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子どもの口座に“毎年110万円”を振り込み→「長くやっているから大丈夫」のはずが…12年後、60代夫婦を襲った“1280万円”の大誤算

  • 2026.4.11
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは、マネーシップス代表の石坂です。「毎年110万円ずつ渡しているから大丈夫」そう信じて続けてきた生前贈与が、結果として相続税を増やしてしまうケースがあります。

長年コツコツと贈与していても、相続時に課税対象が増え、税額が大きく上がることがあります。原因は、見落とされやすいルール変更です。これまでの常識のまま対策を続けていると、気づかないうちに前提がズレてしまうことがあります。

今回は、対策していたはずが逆効果になった実例をもとに、仕組みと注意点を紹介します。

「コツコツ贈与していたのに」相続税が増えた例

ご相談いただいたのは、60代のご夫婦とそのお子様です。父親は約12年間、毎年110万円ずつ子どもへ贈与していました。累計は約1,320万円です。

本人としては、「これだけ移していれば相続財産はかなり減っている」という認識でした。

当初の試算では、相続財産は約8,000万円。基礎控除4,200万円を差し引くと、課税対象は約3,800万円になります。この水準であれば、相続税は約400万円前後という見込みでした。

しかし、実際に相続が発生した際には状況が大きく変わります。直近7年分の贈与、合計約770万円が相続財産に加算される形となりました。

本来は切り離せていると考えていた贈与の一部が、再び相続財産として計算されることになったのです。

その結果、課税対象は約3,800万円から約4,570万円へと増加します。この増加によって税率の区分も一部引き上がりました。

最終的な相続税は約1,680万円。想定していた約400万円から、約1,280万円増える結果となりました。

長年対策していたにもかかわらず、結果として負担が増えてしまったケースです。

■ 相続税のポイント整理

  • 年間贈与額:110万円
  • 贈与期間:約12年
  • 贈与総額:約1,320万円
  • 当初の相続財産:約8,000万円
  • 基礎控除:4,200万円

 

  • 当初の課税対象:約3,800万円
  • 当初の相続税:約400万円
  • 加算対象:直近7年
  • 加算額:約770万円

 

  • 加算後の課税対象:約4,570万円
  • 最終的な相続税:約1,680万円
  • 増加した税額:約1,280万円

なぜこのズレが起きるのか

一番の原因は、「ルールの前提が変わっていること」です。

このご家庭は、贈与を始めた当初のルール(死亡前3年)を前提に対策を続けていました。しかし現在は、その期間が7年へと延長されています。

つまり、同じやり方を続けていても、途中で評価の基準が変わってしまっている状態です。

もう一つのポイントは、「亡くなる直前の贈与は切り離せない」という点です。どれだけ長く贈与を続けていても、直近の数年分は相続財産に戻ってしまいます。

このため、「長くやっているから安全」という考え方は成り立ちにくくなっています。

毎年同じ金額で贈与を続けている場合には、形式だけの贈与と判断される可能性もあります。実際に資産が移転しているかという点も重要です。

「対策しているつもり」が一番危ない理由と見直しのポイント

今回の本質は、「制度は変わるもの」という前提で考える必要がある点です。

生前贈与という手法そのものが無意味になったわけではありません。ただし、「毎年110万円」という方法だけに依存してしまうと、制度変更の影響を受けやすくなります。

また、期間だけでなく方法も分けて考えてみましょう。

  • 早い段階から贈与を進める
  • まとまった資産移転を行う
  • 他の制度と組み合わせる

といった設計が必要になります。

また、相続のタイミングは事前に正確に予測することができません。そのため、「何年前まで対象か」という一点だけで判断するのではなく、どのタイミングでも大きなズレが生じない形にしておくことが重要です。

今回のように、対策をしているつもりでも、前提が変われば結果は逆転します。

重要なのは、「今の制度に合っているか」ではなく、「制度が変わっても大きく崩れないか」という視点で設計することです。


執筆・監修:石坂貴史
証券会社IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー・証券外務員)、2級FP技能士、AFP、マネーシップス代表。累計1,200件以上のご相談、金融関連の記事制作、校正・監修を手掛けています。「金融・経済、不動産、保険、相続、税制」の6つの分野が専門。お金の運用やライフプランの相談において、ポートフォリオ理論と行動経済学を基盤にサポートいたします。

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