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新築マンション購入「ボーナスはすべてローン返済が“正解”と思ったのに…」世帯年収650万の30代夫婦を襲った“落とし穴”

  • 2026.4.12
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住宅ローンを組んだあと「早く返した方が安心」「利息を少しでも減らしたい」と考えた経験がある方は多いのではないでしょうか。なかでも住宅ローン控除があると「控除が終わる前に返済した方が得では?」と感じてしまうものです。

しかし、その判断が必ずしも家計にとって正解とは限りません。

今日は、そんな“正しいはずの判断”が思わぬ落とし穴につながったケースをご紹介します。節税と資産形成を意識した選択が、なぜ生活を圧迫する結果になってしまったのか。

数字とリアルな家計の変化をもとに、その実態を紐解いていきます。

住宅ローン控除「13年ルール」を信じた判断

数年前、私が担当した30代のご夫婦、Aさんご家族の話です。

世帯年収は約650万円。4,800万円の新築マンションを購入し、住宅ローンを利用されていました。

Aさんは、次のように考えていました。

「住宅ローン控除が受けられる期間は13年まで。それ以降はメリットがないのであれば、できるだけ早く返済した方が得になるはず」

この考え自体は、無理のない範囲であれば間違いとは言えません。実際、ローン残高が減れば利息負担も軽くなるため、合理的な判断に見えます。

Aさんは、「13年以内に返した方が得」という前提で資金計画を進めました。この認識が、後に家計を大きく狂わせるきっかけとなっていきます。

参照:国土交通省|住宅ローン減税

ボーナスと貯金を優先して繰り上げ返済

Aさんは、ボーナスの大半を毎年繰り上げ返済に充てていました。さらに、手元にあった貯金も積極的に返済へ回していきます。

繰り上げ返済の状況は次のとおりです。

  • 年間約150万円を返済に充当
  • 5年間で約700万円以上を前倒し返済
  • ローン残高は計画通りに減少

返済は順調に進み、利息負担も確実に軽くなっていきました。Aさん自身も、家計が良い方向に進んでいると感じていたそうです。

実際、ローン残高が減ることで将来の支払いは楽になります。数字だけを見ると、堅実な資産形成に見える動きです。

しかし、その裏で見落とされていたポイントがありました。それが、手元に残しておくべき「生活資金」です。

繰り上げ返済を優先した結果、万が一の支出に備える生活防衛資金が大きく減っていました。この時点では問題が表面化していませんでしたが、後の家計に大きな影響を与える要因となっていきます。

想定外の支出ラッシュで資金ショート

転機が訪れたのは、購入から数年後のことでした。それまで順調に見えていた家計に、少しずつ変化が起き始めます。

  • 子どもの進学で教育費が増加
  • 給湯器やエアコンの故障で約40万円の出費
  • 物価上昇により生活費が月3万円以上アップ

どれも、どの家庭にも起こり得る、ごく現実的な変化です。

しかし、手元にお金が残っていなかったAさんにとっては致命的でした。

「正直、もう余裕がありません…貯金もほとんどなくて」

久しぶりにいただいた連絡は、切実なものでした。話を聞くと、生活費や突発的な支出に対応できず、カードローンや分割払いに頼る状況になっていました。

結果として、家計は次のように変わっていきます。

  • 住宅ローン残高:順調に減少
  • 毎月の収支:赤字に転落
  • カードローンなどの借入:約120万円まで増加

住宅ローンは減っているのに、生活はどんどん苦しくなる。一見すると矛盾しているようですが、現場では決して珍しい話ではありません。

返済を優先しすぎたことで、日々の生活を支えるお金が足りなくなる。この時点で、家計はすでに“立て直しが難しい状態”に入り始めていました。

「正しい節税」のはずが家計破綻寸前に

Aさんが、何度も口にしていた言葉があります。

「住宅ローン控除が終わる前に返した方が得だと思っていました」

この考え方自体は、多くの方が一度は感じるものです。住宅ローン控除がある以上、できるだけ早く返した方が良いと考えるのは自然な流れです。

ただし、実務ではそこまで単純な話ではありません。

・控除期間は10年と13年のケースがある
住宅ローン控除はもともと10年が基本でしたが、消費税増税や経済対策の影響で、一定期間に入居した場合は13年に延長されています。現在は原則13年となっているものの、物件の種類や入居時期によって適用条件が異なるため、一律で判断することはできません。

参考:国土交通省|住宅ローン減税

・借入金利が控除率を上回る場合は、繰り上げ返済が有利になることもある
現在は住宅ローン控除は年末残高の0.7%が基本ですが、借入金利がそれを上回る場合、支払う利息の方が多くなります。そのため、控除期間中でも繰り上げ返済をした方がトータルで得になるケースがあります。

・控除には上限があり、すべての人が満額受けられるわけではない
控除額には上限があり、さらに所得税・住民税の範囲内でしか還付されません。年収や借入額によっては、本来の控除枠を使い切れず、繰り上げ返済をしても不利にならないケースもあります。

参考:国税庁|No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)

制度だけを見ても、判断には個別条件が大きく影響します。それにもかかわらず、Aさんは「13年以内に返した方が得」という前提で資金計画を進めていました。そして、もう一つ見落としていた点があります。

生活に必要なお金まで返済に回してしまっていたことです。

本来、繰り上げ返済は余裕がある範囲で行うものです。

しかしAさんの場合、手元資金を削ってまで返済を優先していました。その結果どうなったか。

住宅ローンは減っているのに、生活は苦しくなるという状態に陥ります。節税や利息軽減を意識したはずの行動が、結果的に家計を追い込む原因になってしまったのです。

住宅ローンは「資金バランス」で考える

今回のケースからお伝えしたいのは、一つです。住宅ローンは「どれだけ早く返すか」ではなく「家計全体のバランス」で考えるべきものです。

特に注意すべきポイントは以下のとおりです。

  • 繰り上げ返済するなら余剰資金で行う
  • 生活費6ヶ月〜1年分の現金は確保する
  • 教育費・修繕費など将来支出を先に見積もる
  • 控除期間だけで判断しない

節税や利息軽減は大切ですが、それ以上に重要なのは「生活が回ること」です。

住宅ローンは長期戦です。目先の損得ではなく、“10年後、20年後も無理なく続くか”という視点で判断することが、後悔しない最大のポイントです。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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