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「帝国ホテル 京都」開業。生まれ変わる、京都・祇園の国登録有形文化財

  • 2026.3.16
帝国ホテル 京都

京都・八坂神社の南西に2026年3月5日「帝国ホテル 京都」が誕生した。新しくホテルが建設されたにも関わらず、現地を訪れてみると従来の祇園一帯の風景と印象が大きく変わらないことに驚かされる。


photo Masatomo Moriyama

「帝国ホテル 京都」が立つのは、京都の春の風物詩「都をどり」が行われる祇園甲部歌舞練場の敷地内。かつては、演劇やコンサートなどの各種興行に利用されてきた「弥栄(やさか)会館」だ。「弥栄会館」は、劇場建築の名手である大林組の木村得三郎が1936年に設計したもの。祇園の美しい町並みを意識しながら、重層する屋根と中央に塔屋を構えた和の意匠が美しい国の登録有形文化財だった。

提供 八坂女紅場学園

しかし、建設から90年近い時を過ぎ、老朽化と耐震性に不安が生じる。そこで、内装デザインは現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之が率いる新素材研究所、設計と施工は大林組が担当。「弥栄会館」の歴史と意匠を最大限に受け継ぎつつ、日本における西洋式ホテルの先駆者たる「帝国ホテル」の威信と風格とを織り込んだ、上質なくつろぎの空間を体現する設計プランを目指した。

<写真>芸妓組合やお茶屋組合の寄付によって建てられた、竣工当時の「弥栄会館」。「舞妓や芸妓による磨き抜かれたおもてなしの対価から生まれた弥栄会館は、いわば彼女たちの分身のような存在」と祇園のお茶屋「京屋」の女将は語る。

photo Masatomo Moriyama

帝国ホテル 京都は、「本棟保存」「本棟」「北棟」の三つのエリアに大きく分かれる。歌舞練場や花見小路を臨む建物南西面の「本棟保存」は、柱や梁、窓枠などにかつての弥栄会館の名残を大きく残した情緒豊かな空間に。建物の北東面を占める「本棟」は、弥栄会館のシルエットを継承しつつ現代的なアレンジも加えた。そして増築部となる「北棟」は、祇園の町並みと一体となることを想定。日本の伝統建築の様式美を新たなかたちで表現していった。

<写真>エントランスには、「帝国ホテル」のエンブレムを施した樹齢約1000年の欅の一枚板が設置されている。

photo Masatomo Moriyama

町の趣と景観を守るために、建物の高さを抑えつつもできる限り居心地の良い内部空間を確保することも課題の一つだった。そのために各階の天井高を抑えることで十分な客室数を確保。全55室、17タイプある客室は、すべて50㎡以上。高さを控えめにした代わりに、水平方向への開口や広がりを意識するしつらえに整えることで、落ち着きと開放感を存分に堪能できるようにしている。

<写真>高さ制限を「水平方向の広がり」へと昇華した宿泊者ラウンジ。掛け込み天井を採用することで、庇と庭がシームレスにつながる空間を実現している。

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<写真>コンシェルジュデスクの背面には、新素材研究所の杉本博司デザインの襖絵も。

photo Masatomo Moriyama

最上位の客室「インペリアルスイート」の広さはテラスを含めて193㎡。北東に向いた二面のテラスからの眺望は圧巻で、近くに古き良き祇園の町並みや隣接する祇園甲部歌舞練場を、遠くに東山の美しい緑と空を見渡すことができる。

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一方で、北棟には「帝国ホテル」初となる畳敷きの客室を8室用意。靴を脱いで客室内にあがり、畳間へ。奥の板の間のラウンジチェアに腰掛けると、簾越しに町屋を臨む静謐さ漂う居室だ。

photo Masatomo Moriyama

意匠としてもう一つ特徴的なのは、さまざまな天然素材をぜいたくに使用している点だろう。1923年竣工の「帝国ホテル」2代目本館でフランク・ロイド・ライトが用いたエントランスの大谷石をはじめ、イタリアの赤色大理石や田皆石、北木石など、多様な石のストーリーをミックス。さらには神代ケヤキ、トチノキ、クリ、山桜といった国産の銘木が館内の至るところにふんだんに散りばめられており、見るものの目を楽しませてくれる。

提供 株式会社帝国ホテル

<写真>「弥栄会館」のテラコッタを再利用した外装。開館当時の状態の良いレリーフはそのまま活用し、欠損部分は3Dスキャンで型を取り忠実に復元した「帝国ホテル 京都」のテラコッタが混在している。

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<写真>榊田自らが採石場に足を運び選んだ北木石がふんだんに使用されたプール。

photo Masatomo Moriyama

本棟2階のフランス料理「練」、オールデイダイニング「弥栄」、本棟7階のバー「オールドインペリアルバー」(写真)は宿泊客以外も利用可能。バーでは、抹茶とゆずキュールを合わせたジンベースの京都限定カクテル「マウント比叡」も味わうことができる。

「弥栄会館」の記憶を受け継ぎながら、新たな建築として再生した「帝国ホテル 京都」。祇園の景観と文化に寄り添い、歴史的建築の継承と「帝国ホテル」らしい品格を両立させたこのホテルは、京都の新しいランドマークとなりそうだ。

帝国ホテル 京都
京都市東山区祇園町南側570-289

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