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「タンス預金ならバレない」は間違いだった。税務署が“隠し財産”を特定する、「驚きのカラクリ」とは?【お金のプロが解説】

  • 2026.4.25
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

相続対策として「現金を自宅で管理する(タンス預金)」や「家族名義の口座への資金移動」を検討される方は少なくありません。「これなら税務署の目には触れないのでは?」と考える方もいるでしょう。しかし、相続が起きた際、税務署は驚くほど精緻に資産の動きを把握しています。

なぜ隠したはずの資産が税務署にバレてしまうのでしょうか。そして、家族への生前贈与が「名義預金」として課税対象にならないためには、どのような準備が必要なのでしょうか。

この記事では、相続税調査のリアルな実態と、ご自身の大切な資産を守るための正しい管理方法について、専門家の見解をもとに解説します。

税務署はなぜ隠したはずの「タンス預金」を見抜けるのか

---タンス預金は物理的に「見えない」はずですが、なぜ相続の時に税務署は把握できるのでしょうか?

中川 佳人さん:

「税務署はタンス預金そのものを直接見ることはできません。しかし相続が起きた時、『申告された遺産額』と『これまでの資金の流れから推定される保有資産』のズレを手掛かりに、タンス預金の存在を推定できるのです。

国税当局は『KSKシステム』(税務署内部で過去の所得税や固定資産税などの申告情報を統合管理する仕組み)に、長年の申告記録を蓄積しています。さらに税務署には、金融機関へ照会する法的な権限が認められています。必要に応じて取引履歴や残高を確認することも可能です。相続税の調査では過去5年分の照会が基本で、悪質が疑われる場合は7年、実務上は10年程度まで遡るケースも見られます。こうして過去の申告情報と資金の流れを突き合わせ、申告額との差を確認していくのです。

たとえば退職金2,000万円を受領し、生前の預金引き出しが1,000万円規模であったにもかかわらず、申告された金融資産が数百万円にとどまるケースをご想像ください。差額の行方が説明できなければ、タンス預金や名義預金があったと見なされる可能性は高まります。亡くなる直前の大口出金も、タンス預金化の疑いを招きやすい典型的な材料と言えるでしょう。

『見えない』からこそ『逆に不一致で浮かび上がる』のがタンス預金の実態なのです。ご自身での判断が難しい場合は、税理士や所轄の税務署へ相談するようにしてください。」

銀行からの資金移動は要注意!「名義預金」と判断されるリスク

---多額の出金や家族への資金移動が、なぜ相続税の追徴リスクにつながるのでしょうか?

中川 佳人さん:

銀行からの多額出金や家族への資金移動は、金融機関を通じて税務署に把握されやすく、放置すれば贈与税・相続税の追徴リスクを招くことになります。

金融機関は日々の取引を記録しています。相続発生時、税務署は金融機関へ照会する法的な権限にもとづき、過去の入出金履歴を確認することが可能です。家族名義の口座へ資金を移すと、『名義預金』と判定される可能性が浮上するでしょう。形式上は家族の財産でも、実質的には被相続人のものとみなされ、相続税の課税対象に戻されてしまうのです。贈与として認められるためには、贈与契約書の作成、受贈者ご本人による通帳・印鑑の管理、年110万円の贈与税非課税枠の範囲内での記録など、実態を伴う運用が欠かせません。

たとえば、父親が亡くなる数年前にお子さまの名義で口座を作り1,000万円を移されたとします。ところが父親ご本人が通帳と印鑑を管理し続けていた場合、名義預金と判定されやすいでしょう。父親の相続財産として課税されるだけでなく、過去の贈与が仮装とみなされれば、加算税・延滞税まで発生し得ます。生前に多額を引き出して手渡ししていたケースも、受け取り側の使途が不明だと贈与認定されるリスクを伴うのです。

多額の出金や家族間の資金移動は、『透明な記録』と『実態のある贈与』がセットになって初めて安全と言えます。具体的な進め方は税理士へ相談することをお勧めします。」

税務署に疑われないための第一歩!今日からできる資産管理

---税務調査で問題にされないためには、具体的にどのような対策を講じるべきでしょうか?

中川 佳人さん:

正しい資産管理の第一歩は、『資産の全体像をご家族で可視化し、記録として残す』ことです。税務署に疑われないためには、日々の整理こそが何よりの対策となります。

税務調査で問題になるのは、『説明できない資金』です。逆に言えば、資金の出どころと流れを書類や取引記録で示せる状態を保っていれば、たとえ一部にタンス預金があったとしても疑念は最小限にとどめられます。相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)を踏まえ、資産が多いご家庭ほど計画的な整理が必要と言えるでしょう。

具体的に、ご家庭でできる第一歩として以下の4つが挙げられます。

  1. 財産目録の作成:預金・不動産・保険・有価証券・現金を一覧化し保管。
  2.  贈与の記録化:贈与契約書の作成、受贈者による通帳管理、110万円超は贈与税申告。
  3. 高額現金取引の記録:不動産や自動車の現金購入は、領収書と契約書をセットで保管。
  4. タンス預金の棚卸し:必要分を超える現金は口座に戻し、出入りを通帳で見える化。

『隠す』のではなく『記録して説明できる』状態を作ること。これが疑われない最大の対策です。資産構成や相続計画が複雑であれば、早めに税理士に相談するとよいでしょう。大切な資産を守るため、適切な管理を心がけてください。」

「隠す」のではなく「記録する」。明日のための資産整理

今回の取材を通じて、税務署は単に隠し財産を探しているのではなく、長年の記録から生じる「不自然なズレ」を見抜いているという実態が浮き彫りになりました。

相続対策において最も重要なのは、決して「見えないように隠す」ことではありません。むしろ、資金の出どころと流れを明確にし、家族間でも資産状況を共有しておくことこそが、最も安全で確実な防衛策といえます。

まずは財産目録の作成から始め、ご自身の資産と向き合ってみてはいかがでしょうか。疑問がある場合は一人で抱え込まず、早めに専門家である税理士へ相談し、大切な資産を次世代へ円滑に引き継ぐ準備を整えていきましょう。


監修者:中川 佳人
金融機関勤務の現役マネージャー。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。20年にわたり、資産形成や家計管理・住宅ローンなどの実務に携わってきた経験を活かし、記事の監修や執筆を行っている。専門的な内容を、誰にでもわかりやすく伝えることをモットーとしている。

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