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世界が今注目する「ニッケイ料理」とは? 発祥の地・南米リマの話題店をレポート

  • 2026.3.14
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今、世界中でトレンドとなっているグルメジャンルといえば「ニッケイ料理」。名だたるホテルやリゾートもニッケイ料理のレストランを次々とオープンしていて、世界を旅していると「流行っているなぁ」と実感する。2025年に行われた「世界のベストレストラン50」第1位に、ペルーのニッケイ料理レストラン「Maido」が選ばれたことも記憶に新しい。

でも、「ニッケイ料理とは?」と聞かれて、「ペルー料理のひとつです」と答えられる日本人は少ないはず。そして、ニッケイ料理の歴史が、1世紀以上あることも。今回日本から20時間以上かけてペルーの首都・リマを訪れ、ラテンアメリカのベストレストランにも選出されたニッケイ料理レストラン「SHIZEN」のシェフの一人であるココ・トミタ氏に、日本人の知らないニッケイ料理の世界を教えてもらった。

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一世が埋めた種が、今、花開く。ニッケイ料理の歴史

ニッケイ料理の起源は、今から127年前に遡る。1899年、ペルーで畑作業をするために日本人790名を乗せた第⼀次航海船「佐倉丸」がリマのカヤオ港に到着した。彼らが家庭でペルーの材料を使って日本料理を作り始めたのが、ニッケイ料理の小さなはじまりだ。日系一世となる日本人移民は、たこなどそれまでリマの人たちになじみがなかった魚介類の食べ方を伝え、それが今日のリマの食文化の豊かさに繋がっているという。

写真/「SHIZEN」のシェフの一人、ココ・トミタ氏

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家庭で作られてきたニッケイ料理が、レストランで提供されはじめたのは日系二世の時代。1959年に誕生したミノル・クニガミ氏による「ラ・ブエナ・ムエルテ」をはじめ、ペルー料理に一部、日本の調理技術や食材を使うレストランが本格的に増えはじめた。例えばペルー料理を代表する魚介のマリネ「セビーチェ(写真はイメージ)」は、もともと長時間マリネ液に漬け込んでいたが、日本の調理技術から着想を得て、時間を置くことなく提供されるようになったという。ちなみにウンベルト・サトウ氏の「コスタネラ700」、ロジータ・イムラ氏の「ロジータ」も、日系二世による伝説的なレストランだ。

一方で「日本料理に一部、ペルーの調理技術や食材を用いるレストランが誕生したのも、日系二世の時代です」、とトミタシェフ。1973年に誕生したルイス・マツフジ氏による「マツエイ(松栄)」では、日本からペルーへとやってきた当時23歳の松久信幸氏が板前として腕を振るった。現在、世界中で愛されるレストラン「NOBU」を手がける、あの松久信幸氏である。

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そして日系二世〜三世の時代にはペルー料理をベースにしたレストランと、日本料理をベースにしたレストランの2つの潮流が合わさり、「ニッケイ料理」として確立。マツフジ一家が生み出したペルー版巻き寿司である「マキ・アセビチャード(写真はイメージ)」は、今日のニッケイ料理でも欠かせないメニューとなっている。

日系一世、二世、三世--時代ごとに進化を続けてきたニッケイ料理だけれど、今、世界から注目されるようになったのは、やはり「Maido」のシェフ、ミツハル・ツムラ氏による功績が大きい。トミタシェフも、「彼のおかげで、ニッケイ料理が世界へと広がった。彼はニッケイ料理にアイデンティティを与えてくれたんです」と話す。

SHIZEN

日系四世の世代が生み出す、洗練されたニッケイ料理

未来に向けて、さらなるニッケイ料理の進化を目指すのが日系四世であるトミタシェフたちの世代だ。2018年に誕生したニッケイレストラン「SHIZEN」は、左からレナート・カナシロ氏、マイラ・フローレス氏、ココ・トミタ氏の三人のシェフが協力し、前の世代の料理を受け継ぎながら新しい料理を生み出している。

バイタリティーあふれるトミタシェフは現在、33歳。探求心が強く、数年前より日本に訪れて活け締めなどを学び、ニッケイ料理に現在の日本の調理技術を取り入れている。今は昔と比べると、日本とペルーの行き来もハードルが低いため、ニッケイ料理もここにきて新たな進化を遂げているようだ。

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「SHIZEN」で特に注力している食材は「魚」。ペルー各地から厳選した魚介類を仕入れており、オープンキッチンのネタケースには高鮮度の魚介がずらりと並ぶ。

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提供される魚はその日によって変わり、この日の「サシミ・ラ・トトヨ(S/ 76)」では、カニェテ産のスズキとトゥンベス産のフォルトゥーノ(スズキの一種)を使用。カツオと昆布の合わせだしをベースにサランダハ(豆)やコリアンダーのオイルで風味づけしており、うま味と爽やかな酸味が広がる。見た目は和食のようだけれど、口にした瞬間に、新しい扉が開かれるような味わいだ。

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写真/魚介のだしを注いで完成する松笠焼き「スタド・ニッケイ(S/ 62)」。

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そしてマイラシェフの地元である、ペルー北部のピウラ産の食材や郷土料理も取り入れている。ペルー北部の代表的な調味料がチチャ・デ・ホラ。とうもろこしから作る発酵酒で、和食でいう料理酒の役割を果たす。「トミズクリ(S/ 59)」は、カツオとヒラメにチチャ・デ・ホラで作ったポン酢を合わせた一品。チチャ・デ・ホラの酸味が魚の臭みを消し、とびっこやサランダハを揚げたチップスで遊び心のある食感を加えている。

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ペルーの国民食である唐辛子が使われるのも、ニッケイ料理の大きな特徴。「チラシ・セビーチェ(S/ 78)」は魚介のチラシ寿司を、黄色いアヒ・アマリージョソースで味付けしている。「辛そう!」と思った人もご安心を。アヒ・アマリージョは唐辛子の一種だけれど、日本人が想像するような辛さはなく、芳醇な風味を楽しめる。唐辛子は中の種を取って何度もゆでることで、辛さを減らすことができるのだという。

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「ティラディート・デ・コンチャ・イ・ロコト(S/ 56)」は、まるでマグマの中に花が咲いているかのような美しい一皿。丸くカットしたサツマイモの下にはアボカドとホタテが重なり合い、赤い唐辛子「ロコト」のソースとともに楽しめる。このソースも唐辛子特有の甘みを生かしたもので、「ここでしか食べられない」と感じる味わいだ。

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日本にルーツがありながら、日本人の知らないところで進化し続けている「ニッケイ料理」。同じ刺身でも、唐辛子をはじめとするペルーの食材を使うだけで、こんなにも変わるのか、と驚愕する。そして、別の国で食べたニッケイ料理と、リマで食べたペルー産の食材を使ったニッケイ料理は、やはり違った。

本場を味わうなら、ぜひペルーへ!……と言いたいところだけれど、地球のほぼ裏側に行ける機会はそうそうないもの。まずは近場でニッケイ料理レストランに出会えた時に、迷わず体験してみて。

写真/和牛にピスコの海藻で作った佃煮をあしらった「ヤキニク(S/ 56)」。トミタシェフの祖母が作る佃煮から着想を得ている。

SHIZEN
住所/Avenida los conquistadores 999, San Isidro 15073
https://shizen.mesa247.pe/reservas/shizen_barra_nikkei
インスタグラム/@shizenperu

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