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【考察レビュー】BTSのカムバックライブ「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」から読み取れる10のこと

  • 2026.3.25
「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」Netflixにて独占配信中

3月20日(金)にリリースした5thアルバム『ARIRANG』で、約3年9ヶ月ぶりに完全体で活動を再開したBTS。アルバムリリースを記念して、3月21日(土)に韓国ソウル・光化門広場一帯でカムバックライブ「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」を開催。その模様はNetflixで世界独占ライブ配信された。

Netflixが単一アーティストの公演を生中継するのは今回が初めて。NFLスーパーボウルのハーフタイムショーなどを手がけたハミッシュ・ハミルトン氏がステージの演出を手掛け、グローバルイベントに相応しい圧巻のパフォーマンスを披露した。さらに3月27日(金)には、LAで行ったアルバム制作に密着したドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』がNetflixで世界独占配信される。

そこで今回は、オフィシャルブックなどの翻訳を手掛け、現地でカムバックライブを観た桑畑優香さんが、ライブから読み取れる10のことを考察レポート。光化門という舞台や韓服の要素を取り入れた衣装、ステージやセットリストに込められた思いまで、27日に公開されるドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』や制作陣がこれまでに語った言葉を基に紐解いていく。

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1.「アリラン」に託された、BTSの再出発

BTSが約3年9ヶ月ぶりの完全体復帰を告げるアルバムに冠したのは、韓国の魂とも言える民謡「アリラン」。作者不詳のまま数多の旋律と歌詞を生み、ユネスコ無形文化遺産にも登録されたこの歌は、歌い手の経験や思いによって意味を更新し続ける。

本作がモチーフとしたのは、1896年にアメリカで初めて「アリラン」を録音した若い韓国人の留学生たちの実話。ドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』では「グローバルスターではなくて普通の韓国の男の子なんだ」と思いを明かすBTS。自らのルーツを再確認しながら、普遍的な「人生への愛」へとその調べを昇華させた。

アルバムのアニメーション・トレーラーが投げかける「What is your love song?」という問いは、伝統を個人の物語へとつなげる、新章の幕開けを象徴している。

2. 記憶が交差する、光化門という舞台

「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」Netflixにて独占配信中

ソウルの中心部に位置し、旧朝鮮王朝の正宮・景福宮の正門としてたたずむ光化門。ここは、1960年代の学生運動から近年の民主化集会に至るまで、常に市民が自らの手で未来を切り拓くために集った“対話の広場”。

事前ブリーフィングでHYBEのユ・ドンジュAPAC代表は、「アイコニックな場所で、国籍を超えた人々が共に乾杯し、高揚感を分かち合う。この希少な文化的体験をグローバルに共有することこそが、真の意義」とこのライブが描くビジョンを明かした。

伝統的な美しさと現代のビル群が交差するロケーションは、まさにK-POPという枠組みを超え、文化のスタンダードを築き上げる彼らの立ち位置そのものを体現している。

3. 伝統と多様性が融合したオープニング

午後8時。地響きのような歓声が上がり、重厚な伝統音楽風のメロディーが鳴り響く中、光化門の前に現れたのは、黒い衣装に身を包んだダンサーたち。両手を腹部の中央よりやや上で組み、厳かにゆっくり前に進む様は、時代劇でもおなじみの、宮廷で臣下たちが歩く時のポーズ。多様な人種のダンサーたちが、その所作を揃えながら列をなし、広場をひとつの儀式空間へと変えていく。

両側に去ると奥からBTSのメンバー7人が登場。「アンニョン ソウル、We are back!」RMの言葉を合図に、会場は一気にライブの熱狂へ。

4. 国立国楽院と編み上げた「アリラン」

「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」Netflixにて独占配信中

最初の曲「Body to Body」は、5thアルバム『ARIRANG』の1曲目でもある。2000年代のポップラップを彷彿とさせる力強いビートが序盤を盛り上げ、後半部では民謡「アリラン」のサンプリングが。「アリラン」を合唱と国楽器で奏でたのは国立国楽院の民謡団員ら13人。

国立国楽院民俗楽団のユ・ジスク芸術監督は、「公演で披露されたアリランはアルバムとは異なり、完全に新しく編曲されたものだった」「BTS側には国楽に詳しい専任プロデューサーがいて、望むアリランのスタイルを非常に具体的に注文してきた。それに合わせる中で、シンコペーションを取り入れた洗練されたアリランが誕生した」と明かした。

5. 巨匠ハミッシュ・ハミルトンが設計した、世界基準のスペクタクル

「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」Netflixにて独占配信中

この公演の演出を手掛けたのは、ロンドン五輪開会式やスーパーボウルなどを手がけてきた世界的演出家ハミッシュ・ハミルトン。「alien」の群舞や「FYA」の躍動感あふれるカメラワークは、ハーフタイムショーやコーチェラのステージを彷彿とさせるダイナミズムを備え、ライブに欧米的なスペクタクルを見事に融合させた。

