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医師「時に命に関わる」→実は『すい臓』に炎症があるかも…“ただの胃もたれ”と見逃しがちな「危険なサイン」とは?

  • 2026.6.8
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

おいしい食事に楽しいお酒。ついつい羽目を外して暴飲暴食をしてしまった翌日、「なんだか胃のあたりが重い」と感じることはありませんか? ただの食べ過ぎかと思いきや、実はその痛み、内臓からのSOSかもしれません。特に注意が必要なのが、私たちの身体の奥深くで静かに働く「すい臓」です。

なぜ過度な飲食がすい臓を傷つけ、時に命に関わるほどの不調を招くのでしょうか。また、胃薬を飲んで様子を見て良い場合と、すぐに医療機関へ行くべき境界線はどこにあるのでしょうか。今回は、麻酔科専門医である松岡雄治さんに、すい臓に負担をかけない食事の工夫とともに、見逃してはいけない危険なサインについて伺いました。

なぜ暴飲暴食は「すい臓」を破壊するのか?

---おいしいものを食べて飲んだ翌日、お腹を押すと痛みを感じることがあります。なぜ過度な飲食ですい臓がダメージを受けるのでしょうか?

松岡雄治さん:

「過度な飲食が負担となるメカニズムは、すい液の過剰分泌と自己消化(すい液ですい臓自身が消化されるという悲劇)です。また、押すだけで不調を察知できるのは、すい臓の炎症によって周辺の神経が刺激されやすくなるためです。

『おいしいものは脂肪と糖でできている』とは本当によく言ったものです。そして、おいしいものを食べるときには、おいしいお酒を飲みたくなってしまいます。しかし、この脂肪とアルコールがすい臓に大きな負担になります。

【過度な飲食がすい臓を破壊するフロー】

  • 過剰な消化液分泌とアルコールの罠:脂質を消化するためにすい臓がフル稼働し、多量のすい液が分泌されます。さらに、アルコールによる発症機序は医学的にはっきり解明されているわけではありませんが、大量の飲酒が重なることで急性すい炎の発症リスクが跳ね上がります。
  • 自家消化の開始:限界を超えて行き場を失った強力な消化液は、食べ物ではなく『すい臓自身』を溶かし始めます。
  • 周囲への炎症波及:自らを溶かしたすい臓は激しく腫れ上がり、周囲の神経網を強く刺激します。

押すだけで不調を察知することについては、このすい臓の炎症が関与しています。すい臓は胃の裏側という奥深くに位置しており、健康な状態では外から押しても直接触れることはできません。
しかし、急性すい炎などですい臓が腫れ上がると、みぞおちから左上腹部の神経が過敏になります。そのため、お腹を深く押したときに強い痛み(圧痛)が生じるのです。これは医療機関のお腹の診察でも重視される医学的なサインです。押して痛む場合は単なる胃もたれではなく、すい臓に炎症があるかもしれません。」

「胃もたれ」と「危険な痛み」を見分ける境界線

---食べ過ぎた際、「胃薬を飲んで様子を見よう」と考える人は多いですが、受診の目安を教えてください。

松岡雄治さん:

様子を見て良い境界線は『単なる胃もたれや軽いお腹の張りで収まるか』です。暴飲暴食の後に胃腸が重く感じたとき、『胃薬を飲んで少し休んでいれば治るだろう』と様子を見ようとするのはごく自然な心理ですが、もたれなどだけでなく他の症状もある場合には要注意です。胃痛やただの食べ過ぎだと自己判断して放置すると、数日以内に重症化し、他の臓器まで機能不全に陥る危険性があります。

【直ちに受診すべき危険なサイン(急性すい炎の疑い)】

以下の症状は、ガイドラインにおいても重視される危険なサインです。

  • お腹の違和感から始まり、数分から十数分の間に我慢できないほどの激痛に変わる(急激な痛みの悪化)
  • みぞおちから左上腹部の強い痛みが、背中や腰にまで突き抜けるように広がる(放散痛)
  • 強い腹痛とともに、吐き気や嘔吐を繰り返す

軽いお腹の張りや不快感であれば、1〜2食を抜いて水分を摂り、胃腸を休めることで改善することもあります。しかし、上記のサインが1つでも当てはまる場合は、速やかに消化器内科や救急外来を受診してください。」

すい臓を労わるための「3つの食事ルール」

---すい臓を守るために、日々の食事で意識すべき具体的な対策はありますか?

松岡雄治さん:

「すい臓を労わるための食事の工夫は、脂質の具体的な制限と、アルコールの適量管理、そして十分な水分補給の3つです。すい臓の仕事量を減らし、炎症の引き金となる要因を防ぐために、数字を意識してみましょう。

【すい臓のための3つの食事ルール】

1. 脂質を1日30g(1食10g)を目安に制限する
脂質はすい臓への負担が最も大きい栄養素です。不調を感じる数日間は、1日の脂質摂取量を30g程度に抑える工夫をします。

  • 控えるべき食品:揚げ物、霜降り肉、バター、洋菓子など
  • おすすめの食品:豆腐、白身魚、おかゆなど、消化が良く脂質の少ないもの

2. アルコールは『1日20g』を上限とし、不調時は完全に休む
アルコールはすい炎のリスクを跳ね上げます。国の指針が定める適量(純アルコールで1日20g程度、つまりビール中瓶1本、または日本酒1合程度)を上限にしましょう。

注意点:女性やお酒に弱い人はさらに少ない量が適当です。みぞおちや背中に違和感がある時は、完全に休肝日とします。

3. こまめに十分な水分をとる
体内の水分が不足して血液がドロドロになると、すい臓の血流が悪化し、ダメージが加速します。

具体的な対策:アルコールには強い利尿作用があるため、飲酒時を含めてお茶や水などをこまめに飲み、脱水による血流の悪化を自力で防ぎます。

食事制限を長く続ける必要はありません。数日間胃腸を休め、もし痛みが強くなったり、自力でのコントロールが難しいと感じたりした場合は、かかりつけ医にご相談ください。」

すい臓からのSOSを見逃さないために

今回、松岡先生への取材を通じて、私たちの身体の奥で働くすい臓がいかに「過度な飲食」というストレスに弱いかがよく分かりました。特に「押して痛む」というサインは、胃もたれと混同しがちですが、すい臓からの重要な警告かもしれません。

暴飲暴食のあと、「ただの疲れ」で片付けず、自分の身体と対話することが大切です。もしもの時は食事内容をコントロールし、それでも改善しない場合は決して我慢せず、専門医を頼ってください。明日からの食事で少しだけ「脂質」と「アルコール」の数字を意識することが、未来の健康を守る第一歩になるはずです。


監修者:松岡雄治
麻酔科専門医。総合病院、大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じ、幅広い周術期管理に従事。現在は急性期病院で麻酔科医として勤務する。日々、美容領域を含む各診療科の手術に携わっている。医師としての知識と経験を活かして医療系ライターとしても活動し、医療・健康・美容分野の記事執筆、医学論文の解説、商品監修、AI技術開発関連プロジェクトへの参加などの実績を有する。睡眠コンサルタント、睡眠検定1級の資格も保有。

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