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地方の実家を3,000万円で売った55歳男性→「これで老後資金を用意できる」と思いきや…手取り額を見て“青ざめたワケ”

  • 2026.4.18
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして主に家計相談やお金に関する情報発信などを行っている柴田です。

先日、お客様の55歳男性・Aさん(仮名)から、こんな言葉が出てきました。

「実家を3,000万円で売れたので老後資金をある程度用意できると思っていたら、実際に手元に残ったのは2,300万円弱で……何にそんなにかかったのか、正直よくわかっていないんです」。

Aさんは3年前に母親を亡くし、誰も住まなくなった地方の実家を相続。

固定資産税を払い続けるのも負担になってきたため、今年に入って不動産会社に依頼し、3,000万円での売却が成立しました。「これで老後の心配はひとまず解消」と安堵したのも束の間、費用と税金を差し引いた実際の手取り額を知って青ざめたといいます。

「売却額=手取り」ではない。引かれる費用の内訳

不動産を売却すると、売却額からさまざまな費用が差し引かれます。Aさんのケースで実際にかかった主な費用は以下の通りです。

  • 仲介手数料:売却額の最大3%+6万円(税別)が上限。Aさんの場合は約96万円
  • 測量費:隣地との境界を確定するために約30万円
  • 解体費:売却前に老朽化した倉庫を撤去して約50万円

これらの譲渡費用だけで合計約180万円に達しました。さらに見落としがちなのが印紙税や、必要に応じた抵当権抹消登記などの費用で、合わせて数万円単位でかかります。売却前の段階でこれらを合算しておかないと、「思ったより手元に残らない」という事態になりがちです。

親の購入価格がわからないと、税額が跳ね上がる

不動産を売って利益が出た場合、その利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。譲渡所得は「売却額-取得費-譲渡費用」で計算され、所有期間が5年超であれば所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて約20.315%、5年以下であれば約39.63%が課されます。

ここで問題になるのが「取得費」、つまり購入時の価格です。Aさんの実家は数十年前に親が購入したもので、当時の売買契約書が見当たりませんでした。取得費が証明できない場合、売却額の5%を取得費とみなすルールが適用されます。Aさんの場合、取得費は3,000万円×5%=150万円。売却額3,000万円から取得費150万円と譲渡費用180万円を差し引いた譲渡所得は2,670万円。

所有期間が5年超だったため、税額は所得税・復興特別所得税・住民税の合計で約542万円になる計算でした。「購入時の契約書が残っていれば、取得費をもっと高く計算でき、税額をぐっと抑えられた可能性がある」とAさんは悔やんでいました。不動産の契約書は、たとえ数十年前のものでも必ず保管しておくことが重要です。

3,000万円控除は「住んでいた人」が使える制度

「マイホームを売るなら3,000万円の特別控除が使えると聞いた」という方も多いでしょう。この制度は譲渡所得から最大3,000万円を差し引けるもので、使えれば税負担を大幅に軽減できます。

ただし適用には条件があります。通常のマイホームの3,000万円特別控除は、Aさんのように本人の居住実態がない相続実家には原則使えません。「親が住んでいた家だから大丈夫」という思い込みは危険です。

なお、相続した空き家を売却する場合に使える「被相続人の居住用財産に係る3,000万円特別控除」という別制度も存在します。ただしこちらも適用条件が細かく定められており、すべてのケースで使えるわけではないため、事前に税理士への確認が必須です。

まとめ

不動産売却は「売却額=手取り」ではありません。仲介手数料・測量費・解体費などの譲渡費用に加え、取得費が不明な場合は税額が大きく膨らむリスクがあります。

実家の売却を検討している方は、売り出す前に費用と税金の概算を把握しておくことが重要です。特に取得費の証明書類は早めに探しておき、見つからない場合は税理士に相談して対応策を検討してください。「売れてから考える」では遅すぎます。     


柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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