直前には本人がInstagramに「ごく稀な機会に参加できてとても光栄です💜」と投稿し、ARMYの間で話題に。

6. 新たな始まりを告げるゲート型ステージ

「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」Netflixにて独占配信中

視覚的な核となったのは、巨大なゲート(門)型ステージだった。Netflixの担当者によると、光化門を額縁に収めたような3層に重なるゲートのモチーフは、韓国国旗「太極旗」を飾る「乾坤坎離」。赤と青を多用したライティングも相まって、ステージ全体が巨大な旗のようにも見える。そして、赤はアルバムが掲げる「Love song」の愛の色にも重なり、青はタイトル曲「SWIM」のミュージックビデオに登場する大海原を想像させたりも。

ハミッシュ・ハミルトンは、「ここはアーチでありフレームでもある。物語の始まりであり、一つの章の終わりであり、同時に新たな始まりを告げる場所」と意図を明かしている。

7. 英雄、詩人、先駆者。「ソンジオ」の衣装が物語る7人のペルソナ

衣装を手がけたのは韓国ブランド「ソンジオ(SONGZIO)」。ニューヨーク・タイムズのインタビューで、韓服の要素を取り入れつつ現代的に再解釈したと語る。コットンやリネンを用いた手織り素材には、山水画の筆致を思わせる質感が宿る。韓国の歴史と感情を象徴する「恨」を背景に、メンバーを未来へ導く存在として再構築。除隊後、より鮮明になった個性に合わせ、それぞれのコンセプトを重視したという。

ちなみにRMは「英雄」、JINは「芸術家」、J-HOPEは「ソリクン(伝統歌謡の歌い手)」、SUGAは「建築家」、JIMINは「詩人」、Vは「貴公子」、JUNG KOOKは「先駆者」。衣装も「太極旗」をイメージし、BTSは黒、アリランを奏でた女性は赤、男性は青にしたという。

8. セットリストが描く、BTSの現在地

披露された新曲群には、“今のBTS”を貫く明確なテーマが通底している。「I need the whole stadium to jump」と歌う「Body to Body」に象徴される観客との一体化、「Hooligan」で描かれる道なき道を開拓してきた旅路、「2.0」に示された新たな局面に足を踏み入れた現在地。それらはグループのルーツと現在の感情を結び、普遍的な共感へと開く。

一方で「Butter」や「Dynamite」といったグローバルヒットを要所に配置することで、彼らの歩みと現在を立体的に浮かび上がらせる構成となっていた。

9. 今の自分たちらしい“人生への愛”を歌う「SWIM」

なかでも圧巻だったのは「SWIM」。この曲が提示するのは、押し寄せる波に抗うのではなく、自分のペースで淡々と乗り越えていくという“人生への愛”のかたち。それはロマンチックな感情を超えた、生きることそのものへの肯定である。

ドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』では、制作過程で、RMやSUGAが表現や言語に葛藤し、タイトル曲としての是非にも悩む様子が映し出される。最終的に選んだ理由は、「強い曲が求められているかもしれないけれど、大人になった今の自分たちにふさわしい音楽はこれだと思うから」。その世界初パフォーマンスには、迷いを越えた先にある確かな覚悟が映し出されている。

10. アンコールの歓声の中で。光に包まれた“小宇宙”

アンコールの歓声の中で、「じゃあ、何をしようか」とJINとJUNG KOOKに聞かれ、「ソウジュハンジャンハプシダ」という答えたRM。これは、「焼酎(ソジュ)一杯やりましょう」という飲みに誘うときの決まり言葉に、「小宇宙(ソウジュ=Mikrokosmos)」の曲名をかけたジョーク。

実はドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』でも、共同生活の間にメンバー同士で焼酎を飲むシーンが多々登場している。「焼酎が甘く感じる」「それだけ制作が大変だから」というやりとりも。韓国では「焼酎が甘く感じるのは、人生で苦い経験をしている大人の証拠」と言われているのだ。

そう、カムバックライブは、BTSとARMYが空白を乗り越えて乾杯を交わす、再会の宴。「Mikrokosmos」のイントロが流れると、祝祭の熱気は最高潮に。「すごく久しぶりだね」とARMYに手を大きく振りながら歌うメンバーたちは、アミボムの光を浴びながらほっとしたよう。時を経ても、変わらない笑顔。ブルーのライトにレッドが溶けこみ、だんだんパープルが濃くなるステージ。アミボムが輝く光化門広場は、小さな宇宙のようであると同時に、新しい出航を祝う光の海のようにも見えた。

「BTS THE COMEBACK LIVE | ARIRANG」Netflixにて独占配信中
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Netflixドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』は27日より配信開始!

Netflix

LAで行った最新アルバム『ARIRANG』の制作に密着した、バオ・グエン監督によるドキュメンタリー『BTS: THE RETURN』は、3月27日(金)よりNetflixで世界独占配信。

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