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峯田和伸×若葉竜也、伝説映画から受け継がれた表現者のバトン【映画『ストリート・キングダム』インタビュー】

  • 2026.3.27
(左から)峯田和伸、若葉竜也 クランクイン! 写真:上野留加 width=
(左から)峯田和伸、若葉竜也 クランクイン! 写真:上野留加

監督・田口トモロヲ、脚本・宮藤官九郎という『アイデン&ティティ』の伝説的タッグが再び実現した映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』で、かつての自分を投影するかのような若き表現者を見守る男を演じた峯田和伸と、時代の鬱屈を歌声に乗せる主人公を演じた若葉竜也。世代を超えて響き合う2人が、作品への覚悟と表現者の幸福について語った。

【写真】峯田和伸×若葉竜也 世代超え響き合う2人を雰囲気たっぷりに撮影(13枚)

■『アイデン&ティティ』から受け継がれた表現者のバトン

本作は1970年代後半から80年代前半、東京のライブハウスシーンを席巻したムーブメント「東京ロッカーズ」を背景に、実在のパンクバンド「LIZARD」のモモヨらをモデルにした若者たちの葛藤を描く。伝説の映画『アイデン&ティティ』の制作陣が再結集し、時代を超えて共鳴する表現者の衝動を鮮烈に映し出す。

――田口トモロヲ監督と宮藤官九郎さんという座組への参加が決まった時のお気持ちを教えてください。

峯田和伸(以下:峯田):僕がお芝居を始めるきっかけが、お2人の『アイデン&ティティ』でした。またこの組み合わせで久しぶりに作品をつくるということで、生半可な気持ちでは現場に入れないなと思っていました。撮影現場に入ってからは過去を意識しすぎず「今の作品」をしっかり全うしようと思いましたが、共演した若葉くんたちからも、この田口組でやるからにはという強い覚悟が伝わってきて、非常にピュアで良い空気感でした。

若葉竜也(以下:若葉):僕は『アイデン&ティティ』があったから今、俳優をやっているという感覚があるので、相当な思い入れで挑みました。自分自身にも作品にも絶対に嘘があってはいけないという覚悟でインしました。

――若葉さんは、今回ご自身がボーカルを務める役だと知った時はどう感じましたか。

若葉:「俺が歌うんだ、峯田さんは歌わないんだ」と(笑)。「マジっすか」と思いましたが、そこである種の覚悟が決まりました。四の五の言っていられないなと。

――憧れの田口組での撮影体験はいかがでしたか。

若葉:特別な時間でした。宮藤さんの脚本を土台に、現場で役者同士が化学反応を起こして、ライブのように練り上がっていく。台本を超えて「嘘じゃない」瞬間がいくつも散りばめられていました。それは本当に素晴らしい体験でした。

■現代の若者の怒りをまとう「亡霊」としての役作り

――実在の人物をモデルにした役を演じる上で、意識されたことはありますか。

若葉:当時の懐かしさを描く回顧主義の映画ではないので、モノマネではなく、どこまで自分が戦えるかという点に集中しました。僕が捉えたモモという人物は、現代の若者のフラストレーションや怒りを一身にまとった「亡霊」のようなイメージです。本気で物を作っている人間につきまとう寂しさや悲しさを抱えた存在として演じました。

――峯田さんは、原作者である地引雄一さんをモデルにした役を演じていかがでしたか。

峯田:地引さんのことは意識しつつも、現場で起きる感情を優先しました。かつて『アイデン&ティティ』では悩む側だった僕が、今回はもがいている彼らを見守る立場になった。「自分もバトンを渡せる立場になってしまったんだな」という感覚はすごく新鮮で、不思議なものでした。

――かつての自分に近い役柄を見守る側に回ったことで、心境の変化はありましたか。

峯田:『アイデン&ティティ』撮影当時はとにかく必死で、自分でも手応えがあったかどうかよく分かっていなかったんです。でも、月日が経って若い表現者たちから「あの作品が僕にとって最高なんです」と言われることで、ようやく自分のやってきたことを肯定できました。今回、若葉くんや間宮(祥太朗)くん、太賀くんにしろ、みんなが強い熱量を伝えてくれる。彼らにバトンを渡せるというのは、感慨深いものがありますね。

