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「胸に硬い部分がある」“痛くないから”と放置するが…→数年後、40代女性を待ち受けていた“恐ろしい病”【医師は見た】

  • 2026.6.4
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。周術期の全身管理を通じて、乳がんの手術にも数多く向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。

「胸に硬い部分があるけれど、痛くないし脂肪の塊だろう」と、ふと気づいた違和感を胸の奥にしまい込んでしまった40代女性のAさん。
しかし、忙しい日々の中でそのままやり過ごした数年後。Aさんを待っていたのは、その「痛みのないしこり」が骨を含む全身に転移し、激しい痛みと歩行困難な日々へと追い込まれる過酷な現実でした。
現在は、骨折の恐怖に怯えながら、抗がん剤治療と副作用に耐える生活を余儀なくされています。

症状に痛みが伴わなければ、「きっと大丈夫だろう」と思い込んでしまうのは無理もない心理です。今回は、なぜその油断がこれほど重い代償につながってしまったのかを解説しましょう。

痛みのないしこりが招く「見えない全身転移」

なぜ「痛くない」ことが命を脅かす大惨事になるのでしょうか。乳がんは初期段階では、以下のようなメカニズムで静かに進行します。

〈無痛の乳がんが、全身に転移してしまう経過〉
・発生と無痛:乳管などでがん細胞が増殖し硬いしこりを作りますが、乳腺炎と異なり炎症がないため、初期段階では痛みが生じないことがほとんどです。
・放置の罠:「痛くないから大丈夫」という直感により、病院受診が見送られがちになります。
・微小転移:放置されている間、がん細胞が血液やリンパ液に乗り、タンポポの種のように骨や肺、脳などへひそかに散らばります。
・発症:数年後、全身に散らばったがん細胞が増殖し、激しい骨の痛みや呼吸困難として一気に現れます。

「しこりが動くから安全」は本当?

「毎日仕事や家事で忙しいし、痛くもないのに病院に行く時間なんてない」と考え、インターネットで調べて自己完結させてしまうこともあるかもしれません。

今回、ぜひ覚えておいていただきたいのは、多くの場合、からだの異常は「痛み」として警告を発しますが、乳がんの場合は「痛くない」ケースが多いのです。そしてこれこそが発見を遅らせる最大の要因となります。

良性のしこり(乳腺線維腺腫など)はころころと動く特徴がありますが、実は「初期の乳がんのしこりも動くことが多い」という事実をご存知でしょうか。

がんが進行して大胸筋などの周囲組織に深く入り込めば動きにくくなりますが、小さなしこりの段階ではころころと動くことはよくあることです。つまり、「自分のしこりはよく動くから良性だろう」と自己判断してしまうことが、手遅れを招く最大の原因なのです。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

ご自身の乳房の状態に日頃から関心を持つ習慣を「ブレスト・アウェアネス」と呼びます。着替えや入浴の際など、日常生活の中で自然に胸に触れ、以下の3つのサインがないか意識してみてください。

1. 「梅干しの種」のような硬さがある

悪性のしこりは、弾力があるというよりもむしろ、種や小石のように硬いことが多いのが特徴です。

2. 乳頭から「血の混じった分泌液」が出る

乳がん細胞が増殖して出血している可能性があります。良性の疾患が原因のこともあるため、それだけでは断定できませんが、速やかな受診がおすすめです。

3. 皮膚の「くぼみ」や「ひきつれ」がある

がん細胞が皮膚や周囲の組織を引っ張ることで、えくぼのような凹みが現れることがあります。

身近な人と「同じ病気かな?」と思ったときこそ要注意

インターネットの情報では、良性悪性の見分け方を「しこりが動くかどうか」に絞っていることもあります。しかし、実際にはそれだけではわからないこともあります。「しこりが動くから大丈夫」「痛くないから大丈夫」と考えず、初期の乳がんかも、と考えて一度受診できると早い段階で対応できるかもしれません。

大切なことは、「普段と違う上記のサインや違和感を見つけたら、迷わず一度乳腺外科を受診しましょう」ということです。「より早く不安を取り除き、日常を守るために」そう捉えて、いつでもお気軽に受診していただければ幸いです。


出典:「がん予防重点健康教育及び がん検診実施のための指針」 改正について(厚生労働省)


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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