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「最近、下痢っぽい…」“市販の整腸剤”を飲んで放置。→数年後、30代女性を待ち受けていた“恐ろしい事態”【医師は見た】

  • 2026.6.7
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

みなさまこんにちは。周術期の全身管理を通じて、多くのお腹のトラブルや重症手術に向き合う麻酔科専門医の松岡雄治です。

「最近、下痢っぽいんだよね」とこぼしたランチタイム。「わかる!私も過敏性腸症候群でさ」という友人の言葉に深く頷き、「そうか、私も過敏性腸症候群だったんだ」と自己判断してしまった30代女性会社員のIさん(仮名)。

しかし、市販の整腸剤でやり過ごした数年後。友人の過敏性腸症候群の症状は相変わらずでしたが、Iさんを待っていたのは「大腸全摘出」という過酷な現実でした。
現在は、お腹に造設した人工肛門(ストーマ)から排便を管理する生活を送っています。好きだった旅行には自然と行かなくなってしまい、塞ぎ込むようになってしまいました。

なぜこれほどまでにお二人の結果が違ってしまったのか解説しましょう。

ストレスのせいではない?潰瘍性大腸炎という病気

なぜ「ただの下痢」がゆくゆくは大腸を失うほどの事態を招くのでしょうか。潰瘍性大腸炎は、腸の粘膜を侵し、びらんや潰瘍を形成する大腸のびまん性炎症疾患です。

完全に解明されているわけではありませんが、およそ以下のようなメカニズムで進行します。

【潰瘍性大腸がんのメカニズム】

  1. 発症・進行:免疫の異常などがきっかけとなって、腸のうちおしりに近い直腸から始まって、連続して病気の範囲が広がっていきます。
  2. 劇症化:そのまま放置して悪化すると、腸粘膜からの大量出血、潰瘍から穿孔(腸に穴が開くこと)に至るなどして、緊急結腸切除術(大掛かりな緊急手術)が必要になることもあります。
  3. がん化のリスク:長期にわたって大腸全体にダメージを与えることで、大腸がん(結腸癌)の発生リスクが高くなります。

「よくあるストレス性の下痢」と「危険な病気」の境界線

「友人も同じ症状で悩んでいるなら、きっと私も過敏性腸症候群だ」「忙しいし、市販薬でなんとか頑張ろう」。

現代社会で懸命に働き、同じ悩みを持つ友人の言葉に安心感を覚えてしまうのは、ごく自然な心理です。病院に行くほどではないと考えるのも無理のないことです。

一方で、このパターンの見過ごしには注意が必要です。初期の段階では、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、過敏性腸症候群のような病気と見分けがつきにくいことがあります。

ただのストレスや体質だと思い込み、本当は腸の粘膜が悲鳴を上げているのに長期間放置してしまうと重症化して大腸を失ったり、大腸がんになってしまったりと重大な結果につながるおそれがあるのです。

重症化を防ぐために、確認すべき3つのサイン

下痢が続いている場合、「過敏性腸症候群」か「潰瘍性大腸炎」かを見極めるため、以下の3つをご自身で確認してください。

1. 便に「血やドロッとした粘液」が混じる

持続的または反復する血性下痢や粘血便は、腸の粘膜が傷ついている直接的なサインです。過敏性腸症候群は腸の炎症を伴わないため、下痢や便秘を繰り返しても病気自体が原因で血便が出ることは基本的にありません(頻回な排便に伴う痔などの合併症によって短期的な直腸出血が生じることはあります)。

2. 夜間、寝ている間にも「便意で目が覚める」

過敏性腸症候群では通常、夜間に腹痛や下痢で目が覚めることはほとんどみられません。一方で、潰瘍性大腸炎の炎症は就寝中も腸を刺激し続け、重症化すると夜通し下痢が続くこともあります。

3. 「発熱」や「体重減少」を伴う

発熱、原因不明の体重減少、血便は過敏性腸症候群のサインとしては典型的ではなく、炎症疾患や、がんなどを疑うサインと考えて、受診を検討しましょう。

身近な人と「同じ病気かな?」と思ったときこそ要注意

「私も同じ症状に悩んでいる」という友人の言葉に共感し、納得してしまうお気持ちは痛いほどよくわかります。自分が比較的珍しい病気や重い病気の入り口に立っていることに気づくのは、実際にはとても難しいものです。

一度立ち止まって、もう一度ご自身の症状を見返してみましょう。

特に、まずは「血便や発熱を伴う下痢が続いたら、一度消化器内科に行ってみる」と覚えておきましょう。下痢やお腹の症状くらいで受診して大袈裟ではないか、と思う方は多いものですが、もし思い過ごしであればそれでよいのです。不安を取り除き、日常を守るために、ぜひお気軽に受診していつでも私たちを頼ってください。


出典:

潰瘍性大腸炎(厚生労働省)

潰瘍性大腸炎(難病情報センター)

日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン 2020(改訂第 2 版)


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など。

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