそが、社会を動かすスイッチになる」という希望でした。

大切なのは、困りごとを自分一人で抱え込まず、言葉にして“見える形”にすること。SNSでの発信や自治体への相談など、そうした小さな一歩が積み重なって「現場の実態」となり、制度を動かす大きな力へと変わっていきます。

政治は遠くにある仕組みではなく、私たちの生活のすぐ隣で生まれ、暮らしを守るために編み直されていくものです。日々の違和感に目を向けることが、その最初の一歩になります。

ベビーカレンダーはこれからも子育てをする中で感じる「言葉にならないモヤモヤや違和感」を受け止め、社会へとつないでいく架け橋でありたいと願っています。

ベビーカレンダー編集部

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