1. トップ
  2. 「最近、手がしびれる…」“痛みがひどくないから”と放置→数年後、息切れで病院へ…そこで医師から告げられた“病名”に絶句。

「最近、手がしびれる…」“痛みがひどくないから”と放置→数年後、息切れで病院へ…そこで医師から告げられた“病名”に絶句。

  • 2026.5.14
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆様こんにちは。心臓手術を日々担当する麻酔科専門医の松岡です。

「最近、手がしびれるけれどスマホの使いすぎかな」「年のせいだから仕方ない」。Hさん(仮名)は、痛みがひどくないからと病院に行かずに様子を見ていました。

しかし、数年後、突然の息切れとむくみに襲われて「心不全」と診断されます。

自宅の中を少し歩くだけでも息苦しくなり、入退院を繰り返しました。「あの時のしびれがサインだったなんて…」後悔しても、以前のような生活を取り戻すには、多大な時間と労力が必要になります。

麻酔科専門医が、神経症状と心臓の病とのつながりについて解説します。

異常タンパク質が心臓を硬くする

なぜ手のしびれが心臓の病の予兆になるのでしょうか。それは「アミロイド」という異常なタンパクが体中に蓄積する「心アミロイドーシス」という疾患が潜んでいる可能性があります。

この病気が進行するプロセスは、大きく3つの段階に分けられます。

  • トンネルへの沈着(初期):アミロイドが手首の神経の通り道(手根管)に蓄積し、神経を圧迫します。これが「手根管症候群」として現れる手のしびれの原因です。
  • 心臓への侵入(数年後):血液に乗って全身を巡るアミロイドが、時間差で心臓の筋肉(心筋)の隙間に沈着し始めます。
  • 心不全の発症(末期):アミロイドが溜まった心臓は硬く分厚くなり、しなやかに膨らむことができなくなります。その結果、全身に血液を送り出せなくなり、重篤な心不全を引き起こします。

「ただの使いすぎ」と「危険なしびれ」の境界線

毎日家事や仕事で手を使っていれば、手がしびれたり痛くなったりすることもあります。

「疲れているから」「休めば治るだろう」と自己判断し、病院を後回しにしてしまうのは手のしびれに限らず、誰しも心当たりがあることでしょう。

実際に、手首の神経が圧迫される「手根管症候群」は、約30%が自然に軽快する比較的良性の疾患です。しかし、アミロイドーシスが原因で起こる手根管症候群は進行性であり、自然に治ることはほぼありません。それどころか、この手のしびれは、心不全の症状が顕在化する平均約7年も前から発せられる「SOSのサイン」なのです。

心アミロイドーシスはかつて治療法がない難病とされていましたが、現在は早期に発見できれば、進行を抑える治療薬が使えるようになっています。「ただのしびれ」と油断せず、心臓に症状が出る前に気づくことが、未来の健康を守る鍵となります。

適切な治療時期を逃さないために、確認すべき3つのサイン

「いつものこと」と油断して大切な治療のチャンスを逃さないために、アミロイドが発する危険なサインを見逃さないことが重要です。

1.片手ではなく「両手」がしびれる、痛む(両側手根管症候群)

一般的な使いすぎによる手根管症候群は利き手など片側に起こりやすいですが、アミロイドの蓄積が原因の場合は「両手」に起こりやすいのが大きな特徴です。

2.腰の痛みや、足のしびれがある(脊柱管狭窄症の合併)

アミロイドは手首だけでなく腰の靭帯などにも沈着しやすく、歩くと足がしびれて休まないと歩けない症状(腰部脊柱管狭窄症)を合併しやすいのが特徴です。手と足のしびれがある場合、別々の原因によると思っていた症状は、実は共通するひとつの原因によるものかもしれません。

3.少し動いただけで息が切れる、足がむくむ

すでに心臓にアミロイドが沈着し、心不全が始まっているサインです。靴下の跡がくっきり残るようなむくみには要注意です。

自身の体が出す小さなサインに耳を傾ける

忙しい日々の中で、体の小さな異変を「加齢のせい」と納得させてしまうのは、多くの人が経験することです。しかし、Hさんのような後悔を未然に防ぐ手段は、私たちの手元にあります。

もし「両手のしびれ」や「歩行時の息切れ」に心当たりがあれば、まずは整形外科(手外科)や循環器内科を受診し、専門医に相談してみてください。その一歩が、数年後の健康な生活を守る大きなターニングポイントになるかもしれません。


監修者・執筆:松岡 雄治
総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

の記事をもっとみる