1. トップ
  2. 「頭痛や関節痛がつらい…」“市販の鎮痛薬”を飲んで放置→数ヶ月後、突然の吐血で搬送され…40代女性に起きた“恐ろしい異変”

「頭痛や関節痛がつらい…」“市販の鎮痛薬”を飲んで放置→数ヶ月後、突然の吐血で搬送され…40代女性に起きた“恐ろしい異変”

  • 2026.5.9
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆様こんにちは。周術期の全身管理はもちろん、臓器の保護と日々向き合う麻酔科専門医の松岡です。

「連日続く頭痛や関節痛がつらい…。今日も痛み止めを飲んで頑張ろう。」

春の環境変化による不調に悩む40代の女性Kさん(仮名)は、市販の鎮痛薬を毎日のように飲んで仕事や家事をこなしていました。

しかし、数ヶ月後、突然の吐血と異常な全身のむくみで救急搬送されました。胃には深い潰瘍ができ、腎臓の機能は著しく低下していました。

一命はとりとめましたが、現在は一生続く厳しい食事制限を強いられています。将来の人工透析の恐怖に怯えながら、大好きな家族との外食すら自由に楽しめない不自由な日常に後悔を募らせています。

今回は、痛み止めを飲みながら毎日を頑張る皆様にお伝えしたい、消化性潰瘍のお話です。

痛みを消す薬が、胃と腎臓のバリアを剥がすメカニズム

手軽に買える市販の鎮痛薬は、痛みを素早く消してくれる頼もしい味方です。

しかし、 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、痛みを抑えると同時に内臓を守る重要なバリア機能まで奪ってしまう諸刃の剣です。鎮痛薬の漫然とした使用が胃と腎臓を壊していくメカニズムを整理します。

【鎮痛薬の乱用が内臓を破壊するフロー】

  • プロスタグランジンの抑制:NSAIDsが痛みの原因物質(プロスタグランジン)を作る酵素の働きを阻害し、その発生を局所で強力に抑え込む
  • 胃粘膜の崩壊:プロスタグランジンは胃の粘膜を保護する役割も併せ持つため、同時に胃の粘膜を守るバリア機能も失われ、強い胃酸が自らの胃壁を溶かし潰瘍を作る
  • 腎血流の極端な低下:プロスタグランジンが担う腎臓の血管を広げる機能も同時に失われるため、血管が極端に細くなる
  • 不可逆的な臓器障害:バリア機能を失った胃からの出血による吐血、血流不足に陥り静かに窒息した腎臓の機能低下が生じる

「休めないから薬で乗り切る」という自然な心理と危険な罠

春は寒暖差や新しい環境のストレスで自律神経が乱れやすい季節です。連日続く頭痛や体の痛みに悩まされながらも、職場や家庭での責任を果たすために手近な薬で乗り切ろうとしてしまうことは誰しも経験があることでしょう。

ただし、その「もうひと頑張り」にはリスクが潜んでいます。市販の鎮痛薬は身体の根本的な不調を治しているわけではなく、痛みのサインを消しているに過ぎません

プロスタグランジンは痛みや炎症を引き起こす原因物質です。しかし、同時に、胃の粘膜を保護し、腎臓の血流を一定に保つための不可欠な大切な物質でもあります。痛みが消えて安心している間に、胃は丸腰の状態で胃酸に晒され、腎臓は血流不足で静かにダメージを受けているかもしれません。

特に、空腹時に薬を飲んだり、水分補給が不足した状態で薬を飲み続けたりする習慣はリスクが高くなります。
最近のように、春先に不意に訪れる夏日には脱水が重なることもあります。脱水で腎臓への血流がさらに滞って、薬剤性腎障害のリスクが一気に跳ね上がります。痛み止めが持つ諸刃の剣の性質を知っていれば、痛み止めともうまく付き合うことができたかもしれません。

手遅れになる前に、確認すべき3つのサイン

ただの疲れだと誤認して内臓を限界まで痛めつけないよう、胃と腎臓が発する危険なサインを見逃さない配慮が必要です。

1.みぞおちの鈍い痛みや、黒くてドロドロの便(タール便)が出る

胃の粘膜が崩壊し、出血が始まっている極めて危険なサインです。黒い便は胃酸と血液が混ざったことを意味します。

2.足のすねを指で強く押すと、へこみがなかなか元に戻らない

腎臓の血流が低下し、体内に余分な水分と老廃物を尿として排出するろ過機能が破綻し始めているサインです。重力によって血管内から押し出された水は、皮膚の薄いすねでわかりやすくむくみとして現れます。

3.市販の痛み止めを月に10日以上、長期間にわたって飲み続けている

痛みを抑える効果とともに臓器を保護するシステムがうまく機能しなくなり、内臓へのダメージが蓄積しているおそれがあります。

まとめ

責任感から痛みを我慢して頑張った結果、大切な臓器を傷つけてしまい、回復できなくない状態に陥るのは酷なことです。また、鎮痛薬が内臓のバリア機能を損なうことがあると聞いたことがあっても自分のことと思うのは難しいものです。

まずは、鎮痛薬の連用をしていないか、飲み過ぎではないか振り返ることから始めましょう。月に10日以上の服用が続く場合はもちろんのこと、短期間の服用であっても胃の不快感や異常なむくみを感じた際は決して自己判断で薬を飲み続けず、直ちに内科を受診することが不可欠です。

鎮痛薬の服用はもちろん有効なケースもあります。しかし、副作用を感じた時にはぜひ気軽に受診してください。身体の状態を確認し、よりよい改善プランを一緒に探しましょう。


監修者・執筆:松岡 雄治

総合病院や大学病院、小児専門医療機関での勤務を通じて、幅広い診療科の周術期管理に従事。現在は急性期病院の麻酔科医として最前線の医療に携わっている。専門医としての高度な医学的知見を活かし、医療・健康・美容分野でのコラム執筆や医学論文の解説などを幅広く手掛ける。医療AI技術開発プロジェクトへの参画など多岐にわたる実績を持ち、読者に寄り添った分かりやすい医療解説に定評がある。保有資格は麻酔科専門医、睡眠コンサルタント、睡眠検定1級など

の記事をもっとみる