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「来月から保育園に空きが出る」産後8週間で“職場復帰”を決意→数ヶ月後、20代女性を直撃した“178万”の大誤算【社労士が見た】

  • 2026.4.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、社会保険労務士の加藤あゆみです。

出産を控えた方から、「産休・育休のお金ってどのくらいもらえるんですか?」というご質問をよくいただきます。出産前後は収入が途絶える不安がありますから、気になりますよね。

ところが最近、「育休の給付金が1円ももらえなかった」という想定外のご相談をいただくことが増えています。原因は、産休と育休が"別の制度"だと知らなかったこと。たった一つの判断ミスが、100万円以上の損失につながることもあるんです。

保育園の空きに飛びついた結果

Dさん(28歳・会社員女性・月給約24万円)は、出産後に産前産後休業(産休)を取得し、出産手当金を受け取っていました。

産後7週目、認可保育園から「来月から空きが出ます」と連絡が入ります。待機児童が多い地域で、次にいつ空きが出るかわからない状況。Dさんは保育園が決まったことで「育休は必要ない」と判断し、育休の申出をしないまま産後8週間の産休終了と同時に職場復帰を決めました。

ところが復帰から数ヶ月後、同じ時期に出産した同僚が育児休業給付金を受け取っていることを知り、愕然とします。「私はなぜもらえていないの?」答えはシンプルでした。育休を取得していなかったからです。

産休と育休は"まったく別の制度"

ここで整理しておきたいのが、産休と育休の違いです。

産前産後休業(産休)は、出産予定日前の6週間と、出産翌日からの8週間が対象。この間は健康保険から出産手当金(標準報酬月額の3分の2)が支給されます。

一方、育児休業(育休)は、産後休業が終わった翌日から子どもが原則1歳になるまでの期間。こちらは雇用保険から育児休業給付金が支給され、最初の180日間は賃金の67%、それ以降は50%が受け取れます。

つまり、産休を取っただけでは育休の給付金はもらえません。産休終了後に育休を「申請して取得する」という手続きが必要なのです。

受け取れなかった金額は約180万円

Dさんのケースで、もし産休後に育休を10ヶ月間取得していたら、どうなっていたでしょうか。

  • 育児休業給付金(180日分・67%):約96万円
  • 育児休業給付金(残り約4ヶ月分・50%):約48万円
  • 育休中の社会保険料免除(本人負担分):約34万円

合計すると、約178万円の経済的メリットを逃してしまった計算です。

さらに、2025年4月からは夫婦ともに14日以上の育休を取得した場合に給付率が最大80%に引き上げられる「出生後休業支援給付金」も始まっています。条件を満たしていれば、Dさんが受け取れた金額はさらに増えていたかもしれません。

「保育園のために早期復職」は本当に得なのか

保育園の空きが出たタイミングで復職したい気持ちはよくわかります。ただ、入園の内定を受けてから育休を短縮して復職することは可能です。最初から育休を取得せずに復職してしまうと、給付金も社会保険料免除も受けられません。

大切なのは、まず育休を取得したうえで、復職のタイミングを調整するという順番です。

育休の申出は、原則として休業開始予定日の1ヶ月前までに会社に届け出る必要があります。出産前から「産休のあと、育休の手続きはどうなりますか?」と人事担当者に確認しておくと安心です。

制度は、知っている人だけが得をします。これから出産を迎える方は、ぜひ産休に入る前に一言確認してみてください。

※本記事は2026年4月時点の制度に基づいています。


執筆・監修:あゆ実社労士事務所
人材育成・キャリア支援を軸に約10年の実務経験を持つ、社会保険労務士/国家資格キャリアコンサルタント。 IT企業の人事として、新卒・若手育成、研修設計、評価・キャリア支援の仕組みづくりに携わる一方、個人では企業や個人に向けたキャリア相談・人事支援を行っている。 これまでに累計100名以上のキャリア面談を実施し、1on1制度設計や面談シートの設計、育成施策の言語化を支援。 近年は生成AIを活用した業務設計・人事業務の効率化にも注力し、「現場で使えること」を前提にしたAI活用の伴走支援を行っている。

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