■時代を超えてリンクするパンクの衝動と「本物の出来事」

――劇中のライブシーンは非常に生々しく描かれていました。撮影を振り返っていかがですか。

若葉:時代は違えど、感覚は現代なんです。自分たちが今抱えている憂鬱や、ものを作る上での弊害をフルにぶつけました。ラストのラジカセを聴くシーンなどは、台本には「泣く」なんて書いてなかった。峯田さんの目線や声に体が震えて生まれたもので、お芝居というより「本物の出来事」に近い感覚でした。僕自身、最近の環境の変化に対する葛藤があったので、セリフの一つひとつが肉体的な叫びになりました。

峯田:いちロックファンとして、当時の渋谷「屋根裏」や新宿「ロフト」を再現したセットには興奮しました。客がタバコを吸いながら斜に構えて見ている中で演奏が始まる空気感。僕は当時のパンクをリアルタイムで見たわけではないですが、撮影を通して追体験できました。「はい、カット」となった瞬間に、エキストラの方々から自然と拍手が起きたのは、まさに日本でパンクが鳴った瞬間を体験できたようで最高でした。

――峯田さんご自身のバンド活動の記憶と重なる部分はありましたか。

峯田:僕がバンドを始めた90年代後半の西荻窪などの景色と地続きだと感じました。フリーペーパーを作る奴がいて、チラシを配って……。昔を題材にしていますが、かつて対バンしていたバンド仲間の顔が浮かんでくるような、今の自分たちにもつながっている映画だと思いました。

――若葉さんは、ボーカリストとしての役作りにどう励みましたか。

若葉:めちゃめちゃ緊張しました。オフィシャルの練習だけでは間に合わないと思い、バンドメンバー役の吉岡(里帆)たちと自分たちでお金を払ってスタジオを借りて練習を重ねました。自分たちで能動的に動かなければならないという衝動に駆られた、あの時間は大切でしたね。

■有名になることと幸福度「全く上がっていません」(若葉)

――劇中では知名度が上がることによる変化も描かれます。率直に伺いますが、有名になることで幸福度は上がりますか。

若葉:僕個人の意見としては、幸福度は全く上がっていません。自分のスタイルに対して、身の丈に合わないことをしているなと思う瞬間もあります。ただ一方で、自分の知名度が上がることで幸せになる人たちもいる。今はその狭間にいるという感覚がすごく近いです。

――その中で、何を大切に活動されているのでしょうか。

若葉:作品作りは心身をすり減らすので、「これならすり減ってもいい」と思える作品じゃないと参加する勇気が出ません。今回の『ストリート・キングダム』に関しては、今まで自分が開けてこなかったものを開けて戦わないと勝負にならないと思いましたし、全部のキャリアなんて捨ててもいいと思って挑みました。

峯田:僕も、東京ドームでライブをやって、いい車に乗るというような「バンドドリーム」は、ハナから求めていなかったのかもしれません。それがかっこいいという主義があるわけでもなく、いろいろなタイミングで選んできた結果、自分の性分を含めて「これしかできねえんだよな」という感覚でずっとやってきました。

――「パンク」という言葉で定義づけられない、お2人の剥き出しの表現が詰まった作品になりましたね。

若葉:カテゴリーに分けられることは、表現者として邪魔だと感じることがあります。でも、僕らは「対岸の火事」ではなく、あなたたちと同じ人間としてここにいる。それをこの映画を通じて感じてもらえたら嬉しいです。

峯田:当時のシーンにいた人たちも、きっと「そうじゃねえんだよな」という違和感を抱えながら、それでも鳴らさずにはいられなかったんだと思います。その熱量が、今の時代にも届くことを願っています。

伝説の『アイデン&ティティ』から時を経て、受け継がれた表現者のバトン。峯田和伸と若葉竜也が語ったのは、名声や定義に囚われず、「自分」を鳴らし続けることの厳しさと尊さ――。時代やジャンルという枠組みを超え、剥き出しの感情をぶつけ合う2人の魂の共鳴は、きっと現代を生きる人の胸にも熱く響くだろう。(取材・文:磯部正和 撮影:上野留加)

映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は、3月27日より全国公開。

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